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CURSE OF THE GOLDEN FLOWER
満城尽帯黄金甲 2006年/中国・香港/114分 監督: チャン・イーモウ 西暦928年、中国は五代十国の時代。唐王朝滅亡後の中国において国王を頂点とする“黄金の一族”がいた。映像はまさに豪華絢爛というにふさわしい金色と赤に彩られている。 金色は権力の象徴。 赤はそのために流された夥しい血の色。 宮廷内部を彩る目もくらむようなその色彩は、豪華絢爛よりもむしろ狂気の色として映る。 チャン・イーモウの色彩の演出で唸ったのは、豪華絢爛な美よりも王家の崩壊の幕開けとなる重陽の日のシーン。 王宮内部の秘密が露呈し第一皇子は第三皇子の刃にかかって死に、その第三皇子は父の手にかかって切り殺される。外では第二皇子が謀反の狼煙をあげている。髪を振り乱した王と第一皇子の血に塗れた王妃が立つ宮廷内の金色と赤は、厚塗りの化粧の下から醜悪な姿をさらけだし、豪華絢爛から一転して醜悪で無残な色調へと転調する。きらびやかな豪華絢爛はこの色彩を見せる為のものだったのだろうかと思わせるほど。 金色の甲冑をつけ、白絹に金色の菊を刺繍した布を口につけた第二皇子率いる謀反軍。迎え撃つのは王が抱える闇の軍団。二つの大軍が織りなす戦闘シーンは圧巻。チャン・イーモウならではの演出と美学だろう。 謀反軍が王宮前に一面に敷き詰められた黄菊を踏みつけていく。赤い血に染まっていく菊の花。謀反軍は破れ、第二皇子は捕らえられ、謀反軍の夥しい死体は家来たちの手によって片づけられ、血は水で洗い流され、血塗られた菊の花は棄て去られ、夥しい数の家臣たちによって新しい菊の花が敷き詰められ、新しい絢爛たる絨毯が敷かれ、王は何事もなく宴の席にある。その前の椅子には血に塗れた王妃と第二皇子が座らされている。 本作で描かれている権力をめぐる凄まじき抗争。これが中国そのものだろうと思う。 正確な記憶ではないけれど、「古代中国では、一つの部族がある部族を滅ぼす時、その部族の民、言語、文化全てをその地から完全に消滅させ、更地にしてそこに自分たちの国を建設する。」という。中国では文化の継承という意識は育ちにくいということの要因として記述された文章だったと記憶している。 中国における数世紀の間繰り返されてきた諸部族の権力闘争の歴史を物語るこの言葉が、本作で謀反軍が踏みしだいていく菊の映像と、そして流血の惨劇の上に敷かれる絨毯と菊の映像と重なる。そしてそれは中国という国そのもの実態を物語るものでもあるだろう。 重陽の祝いの席で、王と王妃が手を携えて書き上げた毛筆の書は「忠信孝義」 儒教の教えに基づく言葉だろう。しかしその言葉は裏返せば、王に対する絶対服従の思想であることは、この物語からも容易に理解できる。 王の差し出した薬は毒と知りつつも王に対する忠と信から飲み干さなければならない。 王妃が薬の器を投げ捨て、赤い液体は絢爛たる紋様の中心に落ち、見る間にその毒は中心を腐食させていく。続くエンディングで、この腐敗した上に赤い大輪の一つの花が泰然と現れ、その花の赤みが増すと同時に周囲の紋様が死んだように色褪せていくという、チャン・イーモウが美しく描いてみせたこの映像も凄い。 チャン・イーモウは公式サイトで本作について「古い伝統に縛られた封建的な家庭の物語ともとれる。」と語っている。家庭は国家に置き換えられるだろう。 腐敗しきった中心に咲く真っ赤な大輪の花。その花は周りの生き血を吸いとってさらに色鮮やかな赤となる。その赤は一党独裁政権である中国共産党の赤を表象するものであり、現在の中国の物語ともいえるだろう。 儒教の教えに裏付けられた絶対服従の思想と、真っ赤な花の下の腐敗した中枢。 映像美学のチャン・イーモウ。圧巻の戦闘シーンも盛り込んだスキャンダラスな豪華絢爛なる愛憎ドラマと思いきや、その内には骨太の芯が一本貫徹した作品だった。豪華絢爛たる10世紀の中国の王家にまつわる物語を描きながら、実は現代の中国そのものを描いた物語といえる。そして時代は変わり、時の執政者は変わっても中国とは、中国における権力に対する意識とはこういうものとして脈脈と受け継がれているのだろう。 そしてここでチャン・イーモウが描いてみせた、権力に対する執着の前には血の絆、情愛などもねじ伏せられる凄まじき絵図は、世界が知らない中国の真の姿かもしれない。 製作資金は香港の比ではないと、どうしても大陸の資金が必要だと、映画「LOVERS」の特典映像で語っていた。香港の中国返還を契機に、映画制作の軸足を香港と中国大陸にまたがったチャン・イーモウが観た中国でもあるんだろうなとも思う。しかし、、彼の今までの作品で、美しい映像に巧妙に隠された気がつかないものもあるかしらと見直そうかとも思ってしまう。…
by mchouette
| 2009-07-05 00:00
| ■映画
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