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VICKY CRISTINA BARCELONA
2008年/スペイン・アメリカ/96分 at:梅田ピカデリー 監督・脚本: ウディ・アレン 原題は「ヴィッキーとクリスティーナとバルセロナ」 ヴィッキーは修士論文のリサーチをかねて、親友で自分探し真っ最中のクリスティーナとともに、夏休みのバカンスを楽しむ為にスペイン・バルセロナを訪れた。 恋愛に対しては、現実的で堅実な結婚を望むヴィッキーと、火傷しそうな恋に自ら飛び込むクリスティーナは対照的な二人だが、自分を偽らないところがお互いに信頼できる二人。 そんな二人がバルセロナで知り合った画家フアン・アントニオ。 アントニオは、妻と刃傷沙汰のすったもんだの末に離婚したスキャンダラスな男らしい。 そのアントニオをめぐって、クリスティーナ、そして堅実派のはずだったヴィッキーまでも、そこへアントニオの別れた妻マリアが入り乱れての恋愛ドラマがバルセロナを舞台に繰り広げられる。 太陽がまぶしいバルセロナの気候風土のせいかしら。 それとも登場する3人の女優たちの生きの良さのせいかしら。 フアン・アントニオ演じるラテンの色気のせいかしら。 恋愛模様のこのおかしみは紛れもなくウディ・アレン作品なのだけれど、今までのニューヨークやロンドンを舞台にした作品にはない生き生きとした解放的な広がりを感じる。 こんなんあり?と思うよりも、こんなんありもバルセロナ!って思えてくる。 そう。ここは恋するバルセロナ。 スペイン・ギターが奏でるラテンのメロディにのって、小気味いいテンポで繰り出される語りの上手さに、73歳のウディ・アレンの健在振りという以上に、この作品の鮮度の良さは観ていて楽しくなって、観ている私も「♪恋するバルセロナ♪」気分になってくる。 スカーレット・ヨハンソンというミューズを得てからのアレン監督の作品みていると、ますます涸れるどころかますます脂が乗って語り口も滑らかになってきたみたい。 そしてスカーレット・ヨハンソンもまた、「マッチ・ポイント」 「タロットカード殺人事件」に続き、3作目の本作でもそうだけど、アレン作品の彼女は他の監督作品よりもさらに生き生きとした魅力を放っている。 本作の彼女は、したくないことは分かっているけれど、何がしたいのか分からない。分からないから生きている実感を求めて火傷する恋にも飛び込む女性。大胆なようにみえながら、案外と自分の殻を突き破れずにいる女性。大胆かつ小心者のアメリカ娘がとても素直で魅力。 本作でのペネロペ・クルスは天才画家という設定で、天才と狂気は紙一重といった過激にエキセントリックな女性だけれど、アルモドバル監督の「ボルベール<帰郷>」で演じたスペインの肝っ玉女の彼女にはちょっと疲れて乗れなかった私だけれど、本作の彼女にはそんな過激ぶりにも魅力を感じる。 ウディ・アレンはやはり女性を撮るのが上手なのかしら。 堅物そうにみえて始めはさほど魅力的とも見えなかったヴィッキーを演じたレベッカ・ホールも、アントニオとの熱い一夜から恋する女性となり、堅実な結婚と心の中の熱い思いに揺れ動きはじめてからは、とても素敵に見えてくる。 それからヴィッキーの叔母で、ひりひりとした恋に身を焦がしたいと悩める中年女性ジュディを演じたパトリシア・クラークソンも素敵。 アントニオ役のハビエル・バルデム。 初めてお会いしたのは「夜になる前に」ではキューバの作家レイナルド・アレナスを演じ、身体にはりつくような細身の真っ赤なパンツをはいていかにもゲイというウォーキングを見せてくれた。「海を飛ぶ夢」では身体麻痺で寝たきりの男。 「ノーカントリー」では不気味な殺し屋。 「コレラの時代の愛」では数十年も愛する女性の夫の死を待ち続けた男。本作でやっと普通とはいえないけれど普通のいでたちの彼にお目にかかれたわ。 軽くなく、愛に誠実で、精力的で、愛なしでは生きられないラテン男の色気をたっぷりと感じさせてくれた。 いやぁ、アレンの語りの軽妙洒脱さが、太陽の光りも眩しいバルセロナの空気の中でさらに生気を受けて花開き、それでいて恋のアバンチュールではなくって、お軽い恋愛ドラマではなくって、焼けつく恋から一生懸命に自分を抱きしめ、だからこそ苦しくて切なくて……女性遍歴、恋愛遍歴を重ねてこられたウディ・アレンならではの人生の機微がちりばめられている。 バルセロナの一夏の経験はヴィッキーとクリスティーナをちょびっと大人にしたみたい。 この映画は何度でも観たい映画だわ! カジュアルなファッションも楽しい。 蒸し暑さにじとじとした日本の鬱陶しい夏に、カラリと晴れたバルセロナの空気が爽やかなこんな映画は最高。
by mchouette
| 2009-06-30 00:00
| ■映画
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