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2008年/日本/139分
at:梅田ブルグ 監督: 木村大作大変なご苦労の物語を描いた作品なのだけれど、私個人的にはこういう内容の映画ってあまり興味をそそられる方ではなく、かの人気のあったというNHKの「プロジェクトX」なる番組も興味あるテーマだけ数本見た程度。本作も単純に浅野君が出てるし…香川照之がどんな演技を見せてくれるのかしらって気持ちで観にいったのだけれど、みんな妙にこじんまりとまとまっていたって感じ。 公開初日。劇場は最近の映画には珍しくほぼ満席で年齢層は中年以降がやたら多かった 前半の立山連峰の自然を捉えた映像は美しく、こんな美しい映像をみせられていて、監督は何を描こうとしているんだろうと思ったほど。 新田次郎の同名小説を映画化。 明治40年。国防のため日本地図の完成を急ぐ陸軍の命を受け、最後の空白地点である前人未踏の難峰であり、死の山と恐れられる劔岳登頂に挑んだ男たちの真実の物語。 劔岳・立山連峰各所でロケを敢行し、当時の測量隊と同じ行程をほぼ忠実に辿ったという撮影は、演じた役者も、また撮影隊にとってもどれほどの危険を伴う苛酷な撮影だったろうことはその映像からも十分に伺える。 名カメラマンとして知られる木村大作の初監督作品であり、脚本も手がけている。その木村大作のカメラが捉える立山連峰の自然。四季折々の美しさ。鳥の群れが近づく雷雨を教えてくれる。雲海に昇る朝日。吹雪が行く手を冴えぎる。吹雪の中で彼らを導く雷鳥。厳しくも美しい日本の自然美は圧巻。とりわけ登山をされている方などにとっては、これは堪らない映像だろうと思う。 明治時代、現在のような登山装備も乏しい中で藁草履を履いての登山。 そんな中で地図作りのために危険を承知で劔岳に挑んだ人たちの苦労には頭が下がる。まさにプロジェクトX。 陸軍参謀本部陸地測量部の測量隊の苦労もわかるし、CGや空撮を行わないというのも、道を切り拓いた測量隊に対する敬意を払うという木村監督の思いもあったのだろう。 しかしながら、立山連峰を登られた方などは彼等の台詞で分かるのだろうけれど、山に馴染みの薄い私は吹雪に立ち向かいながら歩く様や、雪崩にあったり、落石にあったりといった道中の苛酷さだけは分かるのだけれど、はて一体彼らは連邦のどこにいて、劔岳のどこから攻めていこうとしているのか、今彼らは劔岳をどういうルートで登っているのかといった彼らの足跡がよく分からないため、劔岳がどれほどの難所で、そこを登る険しさといったものが映像からさほど伝わってこなかった。 映画予告でも撮影の苦労話に終始していて、大変な撮影を乗り切って完成させたのだという思いの方が、作品よりも前にでていて、「劔岳 点の記」製作秘話ドキュメンタリーか山岳紀行みたいになってしまっているみたいな……。 映画作品としてはどうなんだろう?って首を傾げてしまう。 苦労はわかるけれど、描くべきは測量プロジェクトだろうと思うわけで、頂上に観測点を設置し、測量、そして地図製作といった部分なども描かれていれば、この第一歩とも言える彼らの苦労も観ている私にも伝わってくるのだけれど…… そして彼らよりも先に行者が登頂していたことから、陸軍ではこの登頂はなかったことにという、ナンセンスな結果に終ったこともなんだか中途半端で……この映画のテーマは報われずとも第一歩を切り拓いた彼等の勇気と忍耐を讃える映画だったのだろうか。 ヘンデル作曲の「サラバンド」がいかにもというシーンで悲壮感を帯びて流れてくる。 私はキューブリックがで、農家に生れた一人の男が運命の皮肉からつぎつぎと出世していくという物語「バリー・リンドン」で、このヘンデル作曲の「サラバンド」をシニカルかつ効果的に使っていて、この作品で好きになった楽曲なだけに、捻りのない本作の使い方にちょっと苦笑してしまった。 どちらが初登頂を決めるかといった測量隊と日本山岳会との確執を経て、最後はともに互いの栄誉を讃え合う山を愛する男たちといったお決まりのパターンに鼻白んでしまう。 「これは測量隊の隊員たち、そして彼らを支えた仲間たち、家族の物語である。」というエンディングのナレーションにも感動を覚えるよりも気恥ずかしくなってしまう。淡々と観終わったという感じ。 思いと言葉だけが先行して、材料をそのまま並べただけの映像に、その思いを見てもらおうという気持ちが先走ったような作品という印象を受けた。 末尾ですが、撮影のご苦労に対して労いの思いはあることは記しておこう。
by mchouette
| 2009-06-25 00:00
| ■映画
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