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子どもの頃に観た作品で、CG駆使した最近の映画を観る度に懐かしく思い出されるのが本作「ミクロの決死圏」。BSなどでは放映されていたようだけれど見逃していて、先日NHK・BSの放映でやっと数十年ぶりに鑑賞できた。FANTASTIC VOYAGE 1966年/アメリカ/100分 監督: リチャード・フライシャー 人類も含め物質を細かく分割すると分子となり、さらには原子になって、原子やそれより小さい世界がミクロの世界。顕微鏡の世界。 国家機密事項の情報を持つ要人が敵の襲撃を受け、脳に損傷をおった。 手術をすれば脳のほかの場所を傷つけ死んでしまうため外科手術は不可能だということで、科学者たちを乗せた特殊潜航艇プロテウスをミクロ・サイズに縮小させて患者の体内に侵入させ、動脈を通って脳の損傷箇所までたどりつきレーザー光線で手術しようというもの。 いまでこそマイクロスコープで人間の内臓を内部から撮影した映像などは当たり前のようになっているけれど、製作年のこの時には、コンピューター技術も発達しておらず、電卓もなかった時代。計測も定規を使ってやっている。 レーザー光線で患部を治療するなんて、当時の最先端医療技術でもなかったんではないかしら。それが今では当たり前のことになっている。医療関係者や科学者たちのアドバイスも受けて製作した本作には、当時の科学者たちの未来の夢も盛り込まれていたのだろう。 科学の世界はミクロよりさらに小さいナノの領域まで入り込んで研究がなされているのだから、わずか数十年で人類の科学は異常なほどに驚異的な発達をしてるんだなって、数十年ぶりに本作をみて実感する。 それでも、軍事基地の中の様子も、彼らがミクロ化していく様子も、最先端技術を駆使して…って思わせるほど良くできた映像だと思うし、現在の最先端医療技術を知る目からみても決して安っぽい映像ではなくって、観る者に想像の世界を広げてくれる。 なんといっても血液という海を航海する映像は、なんともファンタスティック。 赤血球とか白血球とか血小板が海に漂うクラゲのように浮遊していて、酸素と二酸化炭素の交換の様なども神秘的に描かれている。 今回初めて知ったのだけれど、原題は「FANTASTIC VOYAGE」 宇宙の神秘 生命の神秘 そんなことが素直に当時の私もこの映像から感じ取ったと思う。 だからだろうか、「ミクロの決死圏」という作品を知らない世代のわが息子が子どもの頃、街に買い物に行った折には、書店においてある竹内均さんが編集長だった雑誌「ニュートン」のバックナンバーから好きな号を1冊だけ買ってやっていた。「ニュートン」に掲載されている絵や図の殆どがイラスト。その精緻なイラストは写真よりも人間の想像力をとても広げてくれる気がした。「ミクロの決死圏」の映像と「ニュートン」に描かれた精緻なイラストの世界はつながる世界だわ。 でも息子はこの映画はしっかり知っていたのには嬉しい。 タイトルは原題の「FANTASTIC VOYAGE」よりも邦題の「ミクロの決死圏」がいいなって思う。 この邦題には拍手! 生命の海ともいえる血液のファンタジーな世界だけれど、そこでは常に生きるための闘いが繰り広げられている決死圏でもあるわけだから。そしてミクロチームも人体そのものを救う為に闘う。 人体の中のさまざまな防衛機能が異物である彼らに襲いかかる。心臓から送り出される血液の確かな流れはミクロサイズの彼らには激流であり、患者の耳の外部で起きるわずかな物音や振動は彼らには大嵐。 下の映像は、血液の激流にコースを逸脱した潜航艇が、心臓を通って肺にいかざるを獲ない為、リスクを承知で患者の心臓を一時的に停止しようとしているところ。 この映画をみた当時は、理科の授業で人体のしくみや血液の働きなどを学んでいたから余計に面白くって、観ていてもとってもよく分かった。 学校でそんなことも習っていない年齢でも、働きは分からなくっても人体の中ではこんな闘いをいつも繰り返して、生命が守られているんだってことが感覚として受け止められると思う。 あらゆる生命体は、生命を防衛するために、常にこうしたさまざまな闘いを繰り広げてきたのだろう。子ども心にいろんなことをこの作品から感じ取っていたなって、遠い記憶を辿ってみる。 子どもが見てもとってもよく分かるってところが、映画の大事な要件の一つではないかしらって、この映画を再鑑賞していて思う。だから、この映画が今も観たい映画となって記憶に残っているところでもあるんだろう。 患者の瞼をあけると、涙の海で必死に泳いでいる彼らがいた。 こんなラストの映像も記憶から甦ってきて、数十年前にみてやっぱりこの映画はよく出来ているわって満足の再鑑賞が嬉しい。 これが今のCG技術を駆使した映像だったら、もっとリアルな映像になって、血液の中や臓器内で彼らが繰り広げる行動や闘いとかも迫力ある映像で表現され、映像としてはさらに面白いだろうけれど、果たして、じっくりと映像に集中して、宇宙の中で生かされている生命、生命の不思議、そういった感動が沸いてくるだろうかって思う。その映像から未知の世界に対する想像が広がるだろうかって思う。 米ソ冷戦下。 宇宙ロケット開発でアメリカとソ連が凌ぎを削っていた時代。 科学の発展は軍事と直結するんだろう。 インターネットの普及も元はといえば軍事通信システムから発達したもの。 本作のミクロ化プロジェクトも、軍隊もミクロ化すれば手のひらに乗っかるという軍事作戦から来ている。それは敵方もミクロ化に成功していて、双方がいきづまっている問題はミクロ化の時間がわずか60分だということ。それを解決する機密情報を負傷した要人が知っている。しかも医療チームには敵方のスパイがいて、手術中に患者を殺すかもしれないという疑惑もある。ともかくも答えは彼の脳にある。患者を救うのは必至。というのが本作の背景。 60分という限られた時間内で要人の手術をして体内から脱出するという制約の下で遂行された医療手術は、敵陣に乗り込み、敵の攻撃をかいくぐり任務を遂行する軍事作戦ともいえる。この手術を指揮するのは軍上層部。科学の進歩、人類の進歩は、皮肉にも軍事力の発達によってもたらされる。 国益と人類の進歩、ファンタジーと冒険、そして生きた理科の授業としても面白く、いろんな要素がとてもシンプルナ形で描かれていて、そしてその映像も数十年後に再鑑賞しても、現代のCG駆使した映像に引けをとらない、むしろ本作の方が時間の経過の中でも色あせない映像だと思う。 さまざまな不測の危機をクリアーしたミクロチームが、患部に到着したときには体外脱出も含めタイムアウト寸前。潜航艇プロテウスは異物として白血球ののみ込まれたけど、元の大きさに戻らないんだろうか? 白血球の中で消滅したん? って気になるところ。
by mchouette
| 2009-06-13 00:00
| ■映画
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