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この作品は私の中では、スティーヴン・スピルバーグの「激突!」と双璧をなすというか、「カンバセーション…盗聴…」と「激突!」。この二つは並べて雛壇のてっぺんに奉りたいほどの作品! THE CONVERSATION 1973年/アメリカ/114分 監督: フランシス・フォード・コッポラ 「激突!」では現代社会を象徴するような理由なき暴力が描かれている。その暴力から必死に逃れようとする一人の男の恐怖を描いた物語で、あたかも人格を備えたようなトラックが怖ろしい。スピルバーグの迸る才気を存分に見せつけてもらった作品でもある。そして本作は、盗聴を生業にし、その手腕は業界では伝説にまでなっているほどの男ハリーに降りかかった悪夢のような災難を描いている。 彼は長年の経験から盗聴内容に対する「好奇心」を捨て、人の秘密を嗅ぎ回る道のプロとしてストイックなまでに徹底した秘密主義を貫き、人を寄せつけようとせず、ひたすら完璧な盗聴に心血を注ぐ。 音楽仲間たちとのライブ演奏でサックスを吹いている時が心を許せる唯一の時間。 そんな彼が請け負ったある一組のカップルの盗聴。依頼主に不審なものを感じ取ったハリーは、盗聴テープの声をさらに拾い上げていくと「僕たちは殺されるかも知れない」という男の言葉を耳にする。 かつてハリーの盗聴で3人の人間が死亡した。 その罪悪感に苛まれ続けているハリーは自らに課した掟を破り、盗聴内容に深入りしてしまう。 誰にも秘密にしている電話番号が、依頼主の秘書からかかってきた。 「君のことはこちらも調べさせてもらった。」 人のプライバシーを盗聴という手段で嗅ぎまわっていた男が、ある日、自分も嗅ぎ回されているということに気づいたら……。 それはハリーにとっては常人以上の強迫観念と恐怖を抱かせるものだろう。 ハリーが盗聴内容の真相に気づいた時……。 「お前は知りすぎているんだ。深入りはするな。盗聴しているぞ!」 受話器から流れる元専務秘書のその言葉に、狂ったように自宅アパートのあらゆるものを調べ上げ、壁紙を剥がし、電気のコードを引き抜き、置物を次々と壊していき、床板を剥がし……聖母マリアの像まで壊し……精魂尽き果て、呆然自失となり……全て剥ぎ取られ寒々とした部屋で、たった一つだけ壊せなかったサックスを吹くハリー。 盗聴器はサックスに仕組まれている?! サックスのもの哀しげな音色が、ハリーの孤独と哀愁と贖罪の思いを物語るように流れる。 本作もまた人間関係の希薄な文明社会において、一方でハイテク機器を駆使した盗聴やデータの流出による個人情報の流出といった現代社会の恐怖を描いた作品であり、1972年にワシントンD.C.のウォーターゲート・ビルで盗聴が発見されたウォーターゲート事件の衝撃にも繋がり、椅子に座りサックスを吹くハリーから漂う寂寥感は、大都会に住む者たちの孤独と通じるものだろう。 テープから盗聴した二人の会話が再生され、巻き戻され、また再生され……朧ろげだった2人の会話が、徐々にその輪郭を見せはじめ、そしてハリーという一人の男の人物像も見えてくる。 なんとかハリーの手口を探ろうとする盗聴屋仲間。盗聴の手口の数々……。 コッポラの脚本、演出効果の上手さもさることながら、罪悪感と孤独の中で、得体の知れない不安と強迫観念に囚われていくハリーを演じたジーン・ハックマンの演技が素晴らしい! 本作の彼の演技は、彼の出演作の中では最高ではないかしらと私は思うほど。(というより、演技は上手いと思うけど、彼の演じる役はリアルすぎて生々しくって、ちょっと生理的に受け付けないところもあるのだけれど、本作でジーン・ハックマンが演じたハリーには寄り添えられるという意味で、私には良かった!と思う彼の演技) ロバート・デュバルが専務役でカメオ出演していて、その秘書役にハリソン・フォード。ハリソンが役者として駆け出しの頃でとっても若い。ロン・ハワードも出演していた「アメリカン・グラフィティ」(1973)では若者のなかで、ちょっと糖の立った風に見えたけれど、スーツ姿の本作の方が若く見える。ダーク系スーツに茶色の靴がなんかハリソン・フォードっぽくって笑ってしまった。自前? 私のご贔屓作品だけれど、この記事書くまで、本作が1974年カンヌ映画祭のパルムドール受賞作だって知らなかった。記憶から飛んでる。 この時の審査委員長はルネ・クレール。「さらば冬のカモメ」でジャック・ニコルソンが男優賞、「続・激突!/カージャック」(続編は私は未見)が脚本賞、ケン・ラッセルの「マーラー」がフランス映画高等技術委員会賞、アラン・レネの「薔薇のスタビスキー」でシャルル・・ボワイエが特別表彰されている。
by mchouette
| 2009-05-27 00:00
| ■映画
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