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YOU ONLY LIVE ONCE
1937年/アメリカ/86分 リバイバル上映のタイトルは「ただ一度の愛/暗黒街の弾痕」 監督: フリッツ・ラング 刑務所に服役していたエディ・テイラーは、公選弁護士事務所で助手をする恋人のジョアンの愛、弁護士の尽力、彼を信じるドーラン神父たちに支えられ、今度こそ真人間になろうと決意を新たにするが、前科者というだけでジョアンとでかけた新婚旅行先のホテルから追い出され、就職先の運送会社社長からも些細なことで前科者だからと解雇され、マイホームの夢も泡と消え、解雇を知らないジョアンは引越し準備に嬉々としエディは焦る。 そんなエディに追い討ちをかけるように、出所してきたムショ仲間によって銀行強盗の濡れ衣をきせられ、無実を訴えるが警察も裁判所も耳を貸さず、エディは6人の銀行員を殺した罪で電気椅子送りの死刑判決を受ける。 真人間になろうとするエディに対する前科者という偏見に押しつぶされていく前半部分は、アラン・ドロンとジャン・ギャバンの「暗黒街のふたり」(1973年/ジョゼ・ジョヴァンニ監督) と重なってしまう。犯罪者は犯罪を繰り返すという持論をもち、ドロンが犯罪に手を染める機会を執拗につけねらう刑事が、最愛の妻にまで及んだとき、ドロンは彼を逆上のあまり殺してしまい、ドロンはギロチン台に送られる。本作は犯罪者に対する人々の偏見意識は数世紀経ても変わっておらず、ギロチンという前時代的な処刑に対するジョヴァンニ監督の激しい抗議でもあったろう。 エディの死刑執行前日、エディに同情する囚人たちの手助けによって銃を手に入れたエディは、刑務所のヒル医師を人質にして刑務所の門を開けろと所長を脅す。しかし、その時、エディが無実であることが立証され、所長とドーラン神父は必死にエディを説得するが、もはや人間不信に陥ってしまっているエディに彼らの言葉は聞こえず、エディは彼を信じる神父を射殺して逃亡する。 今のエディにとってただ一人信じられるのはジョアンただ一人。 カエルはいつも二匹一緒なんだ。そうエディに変わらぬ愛を誓ったジョアンは、彼の処刑執行時刻に自ら命を絶つつもりで毒を飲み干そうとしていたその時に、エディから電話が入った。 姉の制止を振り切ってエディの元へ走ったジョアンは、生きるも死ぬも一緒。地獄まで一緒に落ちる決意を固めていた。深夜の町を車で走り、負傷したエディのために薬局の窓ガラスをぶち割って薬を盗み、ガソリン・スタンドでは拳銃で脅して給油するジョアン。車が二人の家。強盗を働きながら国境をめざすエディとジョアン。こんな二人の逃避行をみていると「俺たちに明日はない」(1967年/アーサー・ペン監督)のボニーとクライドを髣髴とさせる。信じられるのは世界で二人きり。必死に生き抜こうとする二人の姿はボニーとクライドよりももっと痛ましく、美しい。 ![]() ジョアン演じるシルヴィア・シドニーは眼の大きな本当に可愛い女優さん。晩年にはティム・バートンの「マーズアタック」で孫と一緒のおばあちゃん役の人。 ![]() 国境を前に、警察の必死な追跡を受けながらエディがジョアンにいう。 「ずっと言いたかったんことがあるんだ。こんな僕を愛してくれてありがとう。」 警察の一斉砲撃を浴び、倒れたジョアンを抱きかかえたエディは、さらに国境に向かって歩き出す。国境を越えれば人生をやり直せるんだ。 「エディ。エディ。君は自由だ。」 亡くなったドーラン神父の声が聞こえ、その言葉に夢見るような笑みを浮かべるエディ。 しかし銃弾を浴びたエディはすでにこときれる寸前だったろう。 その顔にかぶさるように「END」の文字が……。 エディとジョアンの逃避行はボニーとクライドを髣髴とさせるはずだ。 本作はボニー&クライド事件をモデルにした最初の映画化作品なんだそうだ。 前科者に対する世間の偏見と差別が針のようにエディに突き刺さる。 そんなエディをみつめるジョアンの大きな眼には愛するものの喜びにあふれ、彼女のエディに対する誠実で一途な愛に胸打たれる。後半の逃避行では互いに身を寄せ合いながら二人の愛を大切に暖め続ける姿が描かれていて、脱獄から逃避行の物語だけれど、フリッツ・ラングはとても美しく悲しいラブストーリーとして描きあげている。 逃避行に絡む激しい銃撃戦や追撃シーンなどはないが、夜の闇と光の映像が緊迫感をもたらし、追われる二人の切迫感が観るものに迫ってくる。 ラストでみせたヘンリー・フォンダの安らかな笑顔が痛ましい。 ナイーブな優しさと、世間に拗ねた頑なさをもつエディの内面をヘンリーフォンダが見事に体現していた。死刑判決を受けたエディが面会にきたジョアンを見据え、看守にきかれるため無言のまま口を動かして「拳銃をもってこい」というシーンでは犯罪者の凄みさえ感じさせる。 ![]() 原題は「YOU ONLY LIVE ONCE」人生は一度きり。 アメリカでいき処を失ってしまった二人が新しい人生を求めてめざした国境は、二人の見果てぬ夢。 銃弾に倒れた二人は死によってようやく安らぎを得られたのだろう。 ユダヤ人であったフリッツ・ラングがナチ政権から逃れアメリカにわたり撮影した第2作目。 見逃したほかの作品は悔やまれるが、本作を観れただけでも幸運としよう。 これがフリッツ・ラングらしい味わいなのだろう。
by mchouette
| 2009-05-08 00:00
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