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「殺人がスイカズラみたいな匂いがするなんて知らなかった。」
DOUBLE INDEMNITY 1944年/アメリカ/106分 監督: ビリー・ワイルダー ジェームズ・M・ケインのミステリ小説『倍額保険』を、映画化にあたりビリー・ワイルダーとレイモンド・チャンドラーが共同で脚色した作品。冒頭に記したスイカズラといい、随所に味の効かせた台詞が散りばめられている。 ビリー・ワイルダーって名前はもちろん有名すぎるほどで、作品名も知っているけれど、「麗しのサブリナ」「昼下がりの情事」といったオードリー・ヘプバーン絡みの作品とかで馴染みがある程度で案外と観ていない。本作も未見で、先日記事アップした「白いドレスの女」が本作を下敷きにしたということから興味ありで観ることに。 作品情報によると、ビリー・ワイルダー監督の本作は、フィルム・ノワールの古典として高く評価され、不倫による保険金殺人を取り上げた倒叙型サスペンスの先駆であり、その後の多くの映画・テレビドラマに影響を与えた作品といわれている。 オープニングがいい。 流れる音楽がいい。 夜更けの町にヘッドライトがせわしなく行きかい、急ブレーキの音が深夜の町に響く。 一人の男が倒れよろけながら、とある建物に入っていった……。 保険会社営業マンのネフは、自動車保険更新のため訪問した家で、その家の美しい後妻フィリスのしなやかな足に巻きついたアンクレットがネフの男心をそそる。 フィリスはネフにさりげなく夫に内緒で保険の話を持ち出す。犯罪の匂いを嗅ぎ取ったネフは、一旦は拒むもフィリスの魅力に抗しきれず、列車からの転覆事故に見せかけて夫を殺害し倍額保険を手に入れるための完全犯罪に手を染めてしまう。 会社側も多額の保険金支払いに自殺説が浮上し保険金支払いは没かと思われたが、ネフの相棒の調査員キースは自殺説を真っ向から否定し、残念ながら完全な事故だと断定する。 ほっと胸をなでおろしたのもつかの間。 しかし些細なことでも感じたら“すっぽん”のような執拗さで食い下がるキースが、夫の死と保険にある疑問を抱いてしまった。 袋小路に追い込まれ、保険は諦めろとフィリスを説得するも撥ね退けられる。 父の死後、継母のフィリスを嫌って家を出た娘ローラと接するうちに、ネフはローラの口からフィリスの本性を知り始める。 仕組んだのも手を下したのもネフ。 フィリスの仕組んだ計略にはめられたことをネフは思い知らされる。 フィリスの色香に迷ったネフが、ローラの清純さによって己の良心を取戻したのか。 フィリスを訪ねたネフは彼女と対峙する。 ピストルを手にしたフィリスがネフを撃つ。 フィリスに近づくネフ。 「撃てよ。なぜ撃たない。愛しているなんて信用しないぜ。」 「誰も愛してなんかいないわ。私は魂まで腐っているんだから。でも貴方を撃てないの!愛してしまうなんて…」 泣きながら抱きついたフィリスにネフはピストルの引き金を弾く。 「グッバイ、ベイビー」 崩れ落ちるフィリス。 深夜の街をよろけながら歩き、オフィスの自室に戻ったネフはテープレコーダーに向い、キースに宛てて殺人の告白をする。 この場面から本作は始まる。 そしてネフの口から語られる殺人の顛末。 全てを語り終えたネフが気がつくとドアにキースが立っていた。 「国境を越えるんだ」 「諦めろ。お前はもう駄目だ。 国境まで行けないぞ。エレベーターまでも行けないんだ。」 ドアの前で倒れたネフを抱きかかえ、煙草に火をつけてやるキース。 ここでも小道具をうまく効かせている。 「お前は俺に近づきすぎた。俺もずっと近くにいたんだ。俺もお前を愛している。」 仕事上の関係以上に、友情以上にもっと肉親に近い愛だったのだろうか。 ネフが瀕死の中でキースに殺人を告白し、そして愛を告白する。 男二人のこんな泣かせるシーンをラストに持ってくるなんて!女としては悔しいなって思う。 「白いドレスの女」でも友人の刑事や検事がハート逮捕にそれぞれに苦悩するシーンがあったけれど、ネフの最後の告白、最後のシーンは辛さが胸にこたえた。 またターナーがハートに「これだけは信じて!貴方を愛しているの」と何度か口にする言葉よりも、「貴方を撃てないの」といった女の言葉、このワン・シーンに、裏切った愛に刃を向けられたものの哀しみと真実が込められている。 たった一つの言葉、一つのシーンで本作に流れる悲劇を見事に物語っている。 上手いなぁ!っていうしかない。 人と人との悲しい部分、情け。人間の愚かさ、弱さがみせるやりきれない哀しみ。こんな人としての情感が深い余韻として残る。 この余韻なんだよね。最近の映画見終わっても引き摺ってこないのは……。 主人公でいわゆる女に操られる弱い男という設定のウォルター・ネフ役はかなり難航したらしく、フレッド・マクマレイの起用は抜擢だったようだ。 ヒロインのディードリクソン役のバーバラ・スタンウィックはそれまでは善良なヒロイン役が多く、オファーされた時は冷血な役に恐れをなしたそうだけれど、本作で悪女を見事に演じ役者として大きな脱皮をしたことだろう。大絶賛されたそうだ。 キース役のエドワード・G・ロビンソンがこの作品をぐっと引き締め、ラストで彼が見せた味が余韻を残す。役者の持ち味が作品に与える力って大きいなって思う。 本作を観た日にゃ… 他の作品などはず~っと後ろに退いてしまう。
by mchouette
| 2009-04-23 00:00
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