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THE SYRIAN BRIDE
2004年/イスラエル・フランス・ドイツ/97分 at:梅田ガーデンシネマ 監督: エラン・リクリス 1967年の第三次中東戦争でシリア領ゴラン高原がイスラエルに占領され、この地に暮らすドゥルーズ派はシリア人としての帰属意識が強く、イスラエル国籍を拒み、無国籍者として暮らすことを余儀なくさせられている。花嫁モナの結婚式当日の家族のそれぞれを淡々と描いた物語で、境界線で分断された民族の現実を、ことさらに悲劇っぽくも、シリアスにも描いているわけでもなく、下町の人情ドラマ的にさばさばとしたタッチで描かれているのだけれど、分断された絆、未来への可能性、崖っぷちの選択、それでも生きていくことの強い意思……ずっと鼻の奥をツンツンさせながら観ていた。 小作品ながら捨てがたい一作。 ゴラン高原とシリアには軍事ゾーンという境界線が設けられイスラエル側とシリア側の検問所には兵士が見張っている。 ゴラン高原に住むある一家の末娘モナが、境界線を越えてシリアの男性と結婚することに。しかし、彼女がいったんシリアに入ると、家族たちがいるイスラエル領内のゴラン高原には二度と戻れない。 シリアには大学に通う一家の三男がいる。境界線越しに拡声器で話す家族たち。 境界線が家族を分断し、 家族と故郷を捨てて境界線を越えなければ、無国籍者ドゥルーズ派の人々の未来への可能性もない。 進歩的な意識の持ち主でありながらも、種族のしきたりに従って種族の男と結婚し、この地に縛りつけられている一家の長女は、妹モナの未来のためにも婚礼の準備に奔走する。 ![]() 大学を出て弁護士となった一家の長男は、ドゥルーズ派の期待の星だったけれど、種族の女性と結婚するというしきたりに背きロシア人女性と結婚し、故郷に戻らなかったため、父親から勘当同然となっている。父親も長老たちからも結婚式の席に彼らを迎え入れたら村八分だと言い渡される。 一家の父親は頑強なまでのシリア派でイスラエルに抵抗し投獄され、保護観察下に置かれているため、軍事ゾーンでもある境界線まで娘を見送りに行けない。 無国籍のパスポートにイスラエル側の出国のスタンプが押され、通行手続をする国連赤十字の女性スタッフがシリア側に入国許可に行くが、イスラエル占領を認めていないシリア側では、イスラエル出国スタンプのパスポートは受理できないと拒否される。 またもやパスポートを持ってテクテク、テクテクと軍事ゾーンの長い道のりをイスラエル側まで歩く赤十字スタッフ。イスラエルは規則で決まったと突っぱね、シリアはシリアで認めないの一点張り。 その間、数時間、一家は境界線でひたすら事態解決を待つだけ。 シリア側でも花婿たち一行がひたすら花嫁が来るのを待っている。 政治によってある日突然イスラエル領となり境界が設けられ、分断され、そして今また政治によって翻弄され、なす術もなく、ただ待つしかない人々。 シリア側の兵士の提案でやっと解決の糸口かと思いきや、イスラエル側から戻ると、シリア側の担当兵士は交代していて、またもや振り出しに。 今日で任務終了の女性スタッフはとうとう切れてしまい「知らない!」とおさらばするし、イスラエル側スタッフも時間だからと帰ってしまう始末。 結婚式は延期に…こともなげにいう女性スタッフだが、彼らにはこの機会を逃すと次がないという厳しい現実がある。 後に残されるのは当事者一家だけ。 ![]() こんなシーンに、ダニス・タノヴィッチ監督の「ノー・マンズ・ランド」を思い出す。敵陣の間にある中間地帯の塹壕に取り残されたセルビア人とボスニア人兵士。セルビア人の下には地雷が。国連やジャーナリストがヒューマニズムを掲げ、爾来撤去に奔走するも、撤去不可能と知るや、じりじりと後退していき、一目散で逃げてしまうというブラックユーモア。後には地雷の背中に敷いた男の眼にバルカン半島の真っ青は青空だけが…。無国籍であるということ。 当たり前の幸せすら、ぎりぎりの選択を迫られるということ。 泣けない現実があるということ。 8年ぶりに帰ってきた長男を抱きしめる母の姿に、分断された家族の辛さが溢れている。 結婚に失敗したら…帰る家も戻る場所もない。胸いっぱいの不安を抱える花嫁モナ。 そんなモナのたった一人の決意…イスラエルにもシリアにも翻弄されない、自分の意思に従ってシリアに向かって、花婿の待つシリアに向かって、自分の未来に向かって一人で境界線を歩いていく姿に、そんな無言のシーンに生きる逞しさをひしひしと感じる。 生きる厳しさを知っているが故の、味わい深い作品。
by mchouette
| 2009-03-13 00:00
| ■映画
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