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先日「肉体の悪魔」を観て以来、1950年代フランス映画「知性の美」といわれたジェラール・フィリップのお一人様映画祭りを楽しんでおりまして、次に観たのが本作。この翌年、奇しくモディリアーニとほぼ同年齢でジェラールはこの世を去っている。 MONTPARNASSE 19 LES AMANTS DE MONTPARNASSE 1958年/フランス/108分 監督: ジャック・ベッケル 芸術という孤高の世界に生きることを選んだ人間は、不遇のうちに一生を終え、死んだ後にその作品が評価される宿命を背負っているんだろうか。 画家のアメデオ・クレメンテ・モディリアーニ(Amedeo Clemente Modigliani, 1884年7月12日~1920年1月24日)も、世間に見向きもされず、貧困と持病の肺結核に苦しみ、大量の飲酒、薬物依存などの不摂生から36歳という若さでこの世を去っている。そして妻のジャンヌも彼が死んだ2日後に、後を追って自宅から飛び降り自殺した。この時2人目の子どもを妊娠しており、妊娠9ヶ月だったという。 そんなモディリアーニと妻ジャンヌとの愛を描いた作品が「モディリアーニ 真実の愛」(2004)。監督はミック・デイヴィス。モディリアーニにはアンディ・ガルシア。私にはそれほどの感動を覚えるといった作品ではなかった。 それに比べると同じくモディリアーニの晩年を描いたジャック・ベッケル監督の本作「モンパルナスの灯」は作品の深みが違う。1919年(MONTPARNASSE 19)からその死までを描いている。 彼の才能を信じ、変わらぬ友情と惜しみない支援でモディリアーニを支え続けた画商のスボロウスキー、彼を愛した女たち、妻ジャンヌなど、彼を取り巻く人間模様の中でモディリアーニその人が語られ、そしてモディリアーニの才能をいち早く見抜きながらも、彼の作品価値は彼の死後だとその商品価値を見極め、彼の死を待ち続けるいわば経済至上主義の非情な画商モレルを対峙させることで、モディリアーニの芸術至上主義ともいえる孤高の魂が一層の痛ましさを帯びる。 不遇のうちにこの世を去った一人の画家の魂が現実の中で押しつぶされていく様を描いたジャック・ベッケル監督は厳しい視線と演出が際立つ。 本作はクス・オフュルスとアンリ・ジャンソンの企画だったものを、オフュルスの急逝でジャック・ベッケルがこの企画を受け継ぎ、脚本を大幅に改訂し、アンリ・ジャンソンの名前はクレジットから外れることになったそうだ。 そしてモディリアーニを演じたジェラール・フィリップの眼が実に素晴らしい。 諦めと怒りの混じった眼 遠く永遠を見つめるような澄んだ眼 ジャンヌを見つけた時の歓びに溢れた眼 ジャンヌをみつめる恋をした男の眼 焦燥と自嘲に己を責め続ける眼 絶望の淵を彷徨うような空ろな眼 切れ長のその眼からモディリアーニの苦悩が痛いほど伝わってくる。 ![]() そしてジェラール・フィリップの口から語られる台詞の一つ一つにモディリアーニの魂がこもっている。 「僕は大勢の中にいるほうが好きだ、孤独になれるから」 「傘は嫌いだ、空を隠してしまうから」 「君を幸せにしたい。もし不幸にしても、それは心ならずもだ」 そして愛するジャンヌを幸福に出来ないことに不甲斐なさと自責の念にかられながら、悲痛に叫ぶ。 「僕のせいじゃない。」 「僕から逃げてくれ。僕を卑怯者にさせないでくれ。」 「僕たちにも永遠の喜びがあるはずだ。違うかい。幸せになろう」 二枚目俳優として人気の高いジェラール・フィリップだが、パリ国立高等音楽・舞踊学校として現在もなお世界最高の水準にある「コンセルヴァトワール」演技を磨いたという実力は本物だろう。 画家としての己の誇りも魂も、現実の生の中で押しつぶされていく中で、モディリアーニは床に散らばったスケッチを一枚ずつ拾い集め、レストランに売りにいく。誰も見向きもせず、一人の婦人が憐れんで金を恵んでくれた。 生きるために、血肉ばかりか魂までも切り刻み売り渡すような悲痛なシーン。 そんなモディリアーニを、見つめる画商のモレル。 夜のモンパルナスンの街の灯に向かって、夢遊病者のように歩くモディリアーニ。その後ろを、狙った獲物が次第に弱っていく様を確かめながら確実な足取りで歩くモレル。 何かに憑かれたように歩くジェラール・フィリップの表情、そして死に近づいていくモディリアーニの後ろにピタリとついて歩くモレルを演じるリノ・ヴァンチュラのハゲタカのような非情の顔。2人の役者がみせる迫真の演技は、何度観ても凄まじさを感じる。 これはジャック・ベッケルだからこその演出だろう。 行き倒れたモディリアーニの死を見届けたモレルは、すぐさまモディリアーニのアパートを訪れ絵を物色する。喉から手が出るほどに欲しかったモディリアーニの絵が眼の前にある。 逸る思いで金を見せるモレル。 「お金より、彼には励ましが大事なんです。」 モディリアーニの死をまだ知らないジャンヌは慎ましやかにモレルに答える。 飢えたハゲタカのようにモディリアーニの全てを貪り食らうように彼の絵を漁り続けるモレル。これが芸術の至高を求め続けた画家が生きた現実でもあるだろう。 36歳でこの世を去ったモディリアーニを演じたジェラール・フィリップもまた本作の翌年、肝臓癌で37歳の誕生日の9日前に亡くなっているということに、ジェラールがみせたモディリアーニの最期の表情が一層に痛ましい。 そしてモディリアーニの妻ジャンヌを演じた26歳のアヌーク・エーメが初々しい。 ![]()
by mchouette
| 2009-02-12 00:00
| ■映画
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