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5X2
2004年/フランス/90分/ R-15 監督: フランソワ・オゾン 「スイミング・プール」では、思うままをまとまりもなく書いてしまったので、本作はさらりとと思っていたのですが。 マイ・シネマコーナーから本作DVDを引っ張り出してきて久々にこの作品を再鑑賞すると、じっくりと描きこまれた映像に、やっぱりオゾンって上手いよなって思い、映像観ていたらあれこれと思いが広がっていく。 やっぱり、この作品も書きたいことを書きたいままに、とりとめもなく書いてしまうことになる。 この作品は邦題からもわかるように、一組のカップル、マリオンとジルの「出会い」から「離婚」までを5つのエピソードが時間を逆行させて描かれている。 原題は「5×2」 さすが短編王と異名をとったオゾン。それぞれが独立した形をとっていて、破局の不安を孕ませた5つの物語における二人を描いた作品ともいえるだろう。 オゾンは本作を、現代社会の若いカップルの典型ではなく、私的な物語として描きたいと語っている。 そしてそんな二人の物語に、このシーン、この映像にびったりといわんばかりのイタリアン・ポップスをもってくるあたり、オゾンの音楽センスが光る。 そんなラブソングで切ない気分で映像に浸らせておきながら、そこから見えるのは、男と女の深くて冷たくて暗い深淵がぱくりと口をあけている。 「離婚」 裁判所で離婚手続きをとるマリオンとジルで始まる。 離婚手続きを終えた二人はホテルの一室に入る。最後のセックスをするためだろう。多分ジルに促されてのことだろう。 ![]() ここで男と女の生理の違いをまざまざと見せつけられる。 男は身体でセックスをし、女は心でセックスをする。心が離れたマリオンの肉体はジルを拒絶する。ほとんどレイプに近い形でジルに後ろから犯されたマリオン。マリオンの瞳には苦痛と屈辱と絶望の涙が浮かんでいた。 マリオンの中にひとかけら残っていただろう希望がことごとく砕け散ってしまった。そんなマリオに「もういちどやり直せないか」というジルが最後の望みで投げ掛けた言葉。 マリオンに恋人がいるかどうか気にするジル。 競争社会で生きてきたマリオンは離婚の勝ち負けに拘る。 終っただけなのよ。そう答えるマリオン。 同じところにいても、違うところを見ているジルとマリオン。 ジルを残しホテルの薄暗い力尽きた足取りでゆっくりと廊下を歩き、エレベーターに乗ったマリオン。 もうジルとの関係で涙は流したくない。 そんなマリオンの映像にかぶさるように流れてくるのはボビー・ソロの「頬にかかる涙」 この歌を聴いた瞬間。 思わず心の中で「オゾン!」って叫んでしまった。 こんな女一人の、いかにもメロドラマといわんばかりの映像に、これまたベタベタのイタリアン・ポップスをぶつけてくるなんて! この映像とこの選曲には、完全にやられてしまった。 あとは、この物語にはズボズボとはまり込んでしまうだけ。 「特別なディナー」 ジルの兄と、彼の新しい恋人の青年をディナーに招待した夜。 ジルが話した2人で行ったパーティ。乱交パーティになったそこでジルは自分の体験談を得意げに話した。男ともやったセックスを得意げに話す。 一緒に乱交パーティに入ろうと言ったけれどマリオンは入らなかったんだ。彼女は見るのが好きなのだ。 マリオンと共犯者となることを求めたジルと、そこに入ろうとしなかったマリオン。 ジルにとってそれはマリオンの裏切りとして映っただろう。 口に出さないけれど、二人の間に沈殿していた澱がゆらゆらと動き始めた。 静かに沈んでいるものを、鷲づかみにして目の前に見せつけるジルの間に冷たい空気を感じてしまうマリオン。 「愛」がごとごとく棘になって互いをちくちくと刺していく。 ここで面白いのが、ジルの兄と恋人の口を通して同性愛カップルである彼らの愛のありようを語らせているところだ。 欲望を抑えるのは不自然だ、貞節とかは信じないと語る兄の恋人。 異性愛では、それが相手への裏切り、不倫として破局の原因になることが、この2人には相手に対する束縛だと捉えている。 互いに束縛しあわず、自由な関係で愛し合っている彼らと、何かに囚われギスギスしながらも夫婦の関係を保っているジルとマリオンの関係。 彼らの自由な関係を羨ましいというマリオンに、兄のいう「プラトニック・ラブ?」欺瞞だと頭ごなしに軽蔑する。 どこまで噛み合わなくなってるんだろう。 ジルとの生活に鉛のような重さを感じるマリオン。 夜中に子ども部屋で子どもに添い寝するジルを眺めながら、出産の日を思いだす。 大きなお腹を抱えて病院の廊下を歩くマリオン。 流れるのはウィルマ・ゴイクが歌う「愛のめざめ」。 「出産」 胎盤異常で、帝王切開で予定よりも早く出産することになったマリオン。 マリオンからの連絡に、ジルは逃げるように仕事をし、ランチを食べて、マリオンから掛かった電話にも出ず、ようやく病院に行った時は出産は終っていて、保育器で弱々しく動いている我が子に戸惑いをみせる。 突然、目の前に突きつけられた父親になるということ。目の前に不意に出現した我が子の姿。どう向き合えばいいのか分からないのだろうか。マリオンに会わずに病院を出てしまったジルは、雨が降る夜の街で車を停めて悶々とする。 そんなジルの臆した姿にルイジ・コンテの「君に恋して」が切なくかぶさる。 この選曲にはかなり悩んだそうだ。 ようやく掛かってきたジルからの電話に、批判めいた言葉を口にせず、「家に帰って着替えを持ってきて」と頼む。 電話を切ったマリオンの表情には、何かを諦めてしまっているような悲しさがある。 ここで登場するマリオンの両親。ジルとマリオンの結婚式の日。パーティが終った会場で2人寄り添ってダンスを躍っていた父と母。罵り合いいがみ合いながらも愛し合っている2人。 愛し合っているから罵り合うのだろう。 罵る前に、どちらかが口をつぐんでしまっていたジルとマリオン。 「結婚」 幸せに溢れていた二人の結婚式。 飲んで踊って騒ぎ疲れたジルはマリオンがドレスを脱いでいる間に寝てしまった。新婚初夜に一人取り残されたマリオン。 ジーンズに着替えて外へ出るマリオン。 喧騒のあとの余韻だけが残る人気のなくなった結婚式会場。 プラターズの「煙が目にしみる」がマリオンの胸の寂しさを物語っている。 森の中で出あったアメリカ人から求められるままにセックスをしてしまったマリオン。でも愛しているのはジル。部屋にもどったマリオンは愛するジルが入ることに幸せを噛み締める。 男性から見たら非常な裏切り行為と映るだろうけれど、このマリオンの心情は、わかるなぁ。 ![]() 「出会い」 そして2人が出会ったイタリアのリゾート地。 ジルは4年越しの恋人ときていたけれど、二人の関係は破局寸前だった。 マリオンは友人の突然のキャンセルで一人旅。 恋人とは4ヶ月前に別れたばかり。 仕事の関係で互いに知っていた二人はすぐに親しく打ち解ける。 ジルの恋人は、ジルの関心が自分からマリオンに傾いてしまっていることを鋭く察知した彼女は、彼との別れを決意し、一人山登りに参加し、残ったジルは誰もいない砂浜でマリオンと出会う。 沈む夕陽で茜色に染まる海に入っていくジルとマリオン。 海は凪ぎ、二人を静かに受け入れる。海と二人のシルエットが溶け合う美しいラストシーン。 オゾンはここで2人のシルエットを一つにするなどといった野暮でクサイ演出はしていない。二人並んで海に入っていくジルとマリオンの間は少し離れている。そのままカメラは沖に向かって小さくなっていく二人の姿を映し出している。 ![]() そしてエンドクレジットで流れるのはパオロ・コンテの「スパークリング・パートナー」 この曲はディナーパーティの後、マリオンがジルの兄とセクシーに躍っていた時に流れていた曲。 ニコ・フィデンコの「セ・ミ・ペルデライ(もし君が僕を失えば)」の軽快な曲の中、バカンス先の海で恋人と二人でじゃれあうシーンで始まった最後のエピソード「出会い」 一つの恋が終わり、別れの涙からジルとマリオンの新しい恋が生まれた。 それぞれのエピソードでは、どちらかというとマリアンヌの心情により光をあてて描いているように見えるけれど、ジルはそれぞれのエピソードでその風貌が変わっていく。 髭を剃ってにこやかだった出会いの頃から、無精ひげとなり、「離婚」のエピソードでは髭を伸ばした風貌となる。 年齢の変化という意味もあるだろうけれど、生活に疲れたジルを感じる。 自信に溢れていた若い頃から、もう若くはない年齢にあるんだという事実。 恋が終っても、新しい出会いの予感に胸が疼いていた若い時と比べて、離婚した2人はそれぞれに恋人がいるようだけれど、新しい関係にも疲れている。 4年ごしの恋人からマリオンに、いとも簡単に相手を乗り換えたジル。セックスで解消できた若い時の恋。 そのジルが、数年間の結婚生活にピリオドを打つ日に彼がみせた未練の姿。この期に及んでなお一抹の可能性に縋ろうとする。 結婚とはこれほどの重い関係だったのだろう。 イタリアン・ポップスに乗って描かれた二人の出会いから離婚までの、いかにもメロドラマ的なストーリーだけれど、そんな映像から人生の重さがじわじわと滲み出してくる。 ベタベタのラブストーリーの顔をさせて、極上の人間ドラマに仕上げていくあたりの演出手腕は、さすがオゾン! DVDには時間軸に沿ったシークエンスの「5×2」が収録されている。 とても重いドラマを、最後は極上のラブストーリーで余韻を残す映像に仕上げている。 さすがオゾン。 余談だけれど、企画の段階ではジル止まりオンにはヴァンサン・カッセルとソフィー・マルソーが予定されていたそうだ。そして2人とあったオゾンは、自分の意図したストーリーに合わないと思ったそうだ。キャスティングの変更は製作者側とは随分ともめたようだ。
by mchouette
| 2009-01-24 00:00
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