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2007年/アメリカ/148分
at:TOHOシネマズ梅田 ……荒野へ 一人の若者の魂の軌跡を描いた映画だろう。 1990年、ジョージア州の大学を卒業した22歳の青年、クリス・マッカンドレス。 若者とは、社会あるいは時代そのものと闘うことで自らのアイデンティティに目覚めていくものだろう。60年代の若者は、国家という名の体制に闘いを挑み、自分たちの言葉、音楽、価値観を獲得していった。しかしその反逆の精神もまたより豊かな物質文明の中で急速に失われていき、そしてその時代に遅れてきたクリスの世代は、すでに闘いの場そのものが失われた世代といえるだろう。 クリスはその闘いの場をアラスカの荒野に求めた。 偽りの自分を抹殺すべく西へ向い、そしてさらに北へ、アラスカの荒野に自らの闘いの場を求めた、無謀とも思えるこの若者の旅を、ショーン・ペンは孤独の痛ましさよりも、自らの魂を切り拓くための若者の孤独な挑戦として、乾いたタッチで描いている。見事な演出。 愛よりも金銭よりも信心よりも名声よりも公平よりも真理を与えてくれ彼が求めた真理とは、彼自身が語りうる真の言葉だろう。 そのきっかけが両親の結婚と自分の出自にまつわる事であったとしても、たとえそれがなくとも、彼の魂は、やはりどこかで自らの言葉を求める旅に出ただろう。 そして彼が辿りついた言葉は、叡智としての「神」、そして幸福のありか。 幸福が現実となるのはそして彼が最期にみたのは突き抜けるような青空だった。 そして、クリスの魂の旅を通して伝わってくるのは西部開拓の時代から脈々と流れるアメリカン・スピリット。ショーン・ペンの内にも遺伝子として受け継がれているであろう熱い魂を感じた。 赤茶けた岩肌をみせる荒野、雄大な自然、コロラドの急流、アラスカの雪原、広大な農場、狩猟、ヒッピーのカップル、社会からのアウトサイダーたち、農場主、退役軍人……アメリカを熱く語っている。 コーエン兄弟は「ノーカントリー」でアメリカの病巣を抉り ポール・トーマス・アンダーソンは「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」でダニエル・デイ=ルイスに成り上がってきたアメリカそのものを体現させ、 ロバート・レッドフォードは「大いなる陰謀」でアメリカの良心を語り ポール・ハギスは「告発のとき」でアメリカの恥部を語り そしてショーン・ペンは「イン・トゥ・ザ・ワイルド」にアメリカン・スピリットを熱く語っている。 またしても…アメリカがのっぴきならぬ所にあってなお、だからこそだろう、アメリカを語る映画が次々と生まれてくるということの強さに嫉妬さえ感じる。 クリスという一人の若者に、2年もの間たった一人で大地を歩かせ、より過酷な環境へと向わせるだけの厳しさと優しさをアメリカという国がもっていることをあらためて知る。 自然の罠に嵌ってしまったクリスの死との戦い、そしてその孤独な死は悲痛であり、見終わった後は、静かだけれど打ちのめされるに似た衝撃にしばし席に座ったままになってしまう一方で、彼が一筋の涙とともに見せた微笑に、これは一つのハッピーエンドでもあるのだろうという思いも与えてくれる。青春そのものがもつ真剣さ、清清しさが観るものに感動を与えてくれる。 またしてもショーン・ペンは凄い作品を私たちに見せつけてくれた。 クリスを演じたエミール・ハーシュ。それほど長身ではないが幅ひろい役柄が期待できる俳優になるんではないかしら。18kgの減量で挑んだ終盤の迫真の演技、そして彼の眼に流れた一筋の涙には、やはり胸が締めつけられる。 監督: ショーン・ペン 製作: ショーン・ペン/アート・リンソン/ビル・ポーラッド 製作総指揮: ジョン・J・ケリー/フランク・ヒルデブランド/デヴィッド・ブロッカー 原作: ジョン・クラカワー 『荒野へ』(集英社刊) 脚本: ショーン・ペン 撮影: エリック・ゴーティエ 音楽: マイケル・ブルック /カーキ・キング/ エディ・ヴェダー 出演: エミール・ハーシュ/マーシャ・ゲイ・ハーデン/ウィリアム・ハート/ジェナ・マローン/ キャサリン・キーナー/ヴィンス・ヴォーン/クリステン・スチュワート/ハル・ホルブルック/ブライアン・ディアカー/
by mchouette
| 2008-09-27 11:00
| ■映画
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