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TROUBLE IN PARADISE
1932年/アメリカ/82分 やっと観れたエルンスト・ルビッチ監督の「極楽特急」といえば大袈裟かしら。 レンタルショップでずっと捜していて、私が捜せなかっただけなのか、なかなか見つからなかった「極楽特急」。捜し求めた恋人に出合った気分でした。 エルンスト・ルビッチ(Ernst Lubitsch) ベニスのホテルで出会った泥棒紳士と泥棒淑女。お宝を奪い合い、そして愛し合ってしまう。 そして2年後。恋人同士となった2人が狙う相手はパリに暮らす大富豪の若き未亡人。まんまと未亡人の家に召抱えられた2人だが、泥棒紳士の方が未亡人のハートまでも盗んでしまい、彼もまた未亡人を愛してしまうというとんだ展開に……。 それを知った泥棒淑女。 そして泥棒紳士を追い出そうと躍起になる未亡人の会計顧問。 ベニスのつけがパリくんだりまで…泥棒紳士の正体が未亡人にばれてしまう。 三角関係の行方は…。 そして泥棒紳士のピンチやいかに…。 冒頭。ベニスのホテル。 男爵と呼ばれる一人の紳士がホテルの窓から夜風に吹かれ…というポーズで佇んでいる。そこへホテルのボーイが食事のオーダーに。 「グラスにあの月の輝きを浮かべてくれたまえ」などと気障な台詞であれこれ注文をする紳士。 「承知いたしました。」 そのたびに生真面目に応えるボーイ。 「最後に、君に。…消えてくれたまえ。」 それにも真面目に対応するボーイ。 軽妙洒脱というか、こんな台詞のやり取りにクスリと笑ってしまい、すっかりルビッチ・テイストにはまってしまう。 男が立って、その横にボーイが立って…それだけの構図で普通にしゃべっているだけなのだけれど、立ち位置、間合い、ポーズ、目線といったところから醸し出される絶妙な空気。 この絶妙さは言葉で説明するにも、どう表現したらいいのだろうと、はたと戸惑ってしまう。 これがルビッチ・タッチというのだろう。 登場人物たちは、不必要な台詞など喋らない。それでいて捻りの利いた小気味よいリズムで相手を煙にまく台詞回しの巧みさ。 そしてやたらと動き回らない。 ましてや泣いたり、怒ったり、嘆いたりといった大袈裟な演技など不必要にしない。 それでいて、妙におかしくって思わずニヤリとしてしまったり、次の展開にドキドキしてしまったり……。 かの蓮見重彦氏はルビッチ生誕100周年回顧特集に寄せて書かれたものだろう「いま、ルビッチという名のゲームが始まる」の中でかように大袈裟に語られている。 さて、ベニスのホテルの件の男爵は真っ赤な嘘で、本業は泥棒。 この泥棒紳士がベニスのホテルで泥棒淑女と出会うシーンも傑作だ。 優雅に食事をしながら、互いに泥棒だと見抜きあい、その間もかくも上品に振舞いながら、それぞれに相手から盗ったものを、次々と披露しあい……財布、時計、ガーターベルトまで!…すっかり意気投合し、抱き合って、そして恋に落ちてしまった2人。 コンビを組んで泥棒家業に励む2人の次なるターゲット。 まんまと大富豪の未亡人の私設秘書に成りすました泥棒紳士のパーティの席での見事なホストぶり! するり、するりとヤバさをかわしていく巧みさ。 ルビッチの身上は、あくまでも上品で、粋で、言葉の駆け引き、遊び心を心得ている。 男と女の恋の駆け引きも、見詰め合って、ほとんど顔がくっつくらいまで近づきあって、見詰め合って、指をパチン、パチンと鳴らしながら、互いの胸の内を探りあう。 男と女の心情を二つ並んだドアで巧みに表現している。 置時計、階段、来訪を告げるベルの音…小道具も利いている。 泥棒紳士と夫人の関係を知った泥棒淑女が、「ただで貴女にくれてやるわ」と2人の前から去っていき、正体がばれてしまった泥棒紳士もおさらばするしかない。 泥棒紳士が夫人に訊ねる。 「失ったものは?」 黙って首を振る夫人の心の内は「あなたよ。あなたの愛よ」と言っているのだろう。 すかさず泥棒紳士は胸からさっきまで夫人が身につけていた真珠の首飾りとブレスレットを取り出して言う「彼女へのお詫びに」と。 ここまで言われたら認めるしかない夫人も大人の粋を心得ている。 駅に向う車中の泥棒紳士と泥棒淑女。 彼女の機嫌をとろうと夫人から盗んだ真珠の首飾りを捜す泥棒紳士だが、どこにもない! すかさずバッグからその首飾りを意気揚揚と取り出す泥棒淑女。他にもしっかりとダイヤをはめ込んだ夫人のバッグもゲットしていた。 すかさずバッグに入っているべきお金が泥棒紳士のポケットから…根っから泥棒が好きな二人はやっぱり愛し合っていて最後は抱き合う。 出合った最初の場面で最後を締めくくる切れの良さ。 観ている方も「してやったり!」と思わずニンマリとしてしまう。 これが1932年。日本で言えば昭和初期。男女席を同じくせずの時代にあって、海外ではかくも粋な人生の駆け引き、機微を謳った映画を人々は観ていたのかと、ふと作品の製作年に目が行ってしまう。 泥棒紳士役のハーバート・マーシャル。泥棒淑女のミリアム・ホプキンス。未亡人のケイ・フランシス。30年代のアメリカ映画を代表する役者だそうだ。 監督: エルンスト・ルビッチ 原作: ラズロ・アラダール 脚本: サムソン・ラファエルソン 撮影: ヴィクター・ミルナー 出演: ミリアム・ホプキンス/ケイ・フランシス/ハーバート・マーシャル/チャーリー・ラグルス/エドワード・エヴェレット・ホートン/C・オーブリー・スミス/ロバート・グリーグ
by mchouette
| 2008-09-17 19:32
| ■映画
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