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DEUX HOMMES DANS LA VILLE
1973年/フランス/100分 先日、感想をあげた「冒険者たち」に続きアラン・ドロンの映画をもう一つ。 銀行強盗の主犯として12年の刑で服役中のジーノ(アラン・ドロン)は、保護司のジェルマン(ジャン・ギャバン)の尽力で、2年の刑期を残して出所した。出所後の彼は町の印刷所で働き、ムショ仲間の誘いにも耳を貸さず、小さな花屋を営む妻とささやかだが幸せな日々を過ごしていたが、交通事故で愛する妻を亡くしてしまった。月日は流れ、新しい恋人が出来たジーノだったが、かつてジーノを捕えたゴワトロー警部(ミシェル・ブーケ)が、ジーノが暮らす町に赴任してきて、その彼と偶然に出会ってしまったことがジーノの悲劇の始まりだった。それから犯罪の予防に躍起となるゴワトローの執拗な監視が始まった……。 邦題の「暗黒街のふたり」からくるイメージは、2人のギャングの物語と捉えられそうなタイトルだけれど、原題「Deux Hommes Dans La Ville」」は直訳すると「街のふたり」。 「彼らは弱い人間だ。彼らの中の出来心をとめてやらなければならない。」 犯罪者の社会復帰を見守る一人の初老の保護司の目を通して、前科のある一人の男が、出所後は市民社会で真っ当に働き、妻との堅気の生活に幸福を見出すも、「犯罪に手を染めた人間は必ず犯罪を犯す」という信念から犯罪予防に異常なまでの執念をもやす一人の刑事の執拗な監視に追い詰められ、ついにはその刑事の殺人罪でギロチンにかけられてしまうという、理不尽ともいえる運命に翻弄された一人の男の姿を描いた社会派ドラマといえるだろう。 ![]() 家畜同然のような刑務所の劣悪な環境。 犯罪者に対する社会の偏見。 法の外におかれている犯罪者の人間性。 陪審員制度。 ギロチンという旧態然としたフランスの死刑。 そして死刑制度そのもの。 一時はギャングの世界に身をおき、自らも死刑の判決を受けたという体験をもつ本作の監督であるジョゼ・ジョヴァンニの、社会に対する痛烈な批判がそこかしこにこめられている。今日的テーマにもつながるものだろう。 監督であるジョゼ・ジョヴァンニが、大統領の恩赦によって死刑台の淵から生還したその陰で、人知れず尽力した父の愛を描いた「父よ」の中でも、出所後、仕事にありつけない仲間に、作家デビューしたジョヴァンニが金を工面する場面もあった。出所後、再び悪に手を染めていかざるを得ない彼らの姿、社会の理不尽さに臍をかむ思いで見てきたのだろう。 ブログ「時代の情景」のトムさんは<「暗黒街のふたり」はD・W・グリフィスの『イントレランス』現代編の遺伝子を引き継いだ作品だと思ってます。>と指摘されている。 『イントレランス』(Intolerance)は、「映画の父」と呼ばれるD・W・グリフィス監督による1916年作のモノクロ・サイレントのアメリカ映画で、いつの時代もイントレランス(不寛容)が世を覆っていたことを描き、人間の心の狭さを糾弾した作品である。 時代は第一次大戦に世界が大きく揺れており、グリフィスのこの戦争に対する反戦の意思が込められた作品ともいえるだろう。 映画「イントレランス」の製作現場を描いたタヴィアーニ兄弟の「グッドモーニング・バビロン」(1987)でも、イントレランスの初上映の会場の外で、第一次大戦勃発のビラがまかれているというシーンが描かれていた。 「イントレランス」の内容は、 社会の不寛容のため、青年が無実の罪で死刑宣告を受ける製作当時のアメリカ。不寛容なファリサイ派のために起こったキリストの受難。 イシュタル信仰興隆に不寛容なベル教神官の裏切りでペルシャに滅ぼされるバビロン。 ユグノーに対し不寛容な宗教政策によるフランスのサン・バルテルミの虐殺。この4つの異なる時代の不寛容を並列的に描き、最後に4つの時代は結集し、寛容を説くという構成になっている。 社会自体が病んでいるとしかいいようのない現代社会で起きている犯罪の様相をみると、「暗黒街のふたり」で描かれていた状況よりも、事態はさらに深刻化し、「暗黒街のふたり」で描かれた枠では捉えきれないところまでいっている。 しかし、この病巣とて不寛容が生み出した末期的症状といえる。 「ツォツィTSOTSI」という2005年製作のアフリカ映画でも、監督のギャヴィン・フッドは南アフリカの救いがたい貧困の一つの希望として「贖罪と寛容」をテーマに描いた作品だ。アパルトヘイト後、黒人で初めて南アフリカ大統領になったネルソン・マンデラは「忘れないが、許そう」と言って未来に向って一歩踏み出した、その言葉に通じる作品でもある。 話を「暗黒街のふたり」に戻そう。 この映画で、保護司を演じたジャン・ギャバンが、出所してきたジーノ演じるアラン・ドロンを見守っていく眼差しが秀逸だ。 そして、ゴワトロー警部の執拗な監視と行きすぎた行為の手が、恋人にまで及び、思わず逆上して彼の首を絞めてしまう、ドロンが見せる怒りと、憎しみと、悔しさが一気に噴出したその表情は、40歳を前に、ドロンが役者としてみせた演技の中でも際立つものではないだろうか。 死刑執行前、ワイシャツの襟を鋏で切られ、ジーノの首から肩がむき出しになったこのシーンには、少なからぬショックを受けた。 そしてギロチンの刃を前に、振り返ったドロンのギャバンに向けられた眼。そしてそんなドロンをじっと見つめるギャバンの眼。2人の男が一瞬交し合った無言の眼の中に様々な感情を見るものの中に沸き起こさせる。ラストでアラン・ドロンとジャン・ギャバンそれぞれがみせる眼にこめられた演技がやきつく映画だ。 「現金に手を出すな」でギャバンが相棒リトンにみせたあの表情、リトンの死を知らされた彼が愛人を前にしてみせたあの表情を思い出す。 孤独や無念さ、あるいは悲しみ、やるせなさをぐっと胸に噛み締めた表情に、これが「フレンチ・ノワール」といわれる独特の味でもあるのだなと思う。 監督: ジョゼ・ジョヴァンニ 脚本: ジョゼ・ジョヴァンニ 撮影: ジャン=ジャック・タルベ 音楽: フィリップ・サルド 出演: アラン・ドロン/ジャン・ギャバン/ミムジー・ファーマー/ミシェル・ブーケ/イラリア・オッキーニ/アリエル・ドンバール/ジェラール・ドパルデュー
by mchouette
| 2008-09-18 19:27
| ■映画
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