![]() by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
クシシュトフ・キェシロフスキ
(Krzysztof Kieślowski, 1941年6月27日~1996年3月13日) 彼ほど、人と人を隔てる超えようのない距離を敏感に捉え、その孤独を厳しく研ぎ澄ました眼で見つめ続けた映画作家はいないのではないだろうか。 シネ・フィルで放映された「愛に関する短いフィルム」(デカローグ第6話:「ある愛に関する物語」の劇場公開版)をみていて、つくづくそう思う。この作品も、オリジナル・ヴァージョンの「ある愛に関する物語」も見るたびに、突き刺さるような痛みを感じる。 ![]() 70年代でキェシロフスキはポーランド社会の闇の部分、危機的状況を人間をテーマに鋭く指摘したドキュメンタリー映画を数多く製作している。 アンジェ・ワイダ監督の「大理石の男」(1977)の数年前に、スターリン時代のある政治活動家が権力者達の欺きに絶望し、煉瓦工に至るまでを描いた「煉瓦工」(1973)、その2年後には党を除名を言い渡された労働者の聴聞会を帰国名に綴り、暗に党を批判した作品「ある党員の履歴書」を撮り、「病院」(1977)ではある病院の外科グループを隠しカメラで撮影し、医療現場の欠陥を超えた人間の友愛と献身の美しい姿を描いている。 そして、 工場の監督官に任命された誠実な男が、建設反対の住民との間で苦悩する姿を描いた長編デビュー作「傷跡」(1976年/104分) 平凡な工場労働者が8ミリカメラを手にしたことから、周囲との軋轢が生じる。国家体制に対する抵抗、そしてレンズを通して見つめることの危うさを描いた「アマチュア」(1979/112分) 列車に乗り込もうとする主人公が辿る運命を3つのエピソードに分けて語った「偶然」(1981/119分)。 トム・ティクヴァ監督「ラン・ローラ・ラン」などの原型ともいえる作品といえる。 夫を亡くした妻と、死後もなお妻を見守る夫。愛する者から引き離された現実を受け入れることの辛苦を描いた「終りなし」(1984/109分)。 フランソワ・オゾン監督の「まぼろし」も本作に影響されて描いたものだろう。 運命に翻弄される人間の孤独と苦悩。 キェシロフスキ作品の一貫したテーマだろう。 それはまたポーランドという国の受難の歴史とも重なる。 そしてキェシロフスキのフィルモグラフィをみると、彼の視線は、社会と個人の関係、個人と個人の関係から、更に人間の内面へと深まっていっているように思う。 「ある党員の履歴書」(1975)を撮り始めた頃、は「撮影の対象となっている人物の中にどんどん入り込んでいってしまう自分を感じました。ドキュメンタリー映画には超えてはならない一線があるのです、しかし、私はその人物の私生活に土足で入りこみ、話を勝手につくってしまうような衝動に襲われていたのです。」と自らの映画作法に危惧を覚えていたと語っている。 ![]() 人間の内面世界を凝視するキェシロフスキの冷徹な観察者の眼は、人間における社会と個人、個人と個人の関係における契約を示した旧約聖書「十戒」をモチーフに、苦悩、葛藤する人たちのそれぞれの愛の有様を日常風景の中で捉え10の物語として描きだした「デカローグ/Dekalog」(1988~1989)に凝縮されているといえるだろう。 キェシロフスキは「デカローグ」の仕事をしながら、常に、本質的に何が正しくて、何が誤まっているのか? 何が虚偽で、何が真実なのか? 何が誠実で、何が不誠実なのか? それに対して人はどのような態度をとったらよいのだろうか? を考えたという。そして「絶対的な基準は存在すると思う。」と語っている。(キェシロフスキ、「デカローグ」を語る) もともとはテレビドラマとして制作された10の物語。 キェシロフスキ作品でも私が特に好きな作品だ。 登場人物たちはいくつもの棟がならぶとある集合住宅に住んでいる。 ある物語の主人公が、別の物語ですれ違ったり、物語のbほとんどにちらりと登場する男もいる。そんな彼らの日常のとあるドラマの行く末を観客は目撃する。 第1話「ある運命に関する物語」53分 第2話「ある選択に関する物語57分 第3話「あるクリスマス・イブに関する物語」56分 第4話「ある父と娘に関する物語」55分 第5話「ある殺人に関する物語」57分 第6話「ある愛に関する物語」58分 第7話「ある告白に関する物語」55分 第8話「ある過去に関する物語」55分 第9話「ある孤独に関する物語」58分 第10話「ある希望に関する物語」57分 その中でも特に第6話「ある愛に関する物語」で描かれた、向かいのアパートに住む女性を覗く孤独な少年。「見つめること」「見つめられること」。二つのアパートの窓の距離感。二人を隔てる窓ガラス…。これ以上描きようがないほどに愛を求めるものの孤独が突き刺さるほどの痛みを伴って、残酷なまでに描き出されている。 本作は、第5話の、衝動的に殺人を犯した青年と彼を救えなかったことに苦悩する若き弁護士の苦悶を描いた「ある殺人に関する物語」とともに劇場公開用のロングヴァージョンも製作されている。ロングヴァージョンのタイトルはそれぞれ「殺人に関する短いフィルム」(1987年/85分)、「愛に関する短いフィルム」(1988年8/87分)。 「身を切るような孤独を知っている者だけが、人生の美しさを真に享受することができる。」 ~クシシュトフ・キェシロフスキ~ 孤独の中にあるからこそ、人は人とのつながりにおいて愛を求め、隔てられたその距離に苦悶し、そしてその激しい感情が時には人を殺人まで至らしめることもある……。 「デカローグ」の登場人物たちは、日常の営みのなかで、いまだ身を切るような孤独の底に沈んでいる。キェシロフスキは彼らに希望の光よりも厳しい事実、試練を突きつける。 そして「デカローグ」を経て、 「二人のベロニカ」(1991/98分)そして「自由、平等、博愛」というフランス国旗の象徴をテーマに描かれた「トリコロール三部作(青の愛/白の愛/赤の愛)」(1993~1994)で描かれた愛の試練と再生の姿に崇高ささえ感じる。 「私はモラルには興味がない。 興味があるのは美と感情だ。 しかし、もっとも大事なのは愛だと思う。 愛を失ったら、 生活は指の間からこぼれ落ちてしまう……」 ~クシシュトフ・キェシロフスキ~ シネフィル・イマジカでロング・ヴァージョン「愛に関する短いフィルム」を久々に鑑賞し、デカローグ(このDVDセットだけは買ってある!)のオリジナル・ヴァージョン「ある愛に関する物語」も合わせて鑑賞し、本作の感想を書き始めたら、キェシロフスキ作品に思いが入ってすっかり遠回りしてしまった。 「ある愛に関する物語」そして「愛に関する短いフィルム」の感想は「その2」として、明日になってしまうんかしら(書けるんかしら?)。 「その2」明日に続きます。
by mchouette
| 2008-08-27 00:00
| ■映画
| |||||||||
ファン申請 |
||