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LE VOYAGE DU BALLON ROUGE
2007年/フランス/113分 at・第七藝術劇場 パリ・オルセー美術館の開館20周年記念事業の一環として、同館の全面協力の下で製作された作品で、ホウ・シャオシェン監督が、少年と赤い風船の心の交流を詩的に綴ったアルベール・ラモリス監督の「赤い風船」にオマージュを捧げた作品。 ホウ・シャオシェン監督がオマージュを捧げたラモリス監督の「赤い風船」では、パスカル少年と赤い風船が歩くパリの街は、まだ戦後の重苦しさを引きずってはいたものの、ゆったりとした時間が流れていた。雨が降れば大人たちはパスカルを傘の中に入れてくれた。道行く人はパスカルの持っている赤い風船にふと立ち止まり空を仰いだ。 それから半世紀たった「ホウ・シャオシエンのレッド・バルーン」のパリの街は華やかで美しい。でもそんなパリの空を漂う赤い風船に、シモン少年が空を仰いで風船に呼びかけていても誰も眼もくれない。電車が行きかい、車がひしめき合い、人々は足早に通り過ぎるパリの街には、パスカル少年と赤い風船が歩き回ったあのおおらかな空間は喪われている。 シモンのお気に入りの遊びはカフェにあるピンボール・ゲーム。 シモンの母親は人形劇師で新作劇の準備に追われ、プライベートでは夫と別居し、部屋を貸している住人の家賃滞納と傍若無人な対応にいらついている。 そんなスザンヌとシモン親子の元に、映画学校の中国人留学生ソンがやってくる。彼女はラモリス監督の「赤い風船」に流れていた、あのゆったりとした時間と空気を漂わせた存在として、パリのスザンヌとシモンの時間に溶け込んでいく。そして彼女はシモンを被写体にして「赤い風船」を模した映画を撮ろうとする。 ソンを通して、ラモリス監督の「赤い風船」の時間と、ホウ・シャオシエンが描く現代の時間とが時空を超えて時には重なり、時には触れ合い、通い合い、そしてスザンヌの乾いた心もゆっくりと変わっていく……。 パリの空の下で暮らす、スザンヌ、シモンそしてソン。そんな彼らのなんでもない日常の時間と赤い風船が俯瞰するパリの風景をホウ・シャオシェンはあるがままに写し撮っていく。 シモンがふと空を見上げると、そこにはいつも彼を見守っている赤い風船がいる。そこに息子を遠くから見つめる父親の愛にも似た眼差しをふと感じる。 スザンヌを気遣うように窓からみつめる眼差しも感じる。 ふと見上げるとそこにいる赤い風船に、観ているほうも穏やかで安らいだ気持ちになってくる。 シモンを演じた少年も、中国人留学生ソンも映画初出演の素人だそうだ。そんな彼らの醸し出す自然な雰囲気がいい。 スザンヌを演じたジュリエット・ビノシュ。 一時、彼女の演技に作りすぎを感じた時期もあったけれど、最近の彼女をみていると、日常の何気ないささやかな動きを、とても細やかに自然な風に演じている。本作をみていても内面の機微をさりげなく表現できる女優だなと思う。 人形劇の声入れでみせた彼女の声色の演技も見事。 ホウ・シャオシェンの「百年恋歌」 (2005)で「今までの彼の作品はどちらかといえば叙事詩的なものであったが、本作はかなり芳醇な抒情詩的作品ではないだろうか。」とその作品を捉えた私だけれど、本作でも、ホウ・シャオシェンのふっと肩の力を抜いたような穏やかな情感を漂わせた映像は、ラモリス監督の「赤い風船」の詩的世界に通じるものがある。 半世紀を隔てて、二つの映像が触れ合い、互いに心を通い合わせる。 さりげないけれど、そんな心地よさを感じた。 監督: ホウ・シャオシェン 製作: クリスティーナ・ラーセン/フランソワ・マルゴラン 脚本: ホウ・シャオシェン/フランソワ・マルゴラン 撮影: リー・ピンビン 出演: ジュリエット・ビノシュ/シモン・イテアニュ/イポリット・ジラルド/ソン・ファン/ルイーズ・マルゴラン/アンナ・シガレヴィッチ
by mchouette
| 2008-08-25 00:00
| ■映画
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