by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
BADLANDS
1973年/アメリカ/95分 日本未公開/ビデオ 監督: テレンス・マリック 製作: テレンス・マリック 製作総指揮: エドワード・R・プレスマン 脚本: テレンス・マリック 撮影: ブライアン・プロビン/ステヴァン・ラーナー/タク・フジモト 美術: ジャック・フィスク 音楽: ジョージ・アリソン・ティプトン/ジェームズ・テイラー 出演: マーティン・シーン/シシー・スペイセク/ウォーレン・オーツ 先日アップした市川崑監督「股旅」も1973年製作の映画。 どちらも60年代から70年代という時代を反映した青春映画といえるだろう。 「天国の日々」(1978)、「シン・レッド・ライン」(1998)の監督テレンス・マリックの監督デビュー作でもあり、当時まだ無名だったマーティン・シーンが本作でサンセバスチャン映画祭主演男優賞受賞をとり役者として世に出るきっかけになった作品でもあり、シシー・スペイセクにとっては「キャリー」(1976)へのステップとなった作品でもあるとのこと。 この時のマーティン・シーンの顔は今とは雰囲気も随分違い、どうかすると息子のエミリオ・エステヴェスや、また兄とはタイプの異なるチャーリー・シーンとも重なる風貌をしていて、役柄はジェームス・ディーンに似た青年という設定で、彼の雰囲気がよく出ていた。 マーティン・シーンが無名だったので日本では未公開だったが、「地獄の黙示録」のウィラード大尉役で知られるようになり、邦題を「地獄の黙示録」になぞらえて「バッドランド」から「地獄の逃避行」としてビデオ発売されたもの。 内容は「俺たちに明日はない」などと重なるものがあるけれど、当時のアメリカン・ニューシネマで多く描かれた逃避行ものやロードムービー…「俺たちに明日はない」、「明日に向かって撃て!」、「イージー・ライダー」…などと比べると、逃走ドラマよりも彼らの内面を静かなタッチで描いた本作はインパクトに欠けたのだろうか、興行的に成功はしなかったそうだが、のちにクェンティン・タランティーノは「トゥルー・ロマンス」 (1993)の脚本でマリックにオマージュを捧げている。テーマ曲がそっくりだそうだが、そこまで気がつかなかった。 舞台はサウス・ダコタ。 ごみ収集人の25歳の青年キット(マーティン・シーン)は、仕事の帰りに出会ったホリー(シシー・スペイセク)という少女に惹かれ恋に落ちるが、ホリーの父親が2人の交際を強硬に反対したため、キットは脅すために彼に向けた銃で誤って射殺してしまう。 逃走するキットにホリーもついていき、そこから2人の逃避行が始まる。 車で逃走する彼らの姿をカメラは静かに追いかけていく。森の中で戯れる2人は夢の世界で遊ぶ無邪気な子供のようで、母親が亡くなり父親の厳格な躾のもとで育ったホリーと、将来の夢など持てぬキットにとっては、誰にも邪魔されない開放感に溢れていただろう。 カナダを目指して走り続ける二人。周りにあるのはどこまでも広がる広大な平原。 顰蹙を買うかもしれないけれど、こんな自然の中にいると、犯した罪の意識や、追われているという切迫感などは薄められてしまうんではないかと思えるほど、その自然の広大さに圧倒される。車を停め、平原でつかの間の休息をとる2人の他には誰もいないこんな光景にそんなことを思ってしまう。 殺人という罪悪感や切迫感など感じられず、強奪のためや通報される危険から人を射殺しながら国境にむけて走り続ける2人は、いつしか州あげて追われる身になっていき、2人の蜜月にも次第に疲労と空疎な空気が漂ってくる。 目の前を通り過ぎる列車を黙って見送り続ける二人。 「この列車に乗っていこうか…」逃げることに疲れたのだろうか、キットがふと呟く。 カー・ラジオから流れてくるナット・キング・コールの「A BLOSSOM FELL」で踊る二人。 「今の気持ちを歌にして歌うことができたら…」とキットは呟くが、そんな彼の言葉はもうホリーの前を通り過ぎていくだけだった。 逮捕されたキットは罪を一人で被り、電気椅子に座らされる。彼が電気椅子に座った最後の人間だそうだ。 広大な荒野や青空、自然、貨物列車などの映像が効果的に挿入され、2人の内面を静かに見つめ映像で描いた、その後の「天国の日々」のあの素晴らしい映像も感じさせるテレンス・マリックらしい詩的な映像世界が広がっている。 音楽もとても印象的。 キットは25歳、ホリーは15歳という設定ながら、撮影当時マーティン・シーンは32歳、シシー・スペイセクは23歳という年齢。シシーは当然ながら、マーティン・シーンも、すでに結婚していてエミリオ・エステヴェスもチャーリー・シーンも生まれていて、夫であり、父親だったわけだけれど、そんな風にも見えず、役と実年齢差も感じさせず、「地獄の黙示録」で、次第に精神を疲弊させていくウィラード大尉で見られたように、彼の細やかな演技が光っていた。ただ彼の雰囲気としてインパクトの弱さが役者としては長く芽の出ない不遇の時代を送ったのだろうなとも思う。 「アクターズ・スタジオ・インタビュー」に出演したマーティン・シーンが本作についても語っていた。テレンス・マリックから送られてきた本作の脚本を読み、その素晴らしさに感動し、マリックからの出演依頼に直ぐに承諾したそうだ。初めて撮影現場に向かう時、この作品でやっと役者として認められるだろうと思った彼は途中で車を停めて咽び泣いたと語っていた。 そして、金持ちの家を訪ねてくる男の役はテレンス・マリック本人だそうだ。でぷっと太っていて、アメリカの中年男性にありがちな体型で、実直そうな雰囲気の方。
by mchouette
| 2008-09-04 00:00
| ■映画
|
ファン申請 |
||