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「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭」で観た3作品だが、記事途中のままだったのを3つまとめて記事アップ。一人の女性の肖像に、戦後ドイツを重ねあわせて描いた作品で、ファスビンダー自ら戦後ドイツ史の三部作と呼んだ作品群。 戦争による破壊の後のドイツの復興を描いた「マリア・ブラウンの結婚」 そして再建のあとの最初の破壊を描いた「ローラ」。 ナチスが目指した第三帝国の過去と西ドイツの未来の過度期の状況を描いた「ベロニカ・フォスの憧れ」と続く。 ファスビンダーの冷徹な視線が貫かれている。 「ベロニカ・フォスの憧れ」は1982年ベルリン映画祭でグランプリを受賞し、同年の6月にファスビンダーは薬物中毒で死亡している。 彼はドイツ三部作に続き、さらに現在の西ドイツ史まで描こうとしていたそうだ。 早すぎる死が惜しまれる。 …………………………………………………………………………………… 「マリア・ブラウンの結婚」 DIE ECH DER MARIA BRAUN 1979年/西ドイツ/120分 監督: ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 製作: ミハエル・フェングラー 原案: ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 脚本: ペーター・メルテシャイマー/ペア・フレーリッヒ 撮影: ミヒャエル・バルハウス 音楽: ペール・ラーベン 出演: ハンナ・シグラ/クラウス・レーヴィッチェ/イヴァン・デニ ![]() 「マリア・ブラウン」の結婚では、第二次大戦下のドイツで連合軍の激しい空爆の中で結婚し、翌日には夫を戦場に送り出した“悲劇のヒロイン”ともなるマリアが、強い意志と、男と女の情愛にも溺れず流されず、人生の活路を切り開き社会的な成功を収めていく一人の女の生き様を描いている。 夫の戦死を聞き、戦後キャバレーで働くマリアは黒人米兵と親しくなり、彼の子を身篭るが、死んだはずの夫が帰還し、夫と米兵ともみ合いマリアは米兵を殺してしまう。マリアの罪を引き受けた夫は服役し、彼が誇りと幸福を取り戻すためには冨を得ることと信じて疑わず、マリアは10年間がむしゃらに働く。人間的な情など二の次に、彼女は社会的成功と冨を手中に収めていく。 そして成功と冨が約束した幸福を目の前にして、信じて疑わなかったものとの間に横たわる歪に愕然とした彼女は、事故か故意か、このラストはマリア・ブラウンの自滅ともいえるだろう。 ラストの爆破の衝撃には言い知れぬ空しさが余韻として残る。 ドイツ社会の目覚しいほどの経済復興と人間性の喪失。 「建物は復興されても、人々の絶望感は残ったままだ」とファスビンダーは語っている。 ファスビンダーが「下町のマリリン・モンロー」と評したハンナ・シグラが、戦後ドイツの鋼鉄のごとき復興精神を体現するかのような見事な演技でベルリン映画祭主演女優賞を獲得している。 ![]() ファスビンダーはインタビューで語っている。 「我々は、ドイツの歴史について本当に少ししか知りませんから、第一次情報に取材していくらか補充しなければならないということです。映画作家としては、つまり、この情報を使って観客に語りかける物語を作るわけです。これはその真実を観客に把握できるようにする以外の何ものでもありません。」 「最初の頃は、僕も悪い抑圧者や哀れな犠牲者を提示する映画をつくった。しかし、これでは結局うまくいかない。哀れな犠牲者や悪い抑圧者など存在しないのです。犠牲者だってたいてい自己主張できるし、それは場合によっては、社会的には必ずしも喜ばしくない結果にもなる可能性なのです」 「ぼくは、犠牲者が自分の加害者を探し求めるほうが、その逆の場合より多いと思う。政治的には間違っているかもしれないけれど、プライベートな領域ではそうです。抑圧者を探し求めるより、犠牲者を探すほうがはるかに難しい」 …………………………………………………………………………………… 続く二作目 「ローラ」 Lola 1981年/西ドイツ/113分 監督/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 撮影/クサヴァー・シュヴァルツェンベルガー 出演/バーバラ・ズコヴァ アルミン・ミューラー=シュタール ![]() 戦後ドイツの経済復興期を背景に、堅物の新任建設局長フォン・ボームと、地元の元締め的な存在ともいえる建設会社の経営者シュッケルト二人の男と、シュッケルトの愛人である娼婦ローラをめぐる三角関係を描いた作品。 シュッケルトが牛耳る町の悪弊に断固立ち向かうフォン・ボームだが、女の愛の前に彼のポリシーは脆くも崩れ去る。そして娼婦から足を洗い堅気のフォン・ボームと晴れて結婚をしたローラであるが、片方ではシュッケルトの経営していた娼館を手にいれ、シュッケルトとも双方合意の関係を続けるという逞しきしたたかさを見せている。西ドイツの自由主義経済社会の実態をシニカルに描き風刺画的な面白さに仕上がっている。 …………………………………………………………………………………… そして第三作目 「ベロニカ・フォスの憧れ」 DIE SEHNSUCHT DER VERONIKA VOSS 1982年/西ドイツ/115分 監督: ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 脚本: ペーター・メルテシャイマー/ペア・フレーリッヒ 撮影: クサファー・シュヴァルツェンベルガー 音楽: ペール・ラーベン 出演: ローゼル・ツュヒ/ヒルマール・ターテ/コーネリア・フロベス/アーミン・ミューラー=スタール ![]() 実在したナチ時代のスター、ジビレ・シュミッツをモデルに、人々に忘れ去られた女優ベロニカ・フォスの悲惨な後半生を描いた作品。 他の二作は女の強さを漲らせた作品であるのに比べ、本作は最も悲劇性の強い作品だろう。 ベロニカ・フォスは「抑圧者を探し求めるより、犠牲者を探すほうがはるかに難しい」とファスビンダーが語る犠牲者の一人であるかも知れない。 マリア・ブラウンは自ら時代を掴みにいき、その人間性を喪失する中で自滅し、そしてローラは時代に素直に寄り添い、そしてベロニカ・フォスは時代に翻弄された者の悲劇を語っているといえるだろう。 ナチの時代の名声にみちた華やかさを引き摺ったまま戦後を迎え、時代が終ったことを受け止め切れないベロニカ・フォス。そして主治医はそんなベロニカを薬漬けにし、彼女の財産を全て奪い取り、薬物過剰で彼女を死に至らしめようとしていた。 そんな悪事を知ったスポーツ記者のロベルトは真相を究明しようとするが、彼もまたベロニカにのめり込むあまり、静かに死を受け入れるベロニカを前に自らを喪失していく。 自由主義経済と個人主義の台頭の中で、未だ過去の亡霊から抜け出せ切れない西ドイツが抱える内面の混沌した暗部が描き出され、モノクロ映像にベロニカの狂気がさらに際だってくる。 …………………………………………………………………………………… マリア・ブラウン、ローラ、ベロニカ・フォスとファスビンダーによって描かれた3人の女性の肖像はどれも存在感のある美しさがある。 3部作以外でもファスビンダーの作品に登場する女たちには、生きるも死ぬも自らの人生を自らの意思で生きる、そんな魅力あるオーラが放たれている。こうして3人の女たちの肖像を観ていくと、女性をとても美しく描きあげる才能をもった作家だとあらためて思う。 未見であるハンナ・シグラ演じる「リリー・マルレーン」をファスビンダー映画祭で見逃したのが悔やまれる。
by mchouette
| 2008-08-23 00:00
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