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2007年/日本/114分
at:梅田ガーデンシネマ <ネタバレしてます> モーニング上映の「水の中のつぼみ」を観るために公開初日に梅田ガーデンシネマにいったところ、本作も同じく今日が公開初日だった。 「水の中のつぼみ」のあと本作の上映。 上映の後に是枝監督と、阿部寛が結婚した夏川結衣の連れ子あつしを演じた田中祥平君の舞台挨拶があるとのこと。ちょっとミーハーも手伝って、観るつもりはなかったものの、続きで観てもいいかって思い観ることに。 「誰も知らない」も初日に見に行ったところ、後日、是枝監督と柳楽君の舞台挨拶があると知り、娘に話したら行きたいの一言で舞台挨拶の日も観にいったっけ。 今回は会場からの質問に答えてくれる形だったので、興味深い話も聞けて良かった。 ↓初日プレゼントのポストカード ![]() 冒頭から実家に帰ったような懐かしい空気に包まれた映像。 亡くなった長男の命日に帰省する子どもたち家族を迎えるため、母親役の樹木希林が、娘役のYOUとあれこれお喋りしながら、でも手はてきぱきと動いて料理を作っている。 人参の皮を包丁でこそげ、豚肉の角煮、包丁で茗荷を半分に切りシャキシャキと千切りする音が懐かしい。茹で上がったジャガイモを摺り鉢に入れてすりこ木でつぶしていく…。 クローズアップのこんな映像に、「美味しそう!」って思わず心の中でつぶやいてしまう。 子どものころ、台所で出際よく料理する母をみていたり、摺り鉢をもってゴマをすっているのをじっと見ていたり、実家に帰ったら直ぐに母の手作りの料理を覗きにすぐに台所にいってあれこれつまみ食いをしたり…… えんどう豆の皮をみんなしてお喋りしながら剥いたり……。 こんな遠い記憶が空気と色と音とともに蘇ってくる。 そんなふと手を伸ばせばそこにあるような、私もそこにいるような、そんなリアルな感覚で描き出された冒頭のこんな映像を観ていて「素晴らしいな、この映画!」って思った。 料理の一つ一つ、それを作る手の動きをクローズアップで丁寧に映している。こんな映像に、このシーンに是枝監督にこの映画にこめた思いが凝縮されているんではないかしら。 そう思った。 料理の一つ一つも、ちょっとしたご馳走だけど普段着の飾らない料理。 こんな風に母が料理を作っくれていたな、そんなことが記憶から蘇ってくるような映像だった。 鑑賞後、舞台挨拶の後の質疑応答で、この冒頭シーンの感動を伝えたくって、私、手を挙げてそのことを話したら、是枝監督は「実はそれがこの映画をつくろうと思ったきっかけなんです。」って答えてくださったのにはちょっと感激。よくお袋が作ってくれた料理もあります話されていた。フード・コーディネーターの方の協力してもらったそうだが、是枝監督のおふくろの味でもあるんだろう。 是枝監督にとっては近年、亡くなられた母親に繋がる風景であり、日本のどこにでもある普段着の家族の肖像であり、そしてそれは失われつつある風景かもしれない。 世話好きな人の良い笑顔の下で女の夜叉をしっかりと持っている樹木希林。 グサリとした台詞をさらりと言える人は希林さんしかいないと是枝監督は語ってらした。 台詞の一つ一つのやり取りも面白い。 向田邦子のTVドラマ「阿修羅のごとく」「寺内貫太郎一家」などなどで描かれていた家族の何気ない光景と、その内にあるどろりとした暗部に通じるものがある。 訪ねていったんですよ。思い出話を語るように、井戸端会議のお喋りのように、風呂に入っている夫(原田芳雄)の問いかけにさらさらと答える妻(樹木希林)。 歯軋りするような修羅場を通って今に至った夫と妻の歴史。 長男を跡取りと期待し、亡くなった後も跡取りだった長男を語る両親に、背を向ける次男の良多(阿部寛)。彼のコンプレックスと、その裏返しの意固地さ。 一番近い存在だけれど、だからこそ一番疎ましく思う存在であり、優しさよりも甘えとエゴが先に出てしまう。感情がむき出しになってしまう。それを堪忍袋に包み込み、サラリとシニカルな言葉を口にする母。男の沽券に拘る父の居場所は患者が来なくなった診察室。 家族とは、家族だからこそなんと厄介な絆。 父が亡くなり、そんな父の後を追うように母が亡くなり、墓参りにきた良多一家。 ふと彼の口から出る言葉は、生前に母が良く口にしていた言葉。 家族とはこんな風に、ふと何気ないときに、その絆の深さを思い知り、時間の経過とともに確執も風化し、その絆の中に溶けていき、そしていつかしら思い出の中に沈殿していくけれど、刻み込まれた感覚が、ふと何気ないときにひょっこりと顔を出し、家族ってこんな風に繋がっているんだなって、こんな映画をみてあらためて思う。 風呂場の剥げ落ちたタイルと滑り防止の真新しい手すり。 こんなところに両親の老いをふと感じる。 良多にとって父親に突っ張っていたあの感覚が薄れ、老いた両親に優しさを覚える瞬間だろう。 家族の歴史、そして家族の肖像を、日常の視点で丁寧に描いた本作。 タイトルの「歩いても 歩いても」は作中でも使われている歌手いしだあゆみのヒット曲「ブルーライト・ヨコハマ」の歌詞の一節からとったもの。 是枝監督は子ども時代に聞いたこの曲が好きで、このフレーズを使った映画をつくりたいと思っていたそうだ。それが、自身の母親につながる家族の歴史と結びついたのだろう。 「歩いても 歩いても」 この映画を観た人それぞれが、このフレーズに自分の人生や遠い日の記憶と重ねあわせ、それぞれに感慨深いものがあるんではないかしら。 ゴンチチの奏でるメロディが、家族の夏のある一日を優しく包み込んでいる。 監督: 是枝裕和 企画: 安田匡裕 原作: 是枝裕和 脚本: 是枝裕和 撮影: 山崎裕 美術: 磯見俊裕/三ツ松けいこ 衣裳: 黒澤和子 編集: 是枝裕和 音楽: ゴンチチ 照明: 尾下栄治 録音: 弦巻裕/大竹修二 出演: 阿部寛/夏川結衣/YOU/高橋和也/田中祥平/寺島進/加藤治子/樹木希林/原田芳雄
by mchouette
| 2008-07-24 00:00
| ■映画
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