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SANGER FRAN ANDRA VANINGEN
2000年/スウェーデン=フランス/98分 ロイ・アンダーソン監督の7年ぶりの新作「愛おしき隣人」(2007)を5月に劇場公開されて鑑賞した。北欧スウェーデンのとある街の住人たちの、とある日常の一コマを描いた作品。 この作品がロイ・アンダーソン監督との初めての出会い。 半歩ずれたような不器用さとユーモアあふれるシュールな映像に、アンダーソン監督のユニークな個性を大いに感じた。 ロイ・アンダーソン監督は、1943年生まれ。 で、「愛おしき隣人」のシュールな世界がすっかり気に入った私は、ロイ・アンダーソン監督の復帰作でもある前作「散歩する惑星」観ました。 CG溢れるハイテク時代に、すべて撮影セットは自分たちで作り上げていき、車が凄まじく大渋滞するシーンはミニチュアを使い、空港のロビーから人々が大脱出するシーンはだまし絵を使いセットの中で撮影したとか…。 だからワンシーン、ワンカットで一つのシーンを撮りあげるのに約1ヶ月。全編の撮影終了まで4年というアナログ感覚あふれるローテク超大作。 「愛おしき隣人」が今日一日いろいろあったけど「明日があるよ!」という愛すべき人生ヴァージョンなら、この「散歩する惑星」は世紀末人生ヴァージョンといったところだろう。 あるいは、ロイ・アンダーソン監督は「散歩する惑星」で、明日も見えず、死者までもがこの世に悔恨や未練を残し安らかに眠れず彷徨う世紀末の世界の中で「私は静かに穏やかに暮らしたいだけなんだ」と嘆く人々の中のささやかな幸福を掬い取って、続編として「愛おしき隣人」を撮ったのではないかしら。 静かに穏やかに暮らしたいだけなんだ。 この惑星の住人たちもそう思って生きている人たち。 みんなそう願って生きているはず。 日焼けマシンに入りながら部下に大規模解雇の命令を下す会社経営者。 とある惑星の、とある街で次々と起こる不条理な仕打ち、出来事。 穏やかに暮らしたい気持ちと裏腹に、思うようにならない人生を嘆き、しがみつき、諦め、袋小路で立ち往生している人たちがいる。 まさに世紀末的様相。 登場する人物たちはプロの役者ではなく、街中でアンダーソン監督にスカウトされた人々ばかり。そんな彼らの泥臭くてぎこちない演技は、とても普通っぽくてユーモラスで、そんなごくありふれた人たちが見舞われる理不尽とも不条理ともいえる状況は、私たちが暮らすこの現代社会で毎日のように起きている事柄ばかり。 迷える羊達はまさにこの地球に生きる私たち。 映像の中の彼等を微笑ましく観ながら、笑えない状況にぎくりとする。 ロイ・アンダーソンの描き出す地獄絵は、シニカルまじりのユーモアあふれるシュールな世界。 「散歩する惑星」で思いっきり世紀末世界を散歩し、愕然とした思いにとらわれ、だからこそ「愛おしき隣人」で描かれた「ラスト・オーダー!また明日があるよ!」っていうバーテンダーのこんな一言に明日があることの幸福を感じる。 ↓「愛おしき隣人」のワンシーン 「散歩する惑星」→「愛おしき隣人」と普通の人々の悲喜こもごもを独自の映像センスで描いてきたロイ・アンダーソン監督。 続く作品をまた手作りで撮っているんでしょうか。 次回お目にかかれるのはおそらくこのペースだと数年先でしょう。 次はどんな寓話を聞かせてくれるのでしょうか。楽しみです。 監督・脚本:ロイ・アンダーソン プロデューサー:フィリップ・ボベール 撮影:イストヴァン・ボルバス/イェスパー・クレーヴェンオース 音楽:ベニー・アンダーソン 録音:ヤン・アルヴェマルク ミキシング:オーヴェ・スヴェンソン 小道具:ヨハンナ・バーンハッドソン 衣装:レオンティン・アルヴィットソン 特殊効果:ロバート・コマレク
by mchouette
| 2008-07-25 00:00
| ■映画
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