![]() by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
L'ATALANTE
1934年/フランス/101分 監督であるジャン・ヴィゴは「アタラント号」撮影終了後容態が悪化し、編集を別の人間に委ね、その編集フイルムの細かい手直しを自ら行い完成させるつもりだったが、それを完成させることなく、29歳の若さでこの世を去った。 「新学期・操行ゼロ」と本作「アタラント号」という偉大なる(と私は思う)作品を二つ遺して……。 前作の「新学期・操行ゼロ」が上映禁止処分となったことから、映画会社はそのフィルムの改変と大幅なカットを命じ、タイトルも「流れゆく艀」と変え、メロディも当時の流行曲に変えて公開したそうだが、興行的には失敗に終わりそのフィルムは忘れ去られる存在となってしまった。そのためオリジナルバージョンは長らく幻の名作といわれていたが、1990年カンヌ国際映画祭で復元・上映された。 この本篇の前に、ヴィゴのために、われわれのために、改変したその製作会社によってオリジナルに近い形で復元された経緯が語られているのには胸が熱くなる! ジャン・ヴィゴの遺作であり、彼の唯一の長編映画。 この作品が後世に多くの刺戟と影響を与えたであろうことは容易に推測できるだろう(と、私は勝手に思っている。このポスターってキャメロン監督の「タイタニック」と思いません? 他にも映像見ていると、この映画の影響を受けてるなって思う映画ってあるはず) ![]() Allcinemaの映画解説に 「話は俗なものだが、詩的で自由奔放な表現、キャラクターが際立つ肉体性の把握、溢れるユーモア……映画の官能が蒸気となって観客を包み込んでしまう、これは聖なる映画と言えるかも知れない。何度観てもはぐらかされ、不安なときめきを覚える。幼い子供と遊ぶのに似た、つき詰めようのない快楽を帯びた映画。」 と評されている。 聖なる映画 そうかも知れない。全くもってそう思う。 ル・アヴールとその上流の田舎町を往復する艀アタラント号。 その船で暮らすのは若き船長ジャンと新妻ジュリエット、老水夫のジュール爺さん、雑用係の少年。 結婚式を終えたばかりのジャンと花嫁姿のジュリエットが教会から出てくるシーンから始まる。 幸福そうな二人の後ろを少し離れて親戚縁者がぞろぞろと付き随う。母親は娘が村を出て行くのでこの結婚をしきりに嘆き、野辺送りのような一行。 二人を先頭にしたそんな一行は村の道を歩き、村をつき抜け、艀が停泊している海に出る。 艀に飛び乗り服を着替える夫と、岸辺にぽつんと残された妻。 ここから始まるジャンとジュリエットの愛にまつわる物語。 愛しあう男と女。 根っからの船乗りの夫とパリの華やかさに憧れる妻。 愛し合っているけれど、男と女の重なり合わない不一致、そこから生み出される不安や揺らぎ、嫉妬、我が儘そして愛することの限りない歓び…ジャン・ヴィゴは海に浮かぶ艀の狭い空間を舞台に描き出している。 そして彼等を取り巻く人々。 過去の思い出を部屋一杯に詰め込んだガラクタ市のような部屋で暮らす破天荒な老水夫ジュール爺さん。 あたかもジュール爺さんが魔法のタクトを持っているかのように、彼の導きで若い二人は再び愛のメロディに包まれる… 新妻を都会の華やかさで誘惑するパリの行商人。 彼が登場するシーンは、まるでミュージカル。 死期の迫った人間が撮ったとは思えないほど、生きる歓び、愛する歓び、人と人と触れ合いの愛しさに満ち溢れている。ジャン・ヴィゴの溢れんばかりの情熱で、彼らの人生が生き生きと描かれている。 この作品で描かれている映像の一つ一つの素晴らしさをどう表現したらいいんだろう。 言葉でうまく表現できないこのもどかしさは、つまるところ、それは「映画」でしか語りえない世界の素晴らしさということになるのだろう。 アキ・カウリスマキがこの作品を、彼のベスト10の一つに上げているのも大いに肯ける。 ![]() ジャン・ヴィゴのシュールな世界 ジャン・ヴィゴの自由な発想は、「新学期・操行ゼロ」よりもさらに、さらにその翼を大きく広げ、ジャンとジュリエットの愛にまつわる物語「アタラント号」の映像の隅々にまで、彼のシュールな感性が散りばめられ、ワクワクするような躍動感を覚え、息苦しいほどの幸福感に包まれる。 そして陽光の煌く海原を進む「アタランド号」のラストシーンは、さらに幸福な余韻に満ちている。 映画が物語る世界とは、これほど自由に、限りない可能性に満ち溢れ、なんと素晴らしい世界だろう! ジャン・ヴィゴの映画に対する愛と魂が感じられる傑作といっても過言ではないと思う。 偉大さゆえに、その時代の枠を大きく超えていたがゆえに不遇だった彼の生涯。 この素晴らしい傑作を、改変した製作会社が、当時の記録係や撮影監督たちから話を聞きながら、オリジナルに近い形の復元に精魂傾けて取り組み、不遇の生涯を終えたヴィゴの遺したこの偉大なる遺産を、今、観る事ができる歓びは何ものにも代えがたい。 ヴィゴのために、われわれのために…… この言葉に尽きるだろう。 監督: ジャン・ヴィゴ 製作: ジャック=ルイ・ヌネーズ 脚本: ジャン・ジェミール 撮影: ボリス・カウフマン 音楽: モーリス・ジョーベール 出演: ディタ・パルロ/ジャン・ダステ/ミシェル・シモン/ルイ・ルフェーブル
by mchouette
| 2008-07-22 00:00
| ■映画
| |||||||||
ファン申請 |
||