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EASTERN PROMISES
2007年/イギリス・カナダ・アメリカ/100分/ R-18 at:シネリーブル梅田 「イースタン・プロミス」とは、「英国における東欧組織による人身売買契約」を指す言葉だそうだ。 1年前くらい前にニューズウィーク誌で、ソ連邦解体後の東欧諸国の貧困と人身売買に関する記事を読んだことがある。ヨーロッパの先進諸国で売春目的の人身売買が一大産業にまで成長しているということ。そしてイギリスがその中で第一位だということ。そして故郷に戻っても彼女たちは社会に受け入れてもらえないということも……。 そんな報道記事を裏付けるような本作。 ![]() そんな貧困や人身売買をテーマにした映画もいくつか観てきた。 旧ソ連邦の構成国の一つであり、スターリンの出身地でもあるグルジア。ソ連邦解体によりグルジア共和国として独立したもの経済はすでに破綻していた。そんなグルジアから一家でフランスへ移住してきた一人の青年が、偶然手に入れた一通の封筒から、生き抜けば大金、さもなくば死かという生死を賭けた「13人で行うロシアン・ルーレット」に自らを賭けてしまうという一人のグルジア出身の青年を描いた「13/ザメッティ」(2005)。監督はグルジア出身のゲラ・バブルアニ。それほどの貧困にあえぐ旧ソ連邦の国。 またイングマール・ベルイマンをして「若き巨匠」と言わしたスウェーデン生まれルーカス・ムーディソン監督の描いた「リリア 4-ever」 (2002/未公開)も、旧ソ連とスウェーデンを舞台にした、ヒューマン・トラフィッキング(人身売買)をテーマにした16歳のリリアについての物語。ソ連崩壊後、急激な自由化の波で失業者が増大し、経済的に取り残された厳しい現実のなかで、母親は再婚相手と一足先にロシアを出国し音信不通に。リリアは知り合った青年と結婚の約束をし極貧から抜け出そうとするが、その青年によってスウェーデンに売り渡される。 トルナトーレ監督「題名のない子守唄」 (2006)でも扱われていたテーマだ。 映画資料を読んでいると、ヴィゴ・モーテンセンとヴァンサン・カッセルが宿泊していたホテルは、2006年11月23日、イギリスに亡命中の元FSB(ロシア連邦保安庁)中佐アレクサンドル≪サーシャ≫・リトビネンコが何者かに放射性物質ポロニウム210を呑まされた現場と程近いという。 ロシアからの移民がロンドンには多く住んでいるということ。そんな移民たちがロンドンの裏社会にはびこる「法の泥棒」と呼ばれるロシアン・マフィア。 のっけから理髪店でロシア人が喉をギーギーと掻っ切られるシーンだの、そのロシア人をニコライが指を切り落とすシーンだの、サウナで全裸のニコライがみせる修正なしの格闘シーンだの、クローネンバーグならではのリアルで刺激的な映像表現に、前作「ヒストリー・オブ・バイオレンス」以上に映像に惹きつけられ、前作よりもさらにビームを絞って、ハワード・ショワの音楽がさらにその映像を盛り上げ、これは前作を凌ぐ作品ではないかしらと観ていたけれど……。 ウラル山脈の山岳地帯―シベリア平原の端、モスクワの東に位置する地域―を越えてロンドンにやって来たニコライの全身に刻み込まれた刺青は、彼もまた極貧のロシアの地を這いずり回った過去を物語っている。 極貧のロシアの地から希望を夢みてロンドンにやってきた14歳の少女が味わった地獄。 レイプされ命を引き換えに産み落とされた赤ん坊。 ロシア人を父にもつ助産士 暴力組織「法の泥棒」のボスがふと見せるロシアへの郷愁。 想像以上にグロテスクでおぞましいというイースタン・プロミスの実態。 前作で人間の中に潜む暴力とその連鎖を描いたクローネンバーグ。 「イースタン・プロミス」は、人間の際限のない欲望と結びついた暴力を描いた作品だろう。いくつかのモティーフが散りばめられているけれど、しかしこううした暴力を生み出した社会にまで届くことなく、観終われば、はて何を描きたかったのだろうと思ってしまった。 インタビューでクローネンバーグ監督は「家族や文化の衝突を描いた」と語っているけれど…。 しかし、俳優陣は素晴らしかった。 ニコライを演じアカデミー主演男優賞にノミネートされたヴィゴ・モーテンセンは、今回で更に女性ファンを増やしたのではないかしらと思うし、助産師アンナを演じたナオミ・ワッツは普通っぽいけど、その普通さにキラリと光るものがあって好印象。ロシア製のごっついバイクにまたがって走り去る姿もなかなかいかしていて、彼女の新しい魅力を発見といったところあり。 恐らくみんなの注目はヴィゴみたいだけれど、私の注目は犯罪組織のボスの息子キリルを演じたヴァンサン・カッセル。野蛮と情緒不安、快活で無鉄砲、残忍さと優しさを共存させたキリルという複雑で繊細な役を演じていてさすがでした。 この映画は映像と俳優達の魅力を大いに楽しませてもらったけれど、クローネンバーグ監督独自の視点でイースタン・プロミスに切り込んで欲しかったなと思う。 監督: デヴィッド・クローネンバーグ 製作: ポール・ウェブスター/ロバート・ラントス 製作総指揮: スティーヴン・ギャレット/デヴィッド・M・トンプソン/ジェフ・アッバリー/ジュリア・ブラックマン 脚本: スティーヴ・ナイト 撮影: ピーター・サシツキー プロダクションデザイン: キャロル・スピア 衣装デザイン: デニース・クローネンバーグ 編集: ロナルド・サンダース 音楽: ハワード・ショア 出演: ヴィゴ・モーテンセン/ナオミ・ワッツ/ヴァンサン・カッセル/アーミン・ミューラー=スタール/イエジー・スコリモフスキー/シニード・キューザック/ミナ・E・ミナ/サラ=ジャンヌ・ラブロッセ/ドナルド・サンプター/ジョセフ・アルティン/ラザ・ジャフリー/オレガル・フェドロ
by mchouette
| 2008-06-26 00:00
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