by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
AWAY FROM HER
2006年/カナダ/110分 at:テアトル梅田 テリー・ギリアム監督「バロン」(1989)で子役ながら堂々の存在感を見せ、死ぬまでにしたい10のこと」(2003)や「あなたになら言える秘密のこと」(2005)の感動の記憶もまだまだ新鮮に残っている女優サラ・ポーリーの初監督作品という興味もあり、また予告編のジュリー・クリスティやゴードン・ビンセントの、自らの人生を振り返る年齢にある彼らだからこそ滲み出る大人の味わいにも大いに惹かれ、「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」を観てきた。 観終わった後、友人の携帯に送った「微妙に複雑…」という私の言葉。 それから微妙で複雑な思いを抱えたまま、なかなか言葉にまとまらず、というか自分の中でうまく気持ちとか考えが整理できないまま、でもいつも頭の片隅にこびりついていて……随分と日数が経ってしまった。 フィオーナの思いは本当のところはどうなんだろう? これでやっぱり良かったんだろうか? フィオーナはやっぱり夫であるグラントを、かつて若かった頃、教え子たちに次々と手をつけていく彼に対する憎みやジェラシーを記憶の底に沈ませながら、やはり彼を強く愛していたんだろうな、って思う。 認知症を自覚したフィオーナが辿りついた途は、やっぱりグラントを愛していたからこその、44年間という夫婦であった二人の歴史を自らの手でどう閉じるのかという選択なんだろうなって思うと、これは我が身に手繰り寄せてみると心臓の奥にナイフの刃先を突きつけられた思いに、やっぱりとっても現実味を帯びてうろたえてしまう。 若い教え子達との修羅場の末に、夫婦でやり直すために移り住んだカナダの大自然の懐に抱た生活。そんな過去もはるか遠くへと過ぎ去り、退職後の余生を穏やかで愛に包まれた二人の時間を育んでいたのだけれど……。 そんな今の幸福な時間がページを一枚一枚破り捨てるようにフィオーナの記憶から剥がれていき、その次のページに現われるのは捨て去ったはずの愛憎に悶えていたころの夜叉の顔だとしたら……。 「忘れてしまった方が幸せだと思うものもあるわ。」 黄色の花の色の記憶を忘れても、花びらを包み込むと花の温もりを感じるわと話すフィオーナ。散歩の途中でフィオーナがグラントにさり気なく語った言葉の奥でフィオーナがかみ締めた思い。 施設に入所した日、フィオーナが求めたグラントとの愛の営み。 グラントの愛の最後の温もり。 「俺たちは夫婦なんだ」 一ヵ月後、施設に面会に行ったグラントを前に、見知らぬ他人を見るかのようなフィオーナに戸惑うグラント。 フィオーナとグラント、そしてマリアンとオーブリー 猶予もなく突きつけられた問いと直面した現実に、それぞれがギリギリのところで出した選択。 フィオーナが自らの手で二人の時間の扉を閉めて鍵をかけ、そんなフィオーナに背中を押されるように、新しい人生につま先を向けて片足を上げてはみたものの、ぶらぶらさせたまんまのグラントみたいに、頭ではわかっているけれど、胸の中では「これでいいの? いいの?」ってわめきながら走り回っている私がいる。 グラントとて、マリアンに「あなたが決めるのよ。さぁ決意して!」と又もや背中を押されて上げた足を地面に下ろしたわけだけれど。 フィオーナといい、マリアンといい、そしてふと思い出すのが「ドア・イン・ザ・フロア」でキム・ベインシガーが演じたマリアン。男は手の中にある今にしがみつこうとし、女はそれを噛み締めて捨て去る潔さをDNAに持っているのだろうか。こんな潔い彼女たちとは程遠いところで、いまだにこの映画の感想をこんな堂々巡りの言葉をこねて書いている私。 いつかフィオーナのように、あるいはグラントのように、こんな風に突きつけられる時が早晩、私にも来るかも知れない。 そんな時、この映画で描かれたこんな愛の選び方が、一つの力を与えてくれるのかも知れないなって思う。どこかで原作を読もうと思う。 サラ・ポーリー27歳。監督デビュー作。 次作はどんな作品を引っさげて私たちの前に現われるんだろう。 監督: サラ・ポーリー 製作: ジェニファー・ワイス/シモーン・アードル/ダニエル・アイロン 製作総指揮: アトム・エゴヤン 原作: アリス・マンロー 『クマが山を越えてきた』(新潮社刊『イラクサ』所収) 脚本: サラ・ポーリー 撮影: リュック・モンテペリエ プロダクションデザイン: キャスリーン・クリミー 衣装デザイン: デブラ・ハンソン 編集: デヴィッド・ワーンズビー 音楽: ジョナサン・ゴールドスミス 出演: ジュリー・クリスティ/ゴードン・ピンセント/オリンピア・デュカキス/マイケル・マーフィ/クリステン・トムソン/ウェンディ・クルーソン/アルバータ・ワトソン
by mchouette
| 2008-06-21 00:00
| ■映画
|
ファン申請 |
||