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Chacun Son Cinéma/To Each His Own Cinema
2007年/フランスほか/120分 日本配給:オフィス北野 カンヌ国際映画祭のとっても粋な計らい。 2007年5月で60回目となるカンヌ国際映画祭を記念するプロジェクトとして、国籍もキャリアも全く異なる30名を越える監督たちが、3分間という制限時間の中でそれぞれ「映画館」をテーマに独自の視点で描いたオムニバス作品集。日本からは北野武監督が参加し、2007年カンヌ映画祭で上映された映画。「フェデリコ・フェリーニに捧げる」という献辞があった。 …日本では東京地区のみフィルム・フェスティバルのオープニングで上映されたようだ。すでにDVDも発売されている。 今回、シネフィルで放映され早速に鑑賞。2007年カンヌ映画祭での上映ラインナップにはなかったデヴィッド・リンチ監督の1篇も加えての今回の放映だが、残念なのは、ジョエル&イーサン・コーエンの作品は権利上放送できないために、今回放映のラインナップには入っていないこと。 以前、巨匠といわれている映画監督たちが撮ったCMフィルム集を観たことがあり、それぞれカラーというか個性がうかがえて面白かった。フェリーニはいかにもフェリーニだし、ゴダールはジーンズのCMだったと思うけれど全く製品と関係なく哲学めいていて、それでいてなぜかとっても印象に残っているのもゴダールらしいなって思ったり……。 監督名はエンディングで分かる作品が多いけれど、映像観ていると、これはきっとホウ・シャオシェンだわ、テオ・アンゲロプロスっぽいなって思うと<ピンポン!>で、それぞれに監督の個性とか作風が色濃く出ている。 現在活躍している監督達って、皆シネフィル。若い頃は浴びるほど映画を観た映画狂でもある。そして映画館のこの暗さに彼らの青春の秘密の思い出とか、好きな作品とかなんかもあって、そんな懐かしさや思い入れなども感じられるし、それぞれのお国事情なども垣間見れる。 3分間に凝縮された「それぞれのシネマ」。 それぞれの腕の見せどころだろう。 嬉しくって美味しい企画だ。 インタビューで北野たけしが「3分も2時間も同じだけ労力が要った」って語っていたけど、そのとおりだろうなって思う。 イニャリトゥ監督は「3分という限界に挑戦する」って決意表明みたいに語っていて、それを聞いた他の監督のちょっと空白(白け言えばストレートすぎるので空白と…)の間がなんとも面白い。理屈や観念が先走っている感のこの頃のイニャリトゥって思う。 <ネタバレあり> デヴィッド・リンチは「インランド・エンパイア」の続きみたいな映像でハサミ突き立ててリンチ流に大いに楽しませくれたし、アトム・エゴヤンの「アルトー(2本立て)」はなんだろうと思ったら、二人の女性がそれぞれ別々の映画を見ていて、上映中に互いにメールで映画についてお喋りするわ、写メールで映像を撮るわ、横に座った男が不埒な行為に走るわ……映画は「女と男の居る舗道」と「裁かるるジャンヌ」 エゴヤン監督は「対象物を画面いっぱいに撮影するクロースアップほど映画的なものはない。巨大なスクリーンに映った人間の顔を注視するということは、神秘的であり、人を酔わせるものだ。私たちはこの体験のために映画館を必要としてきた。物理的な動作としてのクロースアップはいまや容易に侵害されがちで、この短編映画はこれらの冒涜に対する熟考のつもりだ」と語ってられるが、映像がスクリーンにいっぱいに映されるのは嬉しいし、映画の中で映画があって面白い構造。 他の作家たちの作品でも過去の作品のオマージュとして、映画のワンシーンなどが挿入されているのも多く見ていて楽しくなる。監督への献辞があるのもホロリとさせられる。 アッバス・キアロスタミの「ロミオはどこ?」では映像は映らないけれど、1968年のオリヴィア・ハッセーとレナード・ホワイティング主演の「ロミオとジュリエット」あの懐かしいテーマ曲と共に台詞が流れ、それを観ている女性たちの涙涙の反応を映しているという内容だが、当時キアロスタミも青春時代。オリヴィアのあのストレートな黒髪の美少女に憧れた一人ではなかったかしら、などと思ってニヤリとしてしまう。 監督自身も出演している作品も多く、自身の作品には必ず出たがるナンニ・モレッティは劇場の椅子に座って滔滔と喋くりまくっていたし、北野たけしがトラブルばかり起こし上映が中断する映写技師で出ている。 傑作なのがクローネンバーグで「最後の映画館における最後のユダヤ人の自殺」というなんとも挑発的なタイトルで、拳銃自殺を図ろうとコメカミに銃口をあてたり、眼にあてたり、口に突っ込んだりするも、どうしても引き金を引けず苦悶する最後の一人のユダヤ人役で出ていて、この作品なんかも好きだわ。 チェン・カイコーの「チュウシン村」などは1977年の中国のある村で子供達が電気が切れたために自転車を漕いで自家発電で映写機を廻し、スクリーンのチャップリンの映像に笑い転げながら、必死に自転車漕いで……といったそんな映像はちょっと郷愁を誘う。大人が来て子供たちは一目散に逃げるが一人の少年だけがスクリーンの前で座ったままでいる。そして30年後の2007年。一人の盲目の男性が盲人用の白い杖をついて劇場の椅子に座り、感慨深くスクリーンを見つめる。あの時の少年だ。しみじみとさせる、中国映画らしい、いい作品だなって思った。 それからウォン・カーウァイ「君のために9千キロ旅してきた」 タイトルから「マイ・ブルーベリー・ナイツ」の続きかなって思ったけど、この乾いたしっとりとしたエロティックは、これがカーウァイのテイストだよな!って嬉しくなってしまう映像ににんまりするる。 ロマン・ポランスキーの「エロティックな映画」などは、最後は思わず笑ってしまい、ポランスキーってこんなユーモアのある人なんだって意外な発見したり、ヴィム・ヴェンダースなどはここでも真摯に世界と向き合っているし、マイケル・チミノは思いっきり弾けているし、 カンピオンはとってもユニークで好きだわ。オリヴィエラ監督はご自分の時間で撮ってられるし、お手を差し伸べたくなる。でもこのお年で凄いなって思う。 長編作品では見れない監督達の素顔なども映像通して見れるんではないかしら。 ケン・ローチの「ハッピー・エンド」も面白い。映画館のチケット売り場に並んだ父と息子。どれを観るかグダグダと息子は決めかねていて、先に買わせろだの、早く決めろだの、静かにしてよだの、ちょっと列でトラブルもあり、チケット売り場でもまだ悩んでいる。突然、息子が「サッカー見ない?」って言い出し、父親も二つ返事でOK!劇場を後に、二人して意気揚々とサッカー会場に向うという、お騒がせな親子。イギリスらしい。ヒトラー関連の映画で「ヒトラー知らないよ」なんて台詞も挿入させ、世相をチクリと突いている。 書き出したらキリがない。 3分間といえども結構長く、それぞれ監督の個性や主張、それから映画への愛がぎゅっと詰まった、まさに珠玉のオムニバス作品。 参加監督・タイトル・国籍<代表作品>は以下↓(シネフィルより) ■レイモン・ドゥパルドン「夏の映画館」フランス <アフリカ、痛みはいかがですか?> ■北野武「素晴らしき休日」日本 <監督・ばんざい!/ソナチネ/HANA-BI> ■テオ・アンゲロプロス「3分間」ギリシャ <旅芸人の記録/エレニの旅> ■アンドレイ・コンチャロフスキー「暗闇の中で」ロシア <暴走機関車> ■ナンニ・モレッティ「映画ファンの日記」イタリア <息子の部屋> ■ホウ・シャオシェン「電姫戯院」台湾 <悲情城市/百年恋歌> ■ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ「暗闇」ベルギー <ロゼッタ/ある子供> ■デヴィッド・リンチ「アブサーダ」アメリカ <ワイルド・アット・ハート/インランド・エンパイア> ■アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ「アナ」メキシコ <バベル/21グラム/アモーレス・ペロス> ■チャン・イーモウ「映画をみる」中国 <HERO/LOVERS> ■アモス・ギタイ「ハイファの悪霊(ディブク)」イスラエル <キプールの記憶/フリー・ゾーン~明日が見える場所~> ■ジェーン・カンピオン「レディ・バグ」ニュージーランド <ピアノ・レッスン/イン・ザ・カット> ■アトム・エゴヤン「アルトー(2本立て)」カナダ <スウィート ヒアアフター/フェリシアの旅> ■アキ・カウリスマキ「鋳造所」フィンランド <白い花びら/レニングラード・カウボイズ・ゴー・アメリカ> ■オリヴィエ・アサヤス「再燃」フランス <イルマ・ヴェップ> ■ユーセフ・シャヒーン「47年後」エジプト <アレキサンドリアWHY?> ■ツァイ・ミンリャン「これは夢」台湾<西瓜/Hole> ■ラース・フォン・トリアー「職業」デンマーク <ダンサー・イン・ザ・ダーク/ドッグヴィル> ■ラウル・ルイス 「贈り物」チリ <クリムト/見出された時> ■クロード・ルルーシュ「街角の映画館」フランス <男と女/愛と哀しみのボレロ> ■ガス・ヴァン・サント「ファースト・キス」アメリカ <エレファント/グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち> ■ロマン・ポランスキー「エロチックな映画」ポーランド <戦場のピアニスト/オリバー・ツイスト/チャイナ・タウン> ■マイケル・チミノ「翻訳不要」アメリカ<ディア・ハンター> ■デヴィッド・クローネンバーグ 「最後の映画館における最後のユダヤ人の自殺」カナダ <クラッシュ/裸のランチ> ■ウォン・カーウァイ「君のために9千キロ旅してきた」中国 <ブエノスアイレス/恋する惑星/2046> ■アッバス・キアロスタミ「ロミオはどこ?」イラン <風が吹くまま/桜桃の味> ■ビレ・アウグスト「最後のデート・ショウ」デンマーク <レ・ミゼラブル/愛と精霊の家> ■エリア・スレイマン「臆病」イスラエル<D.I.> ■マノエル・デ・オリヴェイラ「唯一の出会い」ポルトガル <クレーヴの奥方/アブラハム渓谷> ■ウォルター・サレス「カンヌから5575マイル」ブラジル <モーターサイクル・ダイアリーズ/ダーク・ウォーター> ■ヴィム・ヴェンダース「平和の中の戦争」ドイツ <パリ、テキサス/ベルリン・天使詩> ■チェン・カイコー「チュウシン村」中国 <さらば、わが愛 覇王別姫/PROMISE> ■ケン・ローチ「ハッピーエンド」イギリス <麦の穂をゆらす風/マイ・ネーム・イズ・ョー>
by mchouette
| 2008-05-19 00:00
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