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LE BEAU SERGE
1957年/フランス/99分 これを目当てにDVDを観たわけではなくって、ジャック・リヴェット監督の未公開作品「王手飛車取り」を観ようと思ったら、本作も一緒に収録されていた。 ともにヌーヴェルヴァーグ作品の長編・短編第一号と言われている作品。 この作品の感想を書くに当たって前置きが随分と長くなったので、<「美しきセルジュ」の感想を書く前に…>というタイトルで前置きを別に分けることにした。 そこでも触れたけれど、 スターが出演していなくても、自分たちが撮りたいと思うテーマで自分たちが製作した作品に、反応する観客たちがいるということ。興業的に成功を収めたこの「美しいセルジュ」が、ヌーヴェルヴァーグ作品のデビュー作となるだろう。 そして28歳のクロード・シャブロルにとっても、本作が監督デビュー作でもある。 大抵のヌーヴェルヴァーグ作品って、彼らが住んでいるパリを舞台に、たとえ扱っているテーマは重くとも、陽光を感じさせ、束縛されない自由な空気が映像から感じ取れるけれど、本作の舞台はフランス中部の山間部の村クルーズ県サルダン。12月に撮影され、吹雪が舞い、閉鎖的で陰鬱な世界が本作の舞台。 一言で言えば暗い映画。 気療養のためパリから生まれ故郷であるサルダンに戻ってきた青年フランソワの視線を通して、かつて仲間の中で一番凄い奴で輝いていた親友のセルジュの変貌した姿と、そんな彼をなんとか救おうとするフランソワを描いている。 大学に受かりこの村を出るはずだったセルジュの人生は、恋人だったイヴォンヌが妊娠したことで、彼はこの小さな、何の希望も見出せないこの村に閉じ込められてしまった。結婚したものの子供は先天的異常で死産。更にイヴォンヌは2人目の子供を宿している。未来へ向う扉が閉ざされ、現実の柵に囚われた自暴自棄の中で酒に溺れていったセルジュ。 「俺が欲しいのは祈りじゃないんだ。勇気なんだ!」 セルジュの雪に閉ざされた重苦しい閉塞感の漂う空間に縛られ、飛びたいともがきながら、飛べないまま、いつしか飛ぶ勇気も情熱も、この雪に閉ざされた空間に埋もれてしまった。 これもこの時代の一つの青春像だろう。 セルジュの内面が、冬の吹雪いた村の光景と重なり、冷たさと痛みを伴って描かれている。 当初は2時間半ほどの時間だったそうだが、長尺もので有名なリヴェットからも「長すぎる」と指摘され1時間半に編集し直し、ちょっとセルジュと妻、妻の家庭との関係などが分かりづらいところもあるけれど、セルジュとフランソワが、それぞれの内面の色彩が、物語の進行とともに、徐々にその濃さを増していくにつれ、次第に彼らの時間に寄り添って観ている私がいる。 この感覚は、テイストは違うけれど、ロメール、リヴェット、トリュフォー、ゴダールなど通じる感覚がある。 「輝かしく、そして瑞々しい夏の雰囲気がヌーヴェルヴァーグの特徴だとしたら、クロード・シャブロルは冬のヌーヴェルヴァーグ」 蓮實重彦氏は「曖昧こそおのれの美徳だというかのように、クロード・シャブロルは振舞い続ける。」と、シャブロルとその作品について評している。 人間の内面の寒々としたものにシャブロルは視線を注ぎ、明確な意識として浮上することなく心の底で淀んでいるもの、あるいはイエスでありノーでもあるという不確かなもの、言葉にならない些細な心情とか内面の葛藤。 シャブロル監督の描こうとする視線が捉えるのは、人間のそんな部分なのだろう。 本作でも、サルダンの村の寒々とした冬の中で深く沈んでいったセルジュの内面を、フランソワという人物を対峙させることで、彼の言葉にならない鬱屈したものを浮かび上がらせ、繊細に描いている。 クロード・シャブロル監督については、あえて意識してみたことはなかった。 最近作では「石の微笑」、「いとこ同士」「ふくろうの叫び」「主婦マリーがしたこと」などなど。単発的にしか観ていなかったから、どういう作風なのかあまりよくわかっていないところがあったけれど、初監督品である本作を観て、以降の作品を思い浮かべ、「曖昧」というキーワードを当てはめると、あぁこういうテイストなんだってちょっと分かった気がする。 最近みた「石の微笑」のフィリップやセンタの心情など明確に描かれていない。言葉ではっきりと示しえない内面の奥深くで震え求めるもの。そんな二人を曖昧さをそのままに描きながら、そっとベッドに寄り添ったラストの二人の姿に、観客はそんな彼らを優しく見つめるまでに、いつしか彼らに寄り添っている。 シャブロル監督作品って、みていてちょっと乗り切れないしんどさを感じる作品もあるけれど、デビュー作品である「美しきセルジュ」は、技術的な未熟さが、見ているほうには荒削りの魅力ともなって瑞々しさを感じる。 監督: クロード・シャブロル 製作: ジャン・コティ 脚本: クロード・シャブロル/ジャン・コティ 撮影: アンリ・ドカエ 出演: ジェラール・ブラン ジャン=クロード・ブリアリ ベルナデット・ラフォン クロード・セルヴァル
by mchouette
| 2008-05-06 00:01
| ■映画
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