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フランスのジャン=ルー・ユベール監督作品を2つ。
数年前に友人からしつこく勧められて観たのが「フランスの思い出」。友人はかつてフランスにホームスティする際に、本作でフランス語を覚えたとか。当時はビデオしかなくって、巻き戻しては発音を練習したそうだ。一度観てすっかりお気に入りになった作品で、何度も見返したい作品。もう一つの「フランスの友だち」は今回始めてみたけれど、シリーズで観たい作品。どちらもリシャール・ポーランジェと、監督の実の息子であるアントワーヌ・ユベール君のコンビが素敵だ。 「フランスの思い出」 LE GRAND CHEMIN 1987年/107分 ![]() 1950年代のフランスの片田舎が舞台。監督自身の子供の頃の体験を元に描かれた作品で、お母さんが出産するため、お母さんの友人が住む田舎で過ごすことになったパリに住む9歳の少年ルイの、田舎での一夏の体験を綴ったもの。 ルイ役には監督の息子アントワーヌ・ユベール君がなっている。1977年生まれとあるから、ルイとほぼ同年齢。都会育ちのルイのひ弱さと無邪気な素直さ、ルイの友だちとなる隣に住む年上の女の子マルティーヌのおませぶりやお転婆ぶり、どちらも伸びやかな子供らしさに溢れていて、瑞々しいとはこんな作品!と思える楽しさがあり、それでいて大人たちの悲しみにも触れ、切なくもある素敵な作品。 友人も久しぶりに見て、最後は大泣きしたって。でも途中はマルティーヌの耳年増なおしゃまぶりについ笑ってしまったり、マルティーヌに背中を押されて、もやしっ子のルイが田舎の伸びやかさの中で鍛えられていく様も楽しい。 お腹の大きいお母さんと二人、パリから田舎のバス停で降りたルイが、「行くのが嫌だ」って泣きべそかきながら駄々をこねている。まだほんのネンネの少年が、マルセル小母さんの家でまず目にしたのが兎の皮剥シーン。当然、その夜の兎料理は食べられない。小母さんは優しくしてくれるけど、小父さんは「兎とガキは甘やかさん」と凄む。寝室は亡くなったお婆さんの部屋。トイレは外なので、夜中は洗面器で用を足す。小母さんは楽しい絵でしょ、という洗面器に描かれている絵はギロリとした目が一つ。外では風の音や鳥の鳴き声が聞えて怖くて寝れない。壁を向けば、小母さんの肖像写真が大きな眼をむいてこっちを見ているし……。 昼間はマルティーヌがいろんなことを教えてくれる。小屋の上からマルティーヌのお姉さんと恋人の逢引の現場を覗き見したり、林檎をもいで食べたり、教会の屋根を歩いて樋におしっこをしたり…。マルティーヌはいつも裸足で、座るときの足を大きく広げてパンツが丸見え。道で神父様にお説教されたマルティーヌは通り過ぎた神父様にあかんべいをして思いっきりワンピースの捲り上げてパンツを見せたりするシーンなど、教育委員会がみたら眉をひそめるような、でも子供本来の仕草が随所に描かれていて、ジャン=ルー・ユベール監督って良く知らないけれど、子供の感性をそのまま持って本作を描いている。 怖いと思ったペロ小父さんとも立小便をしたり、釣りに行ったり…… でも小父さんと小母さんは仲が悪くって、顔を合わすといがみ合っていて、小父さんは晩になると酒場に飲みにいき酔いつぶれて帰ってくる。 母親と姉と3人暮らしで父親が蒸発したマルティーヌのおかげで、マルティーヌも子供だから耳からの知識だけだけど、ルイが今まで知らなかった大人の世界に触れる。そして小母さんと小父さんの哀しみの部分に触れ、小母さんを気遣う優しさもルイに生まれ……。ずっと家にいないパパのこと。大人の嘘も……。真剣に向き合う小父さんの心に触れ…。 ルイに弟が生まれパリに戻る日、ちょっぴり大人になったルイがバス停にいた。 教会にも行かず友達のいなかったマルティーヌにはルイはたった一人の友だち。死産の悲しみから立ち直れなかったマルセル夫婦にとって、ルイは一夏だけのかけがえのない子供。 少年の目を通して描かれた田舎での一夏の体験。 明るい太陽の下で描き出される田舎の風景も素朴な美しさに溢れ、人の大らかさに溢れ、そしてマルセルとペロ夫婦が、もう一度、二人の愛を取り戻すラストのシーンでは何度観ても、この作業場の二人のシーンには涙が溢れてしまう。 本作でマルセル夫婦を演じたリシャール・ボーランジェとアネモーネは、ともに1987年度セザール賞主演男優賞・主演女優賞を受賞している。素晴らしい演技でした。特にリシャール・ボーランジェの遠くを見つめる時の哀しみの混じった眼差、少年を見つめる時の愛しさのこもった眼差し、潰れたしわがれた声からは素朴さがにじみ出ていて素晴らしかった。 作品は、1987年ドイツ児童映画祭作品賞 監督:ジャン=ルー・ユベール 脚本:ジャン=ルー・ユベール 撮影:クロード・ルコント 音楽:ジョルジュ・グラニエ 出演:アネモーネ/ リシャール・ボーランジェ/アントワーヌ・ユベール/ヴァネッサ・グジ 「フランスの友だち」 APRES LA GUERRE 1989年/108分 ![]() 1944年第二次大戦終結を目前にしたフランスの片田舎を、舞台にした二人のフランス少年と、ドイツの脱走兵との間ではぐくまれた友情と悲劇を描いた作品。 監督が、自分の二人の子供を主演させ、「戦争が再び起こってはならないことを、分かりやすく教えるため」の息子たちへのプレゼントとして製作した作品とのこと。ドイツの脱走兵に、ユベール監督の前作「フランスの思い出」でセザール賞主演男優賞を受賞したリシャール・ボーランジェ。 リシャール・ボーランジェにもアントワーヌより4歳年上の娘で女優のロマーヌ・ボーランジェがいる。監督と役者というよりも、互いに父親として、子供たちに戦争を伝えたいという思いがあったのだろう。リシャールって人は、どの作品も同じような雰囲気をみせているように見えて、その実、作品の雰囲気を見事に伝えている、本作でもいい味出している。 本作はCS放映で初めて観た作品で、兄の方が「フランスの思い出」でベソをかいていたひ弱そうなルイ少年を演じたアントワーヌ・ユベール君。ちょっと懐かしいし、「フランスの思い出」では10歳だったアントワーヌ君も、本作では12歳。面影はあるけれど、今度はお兄ちゃん役で、顔も引き締まって、子供から少年の顔つきになっていた。弟はジュリアン君。 ![]() ![]() 上の方が「フランスの思い出」の10歳のアントワーヌ君。そして下が「フランスの友だち」の12歳のアントワーヌ君 女の子みたいな顔のアントワーヌに比べて、ジュリアンは男の子!って言う顔をしている。本作ではアントワーヌはお兄ちゃんで威張ってるけれど、ジュリアンの姿が見えないと泣きべそかきながら、「ジュリアン!ジュリアン!」って呼ぶシーンが2回ほど。案外と普段のアントワーヌ君もこんな風かもしれない。 本作の二人の演技は、とても自然で子供らしいし、棒を振り回してはしゃぐ姿や、彼らの笑い声や笑顔など、普段の彼らもこんなだろうと思えるようなの雰囲気が観ていて気持ちがいい。 彼らは、もう30歳くらいの青年になっているはずだけど、今はどうしているんでしょう。彼らの自然な子供らしい演技を見ていて、大きくなった彼らも見たいなって思えてくる。 物語、第二次世界大戦終結間近のフランスの小さな村で、上陸したアメリカ軍の歓迎セレモニーの準備をしている真っ最中。アントワーヌとジュリアン兄弟と、そしてギャビーの3人の少年たちは、一番先に連隊を見つけようと待っているところへ兵士たちの姿が見え、彼らは村に帰って報告する。ところが、それは敗走するドイツ軍だった。村人たちは急いで逃げ去ったけれど、遅れてやってきた村長は射殺されてしまう。3人の少年たちは、事の重大さに村を飛び出したけれど、ギャビーは捕まってしまう。親戚に預けられていた兄弟2人は母親がいるらしいリヨンに行くことに決め、途中、追っ手の目を騙すために、兄のアントワーヌは洗濯物から女の子のワンピースを盗んで女装をする。途端に、「フランスの思い出」の笑顔が可愛いアントワーヌになったのには嬉しくなる。本当に女の子みたい。 ![]() 水車小屋まで来た兄弟は、そこでドイツ軍の脱走兵ヨーゼフに出会う。ライフルで脅され、腰痛のヨーゼフを一輪車に乗せ、兄弟は骨接ぎばあさんの家まで連れて行く。 ドイツとフランスで互いに罵りあいながらも、兄弟はヨーゼフに親しみを抱き、ヨーゼフと共に旅をする。ヨーゼフもこんな二人に懐かしさを覚える。アントワーヌの父は蒸発し、ジュリアンは私生児で兄弟は叔父さんの家で暮らしていた。そんな兄弟はヨーゼフに父親の匂いを嗅ぎとったのだろう。レジスンタスに出くわしたり、ドイツ軍のスパイだった男と遭遇したりといった危機に出くわすけれど、そのたびに3人はうまく切り抜け、次第に意気投合していく。しかし途中で立寄った村で、ヨーゼフは村人たちが教会に集められドイツ軍によって処刑された壮絶な現場を前に愕然とする。そしてアメリカ軍に見つかったヨーゼフは…… 3人の面白おかしい珍道中、そして戦争の虚しさ、悲惨さ、そして愛する者を喪う悲しみを描いた作品で、ここでもリシャール・ボーランジェのぶっきらぼうな演技と、少年二人の本当に伸びやかで自然な子供らしさが、絶妙なバランスの素敵な小作品となっている。 最後、アメリカ軍に保護され、兵士たちと一緒に車に乗る兄弟だけど、ヨーゼフの身に起きた悲劇に泣きじゃくるジュリアンをしっかりと抱きしめ、自分も泣きながら弟を慰めるアントワーヌの姿にはちょっと成長したルイをみるよう。兄弟喧嘩なども織り交ぜながらも、最後にこんな兄弟愛の姿にはちょっと感動だ。 エンディングの最後に「アントワーヌ・ユベールとジュリアン・ユベールに捧げる」という言葉があった。親が愛する子供に、これだけは伝えたいという思いがこもった、暖かい作品。 監督:ジャン=ルー・ユベール 脚本:ジャン=ルー・ユベール 撮影:アニエス・ゴダール 音楽:ユルゲン・クニーパー 出演:リシャール・ボーランジェ/アントワーヌ・ユベール/ジュリアン・ユベール/ジュディット・アンリ
by mchouette
| 2008-03-20 00:00
| ■映画
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