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NO COUNTRY FOR OLD MEN
2007年/アメリカ/122分/R-15 at:TOHOシネマズ梅田 コーエン兄弟待望の新作「ノーカントリー」 1980年代。メキシコ国境沿いアメリカ・テキサス州を舞台にした物語。 ![]() 今年度の米・アカデミー賞で、作品賞、監督賞、助演男優賞とあわせ脚色賞も受賞している本作。 撮影に入る前には映画の脚本を完璧に仕上げ、役者には脚本に忠実に演じてもらうだけだというコーエン兄弟。今までの彼らの作品のほとんどは、兄弟自ら執筆した脚本によるものだっただけに、今回、彼らがどんな風に原作を脚色したのか大いに興味ありで、映画公開前にコーマック・マッカーシーの原作「NO COUNTRY FOR OLD MEN<邦題「血と暴力の国」>」を読みました。 コーマック・マッカーシーは、本作に続いて「逆境」「平原の町」からなる「国境三部作」発表しており、他の2作もそのタイトルからして大いに興味がそそられる。 読んでいるうちに、ディテールまで拘ったリアルな描写、含蓄ある表現など、原作の筆致がまるでコーエン兄弟の映画を言葉で見ているような……このタッチは紛れもなくコーエン作品だわと思うほど。 そしてコーエン兄弟は、原作のもつ緊張感を、原作以上の緊迫感とリアリティで見事に映像化している。 トミー・リー・ジョーンズ演じる保安官ベルが、この国について語るモノローグから始まり、ラストで、ベル保安官が語る、彼が見る夢の話に至るエンディングまでの122分間、画面に釘づけにさせる緊張感は、見終わった後も鈍い余韻が続く手ごたえ。 バイオレンスを描いた作品ながら、鈍い重さを感じる、こんな久々の手ごたえを感じさせてくれる作品にであうと泣きたいほど嬉しい。 ストーリーがどうだ、この場面のこの描写がどうだ、といったことはコーエン兄弟に限っては書く必要はないだろう。 映像表現については今まで以上に、コーエン兄弟は絶妙なるテク二シャン。 今まで以上に更に洗練され、役者の動きに一切の無駄がない。 二人の頭の中で、ディテールに及ぶまで完璧に緻密に計算されつくした映像を感じた。 観ていて思ったのが、 コーエン兄弟は 「一瞬」という時間を知っている。 衝撃の一瞬を知っている。 恐怖のその一瞬を知っている。 追い詰められる切迫感の沸点を知っている。 沈黙がもたらすものを知っている。 沈黙のなかで聞こえる音がもたらすものを知っている。 そして 見ている途中で気がついたけれど、映像を更に盛り上げる音楽が、ここでは一切使われていないこと。 あるのは沈黙と音だけ。 麻薬取引がらみの殺人の現場に遭遇したモスが持ち逃げした大金の札束に隠された探知機をキャッチする受信機を持って、殺し屋シガーが持ち逃げした人間を追跡する。大金の入ったカバンをもつモスが宿泊しているモーテルに近づくにつれ、受信機のカチカチとなる点滅音が次第に早くなる。沈黙の中で無機質なデジタル音がもたらす緊張感。 靴音、通風孔に隠したカバンを引き寄せる軋み音などなど、音のない世界でこれらの音がいやでも不気味さと不安と緊張をかきたてる。 そして光と闇がもたらす恐怖感。息をつめる瞬間。 観るものに、その緊張を崩すことなく、追い詰めるところと抜くところのバランスを心得ている場面の切り替え。 今までのコーエン兄弟の集大成を見る興奮が沸いてくる。 助演男優賞を受賞した殺し屋シガーを演じたハビエル・バルデム。 ある事件で後ろ手に手錠をかけられ保安官に連行されてきた彼が登場する。 保安官が部屋で電話をかけている間に、後ろに座っていたシガーはしゃがんで手錠をかけられた両手から両足を抜き、前に持ってきた両手を、保安官の喉にまわし絞めつける。床に転がってのた打ち回る保安官の身体の下で、ハビエルは顔色一つ変えず、見開いたその目は全くの無表情。これは怖い。Pタイルの床には、喉を絞められもがき苦しんだ跡を示す靴底がつけた無数の黒い筋が…凝ってます。 「海を飛ぶ夢」で四肢麻痺となりベッドに寝たきりの男を、顔の表情だけで演じきったハビエル。さすがです。 ![]() コーエン作品は、人がゆっくりと歩くテンポで物語が展開していく。本作もバイオレンス・ドラマで追う者と追われる者のスリリングな物語で、そこには血が流れる殺人も一人二人だけではない。しかし、その殺人はゆっくりと静かに行われ、人の死は一瞬に起きる。そのたびに私は椅子から弾かれたように飛びあがってしまう。 ボンベからでる高圧ガスによって行われる無音の殺し。鍵穴も丸く簡単にぶち抜く高圧ガスの威力。こんな武器を殺し屋にもたせたコーマック・マッカーシーの発想も凄い。そしてその威力のすさまじさを映像で表現したコーエン兄弟も凄い。これで無表情に人を殺すハビエルも凄い。 ハビエルの髪型と彼の演技力が話題で、助演ではなくってハビエルが主演では?って声も聞くけど、全てが終った後のラストの場面。単なるバイオレンス作品なら、後は余韻のシーンとなるのだけれど、本作で描こうとしたテーマは、何がおきるか分からん、どう考えたらいいのか分からんこんな殺人事件が生み出されるこの国の闇、闇が生み出す人の心の闇。 原題「NO COUNTRY FOR OLD MEN」 直訳すると「老人の住む国にあらず」 初老の保安官ベルが語るこの国の闇、闇がもたらす悲劇、どうしようもない不条理。やはり主演は保安官ベルを演じたトミー・リー・ジョーンズの存在感なくしては本作のテーマは語れないだろうと思う。 「メルキアデス・エストラーダの三度の埋葬」で国境を描いたトミー・リー・ジョーンズだからこそ演じられた保安官ベルだろう。 ![]() そしてハビエル・バルデムとトミー・リー・ジョーンズの間で影が薄い感のある、追われる男モス役を演じたジョシュ・ブローリン。 モスは溶接工で普通の労働者だけれどベトナム帰還兵。血と地獄を見てきた男である。どこか血なまぐささを感じさせる普通の男としてジョシュ・ブローリンの風貌もまた適役。本作の主要な3人の男たちのコーエン兄弟のキャスティングは見事だと思う。 ![]() 冒頭のベルの独白。 「この国はどうなっているんだ。 女の子を殺した14歳の少年を逮捕したことがある。新聞は激情犯罪(クライム・オヴ・パッション)と書いたけれど、その少年は感情(パッション)なんか何もなかったと俺に言った。地獄にいくのも分かっているとも言った。 これをどう考えていいのやら俺にはわからん。」 「敬語を忘れちまってから、こんな世の中になってしまった」同僚の保安官がベルに言った言葉は、日本でも当てはまる現象だ。 「ノーカントリー」「血と暴力の国」この国はアメリカだけでなく、世界中の国であり、ここで描かれている闇は世界の闇であるということ。 ラストで妻に語ったベルが見た夢の話。 「そんな闇で、俺の親父が牛の角に火を点し、真っ暗で寒い場所で、俺の行く道の先で俺を待っていてくれている。そこで俺は目が覚めて夢はそこで終った。」 道を照らす光は確かにあるということ。生きていく中で光の存在を忘れてはいけないということだろう。 これまでのコーエン作品にあった、たとえは「ファーゴ」で フランシス・マクドーマンド演じる妊娠中の警官マージが犯人達を連行する車の中で「あんた達はバカよ」と悔しそうにいい、言われたピーター・ストーメアだったかな「うるせいなぁ」ってふてくされた顔するといった、そんなクスリと笑ってしまう、人間の可笑しくて哀しくて愚かな部分をユーモラに描いた雰囲気はなく、とてもシリアスに描かれていて、今までとは一味違うコーエン作品だろう。 もう一度じっくりと観たいと思う作品だ。 そして、本作みてもう一度みたいコーエン作品はやっぱり「ブラッド・シンプル」それから「ファーゴも。 監督: ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン 製作: ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン/スコット・ルーディン 製作総指揮: ロバート・グラフ/マーク・ロイバル 原作: コーマック・マッカーシー 『血と暴力の国』(扶桑社刊) 脚本: ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン 撮影: ロジャー・ディーキンス プロダクションデザイン: ジェス・ゴンコール 衣装デザイン: メアリー・ゾフレス 編集: ジョエル・コーエン (ロデリック・ジェインズ名義) イーサン・コーエン (ロデリック・ジェインズ名義) 音楽: カーター・バーウェル 出演: トミー・リー・ジョーンズ (エド・トム・ベル保安官) ハビエル・バルデム (アントン・シガー) ジョシュ・ブローリン (ルウェリン・モス) ウディ・ハレルソン (カーソン・ウェルズ) ケリー・マクドナルド (カーラ・ジーン) ギャレット・ディラハント (ウェンデル) テス・ハーパー (ロレッタ・ベル) バリー・コービン スティーヴン・ルート
by mchouette
| 2008-03-16 00:00
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