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ESTHER KAHN
2000年/フランス/145分 女優を目指す一人の女性の成長を、リヴァー・フェニックスとホアキン・フェニックスの妹サマー・フェニックス主演で描いたドラマ。アルノー・デプレシャンがフランス人以外の役者を起用した作品。言語もフランス語ではなくて英語。 1881年、ロンドン。イーストエンドのユダヤ人街で生まれ育ったエスターは、内向的な性格で、自分の殻に閉じこもり、他人はおろか家族の者とも満足なコミュニケーションがとれない女性だった。エスターにとって、家族が夕食後にいろんなことをお喋りしている話の、どれにも彼女は関心をもてなかったし、どうして家族のだれもが面白がるのか理解できなかった。そんなある日、初めて観た芝居に刺激されたエスターは、密かに女優になる夢を抱き始める…………。 そして一人の老役者の指導を受け、そして彼女を取巻く舞台人たちによって、女優として目覚めていく。一人の女性の成長の物語。 ![]() 若い映画人がそうであるように、デプレシャンもまた、敬愛する監督としてフランソワ・トリュフォーやジョン・カサヴェテスの名をあげている。 特にトリュフォーにいたっては、彼の教訓「ただ一つの考えだけを表現するための4分間の場面を決して書かないこと。1分間の各場面に4つの考えを入れること」を机の前に貼っているくらいだ。 そして本作は、トリュフォーの作品で、野生の少年を、大人の愛ある教育によって人間社会に回帰する物語「野性の少年」 (1969年/86分)の影響をかなり受けた作品だろう。 トリュフォーが「野性の少年」でサイレント映画でグリフィス作品に見られるアイリス技法を用い、瞳孔が閉じるように輪がすぼまって画像の一部を囲み、そして全体が真っ黒になる「アイリスアウト」でそれぞれのエピソードを終らせていた。デプレシャンもこれと同じ手法でエスターのそれぞれのエピソードを語っている。 そして一人の老いた役者が、見返りを求めず彼女の演技を高める手助けをする。自分の作った殻から抜け出せず演技の限界を感じるエスターに、彼は、処女を捨てろ、恋をしろとアドバイスをする。 ![]() ![]() エスターに演技指導を行うネイサン役にイギリスの役者イアン・ホルム。 彼がエスターに教える演技のABCはオーソドックスな演技の基本動作だろう。2歩ごとに違う感情を持ちながら歩くといった指導シーンなどは興味深い。ホルムの師はローレン・オリヴィエだとのこと。このあたりはシェークスピア劇団でキャリアを積んできたホルムが、新人の頃受けた演技指導をここで持ち込んでいるのだろう。 そして脚本家と恋に落ちたエスターだが、恋多き男は程なく自由奔放な女性に夢中になりエスターを捨てる。そして、彼が翻訳した戯曲でエスターが主役にたつ舞台に、脚本家は新しい愛人を連れて舞台を見に来る。恋人に去られたショックから抜け出せないエスターはグラスの破片を噛み砕き、二人の前では演じられないと抵抗する。そんなエスターに役者や舞台関係者は、何とか舞台に立たせようとする。そして見事にエスターは二人の前で彼が翻訳した戯曲の舞台を成功に導き、女優魂に目覚める。終盤はそんな葛藤が描かれている。ちなみにエスターの恋人になる脚本家役ファブリス・デブレシャンは監督の実弟だそうだ。 恋人に去られたエスターが初めて自分の感情を表にだし泣き喚く。自分の殻が砕かれていく過程だろう。「野性の少年」が涙を見せ始めた時から、徐々に彼の人間回帰の兆しが見え出すシーンと重なるものがある。 そして、演じられないと抵抗するエスターをよそに、客席では舞台の幕が開くのを待つ観客がいる。割れたグラスを噛み口中を傷だらけにし、精神的に追い詰められたエスターが皆に引きずられるように舞台に向かう姿などは、ジョン・カサヴェテスの「オープニング・ナイト」(1978年/144分)でアル中の中年の女優が、泥酔した身体で舞台まで這うようにいき、そして舞台で堂々の演技をみせる、そんなジーナ・ローランズの姿と重なるものがある。 他にもいくつかの作品からインスパイアされただろうが、主には、この二つの作品に影響を受けてプレシャンが脚本を書いたのではないかしらと思えるほど。 プライドの高い彼の作品にば珍しく、いくつかの作品の影響が感じられる。 「野性の少年」に見られた少年と医師との葛藤や感情や、「オープニング・ナイト」にみるアル中の中年女優の追い詰められる内面に肉薄する緊張や切迫感が見られないまま、本作の物語の展開は散漫に流れ、緊張感の高まりのないままにラストを迎えている。映像も素晴らしく、演出も巧みだとも思うところはあるのだけれど…。 本来、映像で表現すべき役者の内面描写をナレーションによって観客に見せているところにも問題があるだろう。「そして僕は恋をする」ではポールの心理を綴るモノローグとして効果的だったナレーションが、ここでは逆効果になっている。フランス語のデプレシャンと英語の役者たちとの疎通の問題もあったのだろうか……私には登場する役者の血肉が感じ取れない145分はちょっと辛かった。 そして「オープニング・ナイト」は144分。観るものの緊張感を引きずり出しながら、最後、舞台に立った女優に拍手すらしたくなるほどの緊張の高まりまで、144分間画面にくぎづけにさせて観るものを引っ張っていったジョン・カサヴェテスの演出のうまさを再認識するし、ジーナ・ローランズの迫真の演技なくしては語れないだろう。そんなことも思い返される。 監督: アルノー・デプレシャン 製作: アラン・サルド 製作総指揮: パスカル・コーシュトゥー 脚本: アルノー・デプレシャン/エマニュエル・ブルデュー 撮影: エリック・ゴーティエ 音楽: ハワード・ショア 出演: サマー・フェニックス (エスター・カーン) イアン・ホルム (ネイサン・ケラン) ファブリス・デブレシャン (フィリップ・ヘイガード) フランシス・バーバー (リヴ・カーン) ラズロ・サボ (ツォーク・カーン) エマニュエル・ドゥヴォス キカ・マーカム
by mchouette
| 2008-01-14 00:00
| ■映画
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