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MRS. HENDERSON PRESENTS
2005年/イギリス/103分 1937年、ローラ・ヘンダーソンは、夫に先立たれ莫大な遺産を受け継いだ。勧められた刺繍も、富豪未亡人らしい慈善活動も、どれもこれも肌に合わなかった彼女は、思い切って閉鎖された劇場を購入した。 富豪の未亡人ローラ・ヘンダーソンにより、イギリスでは前未聞のヌードレビュー公演を行い、第二次大戦中も劇場を閉鎖せず公演を行った、そんなウィンドミル劇場(Windmill Theatre)の実話に基づく物語だそうだ。 冒頭のタイトルロールからして、この映画のセンスがぎゅっと詰まっている。 ちょっと前(かなり前かな?)までは、映画の邦題一つにしても、我がセンスをかけて「これぞ」という邦題があったものだ。 そしてタイトルロールにしても凝っていたものだ。観客もこれから始まる映画の期待にワクワクしながら本編を待っていたものだ。そんなかつて昔の映画を、こんな冒頭のタイトルロールを観ながら思い返す。 そんな古き良き時代を彷彿とさせてくれるような拘りのタイトルロール。 レビュー華やかな時代、日本でいえばモガ・モボの時代を感じさせるようなクラシカルで粋な挿絵で彩られたオープニング。 そして映画のストーリーも、こんなオープニングでみせる洒落っ気たっぷりで粋な雰囲気そのままに小気味よく展開していく。 ![]() 監督はスティーヴン・フリアーズ。「危険な関係」「クィーン」などを手掛けている。 書簡だけで綴られた「危険な関係」でグレン・クローズと、そしてジョン・マルコヴィッチに稀代のプレイボーイを演じさせ、見事に映画化した監督で、この作品はなかなか気に入っている作品だ。そして本作「ヘンダーソン夫人の贈り物」の次にはヘレン・ミレンをエリザベス女王役に「クィーン」を撮っている。映画のツボを心得てられる監督とお見受けする。 劇場興業など全く知らなかったローラ・ヘンダーソン夫人と、夫人が劇場支配人として雇用したヴァンダム。どちらも負けず劣らずの自己主張の強い二人。 「私のやることに口出しはしないでいただきたい。」 「気に入ったわ。これで失敗したら、私の人を見る目がなかったということね。」 ヘンダーソン夫人も、当時の上流階級の女性にしては、そんな枠に収まりきらない、かなりの強い個性の持ち主。世間の価値観とか常識に囚われず自分の価値観や考えを持っている人。そんなヘンダーソン夫人に、担当部署の長官であるクロマー卿は、「あなたは昔から困った人だ」とこぼす。ヘンダーソン夫人から「トミー」という愛称で呼ばれる卿はきっと、幼馴染でおてんば娘だった彼女に散々てこずらされてきたんだろう。 押しも強いけれど、引くところも潔い。女の可愛い部分も、人の哀しみも知っている。そんなヘンダーソン夫人にジョディ・デンチ。 まさにデンチの適役といっていいでしょう。逆に適役過ぎて、ジャック・ニコルソンのように、一つ間違えばそのキャラの強さと演技の巧みさが、くどさにつながり、観ている方は食傷気味になるのだけれど、そこはジョディ・デンチの演技センスと、監督の演出の巧さでしょうか。ヘンダーソン夫人の誰にも見せない哀しみの部分、イケイケの部分、すっとぼけた部分、頑固な部分、ここは引けないという女の意地とかが、うまく絡み合い、とても共感を覚えるヘンダーソン夫人をジョディ・デンチは演じ上げている。 ボブ・ホスキンス演じる劇場支配人ヴァンダムやトミーことクロマー卿とのやり取りも面白い。ヘンダーソン夫人のユーモアと機知にとんだ言葉で、相手に切り返し、白も黒に覆す彼女の台詞の数々。さすがシェークスピアの国イギリス。こんなところも、この作品を上品で極上の娯楽作品に仕上げているといっていいだろう。英語に堪能であれば使っている言葉の妙が分かっただろうと思うと残念。 脚本は「ベント」の原作者であり戯曲家でも知られているマーティン・シャーマン。 舞台のオーディション、楽屋裏での踊り子たちの素顔、舞台のリハーサル、そして舞台と客席との一体感などなど。そして踊り子たちが裸になるのを躊躇った時、では僕たちも裸になろう、と言って、そこにいる男性全員も裸になるなんて、舞台の魅力を知っているマーティン・シャーマンだからこそのユーモア溢れる設定でしょう。 ![]() ![]() 連日のようにドイツ軍の空爆に曝されるロンドンの街にあって、他の劇場が次々と閉鎖する中で、ウィンドミル劇場は、武器を持つだけが戦いではない、兵士たちを勇気づけるんだと、「絶対に劇場を閉鎖しない」と宣言し、踊り子たちも劇場で寝泊りし、空爆に怯えながらも果敢に公演を続ける。劇場前には戦場に赴く兵士たちで溢れ、格好の空爆の対象となる理由で、とうとう劇場閉鎖の最後通告を受けてしまう。 イギリス軍の戦意喪失を目論んで、ナチス・ドイツ軍はロンドンを激しい空爆でイギリス本土を攻撃したけれど、イギリス人たちは、弱気になるどころか、持ち前のユーモアで空爆の悲劇をはねのけ、店を開き、人々は生活をしていたそうだ。そんなドキュメン・フィルムでそんな光景も見たことがある。「イギリス魂」とでもいうのでしょうか。 この映画も、そんなイギリス人気質を感じさせる。ハリウッドでも、パリのムーラン・ルージュでもない、イギリス映画の持つ品の良さと無骨さを感じる。 そして、劇場前に集まった兵士たち、劇場関係者、新聞社、そして通告をしたトミーことクロマー卿たちを前に、人前で涙なんか見せたくないヘンダーソン夫人にとって、多分これが彼女の人生一度きりともいうべき演説をする。 先の大戦で一人息子が戦死したこと。 作中、「未亡人を演じるのも疲れるわ」と友人の前でさばさばとした表情をみせるその裏で、湖で一人ボートを漕ぎ、大声をあげて泣いていた夫人も知っているし、フランスにある戦没者墓地に眠る息子の墓標の前で黙って座っている夫人の姿を、観客である私たちは幾度も見ている。 ![]() 鼻っ柱の強いヘンダーソン夫人の、こんな隠された哀しみを、作中で何も語らずに挿入している。そしてラスト近く、「女の裸を知らずに死ぬなんて犬死よ」と言い切った母の息子への強い思いには思わず涙ぐんでしまう。 わがままで、世間知らずで、鼻持ちならない人間と思っていたヘンダーソン夫人の隠し持った胸の内、多分、息子が死んでから世間の誰にも見せなかった母である彼女に触れたヴァンダム。ユダヤ人である彼もまた、ナチによってオランダに残した家族を失う悲劇を味わっている。そんな哀しみを抱えた二人が、劇場公演に対する思いを共に分かち合う同志として、劇場の屋上で黙って静かに踊る、こんな余韻をもって幕が下りる。 とはいえ、この二人、やはり顔をあわせれば、互いに我をはり合って、ヘンダーソン夫人の毒舌もきっと健在なんでしょう。 可笑しさと、哀しさと、ユーモアで彩られた「ヘンダーソン夫人の贈り物」 劇場で繰り広げられる舞台の数々も見事。 ミニシアターで2週間の期間で公開されていて、気にはなりつつ他の用事が重なって劇場鑑賞が叶わなかったのが、今更ながら悔やまれる。 マギー・スミスといい、ヘレン・ミレンといい、そしてジョディ・デンチ。 年をとって、美貌とは別の、更に味わいのある主役を演じられるのは、イギリスの女優くらいではないかしら。 本作のジョディ・デンチはとってもチャーミング! 監督: スティーヴン・フリアーズ 製作: ノーマ・ヘイマン 製作総指揮: デヴィッド・オーキン/ボブ・ホスキンス/ フランソワ・イヴェルネル/デヴィッド・M・トンプソン /トレイシー・スコフィールド 脚本: マーティン・シャーマン 撮影: アンドリュー・ダン プロダクションデザイン: ヒューゴ・ルジック=ウィオウスキ 衣装デザイン: サンディ・パウエル 編集: ルチア・ズケッティ 音楽: ジョージ・フェントン 出演: ジュディ・デンチ(ローラ・ヘンダーソン) ボブ・ホスキンス(ヴィヴィアン・ヴァンダム) ウィル・ヤング(バーティー) クリストファー・ゲスト (クロマー卿/トミー) ケリー・ライリー (モーリーン) セルマ・バーロウ (レディ・コンウェイ) アンナ・ブリュースター( ドリス) ロザリンド・ヘルステッド (フランセス) サラ・ソルマーニ (ヴェラ) ナタリア・テナ (ペギー) トーマス・アレン ラルフ・ノセック
by mchouette
| 2008-03-13 00:00
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