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NIGHTWATCHING
2007年/カナダ・ポーランド・オランダ・イギリス・フランス・ドイツ/139分/R-15 at:テアトル梅田 なぜ、莫大な富と名声を極めた画家が、転落の人生を歩んだのか? 本作は「ピーター・グリーナウェイ監督が、オランダ絵画の巨匠レンブラントの栄光から転落へと至るドラマティックな人生を、彼の代表作『夜警』に秘められた数々の謎に絡めて想像力豊かに描き出すアート・ミステリー・ドラマ」だそうだ。 監督のピーター・グリーナウェイ。衒学趣味、独特の構図、難解なストーリーで根強いファンがいる方だそうだ。私も「コックと泥棒、その妻と愛人」(1989)などは気に入ってますが。 もともと画家をめざしていたグリーナウェイ監督作品の映像は彼独特のこだわりに満ち満ちている。 本作も、舞台仕立のような設定。レンブラントの絵画を思わせるような構成。そしてレンブラントが生きた17世紀のコスチューム。こんな魅力的な映像には十分に楽しめました。 レンブラントを演じたマーティン・フリーマンが全裸で正面向いている映像なども野暮なボカシ(とはいっても画面自体がダークトーンなのではっきりと言うほどでもなかったのですが)などは入っていないところはさすがと思いました。これでボカシが入ったら、監督の拘りの映像美が損なわれることでしょう。 しかし、グリーナウェイ監督が描き出したレンブラントの絵画「夜警」の裏側に潜む告発と復讐のドラマ、レンブラントの悲劇といったものは、想像力溢れた独自性のあるものとも思えず、例えば、わらべ歌や民話に隠された真実、民衆の告発などと同様に、絵画でもレンブラントに限った事ではないだろう。グリーナウェイの謎解き自体にも、ちょっとこじつけ的な無理を感じなくもない。 そして、登場人物たちが饒舌すぎるほど饒舌だ。 饒舌な台詞が、さらにその内容に奥行きを与えてくれるのであればいいのだけれど、観るものの想像の楽しみを奪ってしまい、聞いている私は「あぁあ、これも言っちゃった!」っていう反応になってしまう。ストレートに種明かしを洗いざらい語られたら、実も蓋もどころか味わいさえない。 そして饒舌すぎるほど饒舌さに、レンブラントと3人の女たちとの絡ませながら、片方の視力が損なわれており、目が見えないという恐怖に怯えるレンブラントを描きながら、受け止める私の感性の貧しさでしょうか、レンブラントその人の実像が曖昧なままで、最後まで見えてこなかった。 告発とその報復のドラマとともに、レンブラントが片方の視力を殆んど損ない画家生命の危機に脅かされていながらも、この作品に描きこんだ彼の情熱とか、内から湧きあがる感性といったことが描かれておらず、絵画そのものがとても薄っぺらに扱われているようにさえ感じられた。 人間が登場し、そんな人間たちの欲望が渦巻いているけれど、そこにいささかの人間臭さも感じられず、凝った映像と比べて内容は至って平板なものに終わっているような…… 監督の拘りと、作品の面白さが結びついていないような…… なんか予感はしていて、当初は観るつもりではなかったけれど、映画の日で1000円だったので「かつて、ノルマンディで」の続きで観たわけだけれど、やはりな、という予感どおりだった私の感想。初日プレゼントで本作の映像シーンをプリントしたクリアファイルを貰った。 本作といい、「エリザベス ゴールデン・エイジ」といい、最近の作品には、エモーショナルで凝った映像と、映画の内容との間にズレがある作品が多いように思う。 ちなみに本作のテーマとなっているレンブラントの「夜警」はアムステルダム国立美術館所蔵で、この絵画には、「フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルグ副官率いる市民隊」というもうひとつのタイトルがあるそうだ。市警団つまり市民軍の集団肖像画で、当時はこういった集団肖像画が流行したそうだが、こうした集団肖像画の制作では登場人物を平等に描くことが基本とされていたけれど、レンブラントは画面に動きをつけ、それまでになかった物語性の高い集団肖像画を描いたが、当然、この作品を受け取った依頼者の多くは顔が腕と重なっている等の不満を漏らしたといわれている。 監督: ピーター・グリーナウェイ 製作: キース・カサンダー 製作総指揮: グジェゴシュ・ハイダロヴィッチ/リンダ・ジェームズ/ポール・トライビッツ /ジェイミー・カーマイケル/ラリー・シュガー 脚本: ピーター・グリーナウェイ 撮影: レイニア・ファン・ブルメーレン プロダクションデザイン: マールテン・ピールスマ アートディレクション: ジェームズ・ウィルコック 衣装デザイン: マリット・ファン・テル・ブルグ/ジャグナ・ヤンカ 編集: カレン・ポーター 出演: マーティン・フリーマン エミリー・ホームズ マイケル・テイゲン エヴァ・バーシッスル ジョディ・メイ トビー・ジョーンズ ナタリー・プレス ジョナサン・ホームズ ケヴィン・マクナルティ アガタ・ブゼク フィオナ・オシャーグネッシー ロバート・ザレッキー アンナ・アントノヴィッチ ハリー・フェリアー マシュー・ウォーカー ヒュー・トーマス クシシュトフ・ピチェンスキ ジョナサン・ヤング アンジェイ・セヴェリン マチェイ・ザコシェルニー クリス・ブリットン マイケル・カルキン ジェラルド・プランケット アダム・コッツ リチャード・マッケーブ
by mchouette
| 2008-03-05 00:00
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