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今年の米アカデミー賞授賞式(日本時間2月25日)は、ストで開催自体が危ぶまれていて、十分な準備もできないままに、開催されたこともあるのでしょう。俄仕立てといったところもあり、ノミネート作品は全体にアメリカの暗部を描いた作品などダーク・トーンも多く、全体としては例年に比べ地味だったし、主要部門の受賞もほぼ決まっているような状態だったからそれほどの盛り上がりも見られなかったんではないでしょうか。けれど、私にはちょっと感慨深い授賞式だった。
月曜日WOWOWで放映された授賞式中継映像を録画していて、帰宅してからいそいそと観て、思ったこと、感慨に耽ったこと、勝手に思い込んでいることなどを徒然に書いました。<エピソードなど記憶にあるまま書いてますので、記憶違いがありましたらご指摘くだされば嬉しく思います。> ジョエル&イーサン・コーエン監督「ノーカントリー」 脚色賞、監督賞、作品賞そして出演したハビエル・バルデムには助演男優賞の米アカデミー賞4冠を受賞。 「僕とイーサンは子供の時から映画を作っていた。 今もその頃と変わらない。 僕たちが砂場の隅でまだ砂遊びが出来るのは皆さんのおかげです。ありがとう。」 お兄さんのジョエル・コーエンのこんなスピーチに、ロバート・アルトマンがアカデミー名誉賞受賞の時「親しい仲間たちと砂浜で砂の家を作り、それが波がきて崩れて、また砂の家を作る…そんな風にして今まで映画を作ってきた。」と映画人生を振り返って語ったスピーチを思い出します。 コーエン兄弟は1996年「ファーゴ」ではアカデミー賞脚本賞を、主演のフランシス・マクドーマンドは主演女優賞を獲得した。この時「これからも僕たちのやり方で映画を作っていきます」とハリウッドに対してインディーズ魂を見せていたコーエン兄弟。弟のイーサンは砂遊びの途中で、無理やり正装させられて、半分そっぽ向いた感じで壇上に立ち、監督賞の時は、その前に脚色賞で受賞していたので、「さっき全部言ってしまったから。ありがとう」と素っ気なく言ってマイクから離れてしまったのを受けて、兄のジョエルは、頭の中でこの白けた状況をどんな風にまとめようかと、しばし思案していたんでしょうね。しばしの沈黙があって、スピーチしたのが上の砂遊び。二人ともこんな晴れがましい舞台からおりたい様子がおかしい。でもジョエル・コーエンの妻である女優のフランシス・マクドーマンドは受賞した彼らを客席で万感胸に迫る風で涙を潤ませながら彼らのスピーチに肯き、最後は指笛を吹いて彼らへの賞賛を示していた。 「ファーゴ」から12年。「ディボース・ショウ」「レディ・キラー」と作品を発表したけれど、今ひとつ切れ味の冴えが感じらなかったコーエン兄弟。マクドーマンのこんな姿を見ていると、やはりコーエン兄弟にも苦悶の時代があったんだろうなって思ってしまう。そして、横向いてるけど、やはり今回の受賞は嬉しかっただろうと思う。 しかしこの二人、ジョエルが53歳、イーサンが50歳だけど、体型も雰囲気も昔とちっとも変わらない。やはり、彼らのやり方でずっと変わらず映画を撮り続けていんたんでしょう。「皆さんのおかげです」って言葉が出てくるのも年齢でしょうか。イーサンはそんな言葉も言いたくないみたいな風が、なんだか拗ねた子供みたいで面白かったけど…(笑) ポール・トーマス・アンダーソン監督「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」 2年前に撮影に入ったという情報を聞いてから、待ちに待った作品! 主演男優賞を受賞したダニエル・ディ=ルイス。 「アンダーソン監督の頭の中で浮かんだ小さなアイデアが、この賞に届くまでに成長した過程が走馬灯のように頭を廻ります。」「たくさんの方にお礼を言いたいのですが、ポールにお礼を言うことで許してもらえるでしょう。」 カメラが捉えたポール・トーマス・アンダーソンの眼が潤んでいた。今までのアカデミー賞では、自信に満ちた(と私には見えたんだけど)顔で会場に座っていた彼が、今回は眼を潤ませていました。ある映画評論家がアカデミー賞の予想で、「ポール・トーマス・アンダーソンについてはダニエルからあれだけの演技を引き出した。それだけで十分に立派だ。」と語っていた。受賞は関係なく、ポールの監督としての力量は本作でも立証されたことでしょう。その前に、ロバート・アルトマンが自分の後継者として彼を目していたのですけれど…。 そして主演男優賞で壇上に上ったダニエルは、プレゼンターであるヘレン・ミレンの前に騎士の如く膝まづき、「爵位に近づいたようだ。」とユーモアを見せてオスカーを手にした。クィーンでエリザベス女王を演じたヘレン・ミレンをまえに、粋なユーモアを見せるダニエル。こんなポーズが様になるのもダニエルだからこそでしょう。 舞台に上る前から、横にいる妻のレベッカ・ミラーにキスをするところから、優雅な音楽のように、「エイジ・オブ・イノセンス」のワンシーンをみているような優雅な身のこなしで……。 賞取りレースも同じく主演男優にノミネートされたジョージ・クルーニーは開場前から多分ダニエルだろうと話していた。あいつが出てきたら、あいつには適わん。ダニエルに対しては皆一目置いているみたい。こんな騎士のポーズをしても、あいつだから…なんでしょうね。この優雅なスマートさは他の役者が逆立ちしても様にも真似もできないでしょう。 「この作品を通して父と息子についてじっくり考えました。この賞を、僕の祖父、父、そして僕の三人の息子たちを思いつつお受けします。」とスピーチで語っていた。彼がこんな風に家族を語ったのには驚いた。 3人の息子たちとは、現在の妻であるレベッカ・ミラーとの間にできた息子2人と、その前に6年間暮らしていたイザベル・アジャーニとの間にできた息子。 祖父とは、女優だった彼の母方の祖父のことでしょう。 あのヒッチコックを世に送り出したイギリスの大御所プロデューサーだったマイケル・バルコンで、この祖父のアドバイスがあってダニエルは役者の道に進んでいる。 上流階級の子弟としてパブリックスクールに入学した彼は、全員同じ服を着て同じ方向向いている光景に、「ここにいたら僕は死ぬ!」と、あらゆる校則違反をして退学処分となり、パブリックスクールから脱出した彼は、この祖父とよく魚釣りをしたそうだ。そして祖父はそんな孫に役者の道を勧めた。「彼とは演技の話など何もしなかった。今から思うと、もっと話をしておくんだった。」とダニエルは述懐している。 そして父。イギリスの桂冠詩人であったセシル・ディ=ルイス。 アイルランド人である父は、生まれた我が子に「New Born」という詩でその誕生を祝福した。そしてアイルランドの奴隷制解放に尽力した活動家ダニエル・オコーネルに因んで我が子に「ダニエル」という名前をつけた。ダニエルも父から受け継いだアイルランドの血にこだわる役者であり、同じくアイルランド出身の監督であるジム・シェリダンとともに「マイ・レフトフット」(本作で主演男優賞を受賞)そしてアイルランド紛争を背景にした「父の祈りを」「ボクサー」に出演している。彼は現在アイルランドの市民権も取得している。彼の中でその確執も含め、父の存在は大きかったようだ。 舞台の途中で父が見えたといって降板するなど、一時は精神状態の不安が囁かれたけれど、今回のアカデミー賞の彼を見ていると、何か一つトンネルを抜け出たような透明感を感じた。 ダニエルはこの作品を通して「父と息子」について考えたと語っている。ダニエル・デイ=ルイスとポール・トーマス・アンダーソンは、この作品を通して人として互いに共有するものがあったのだろう。 ダニエル・デイ=ルイス50歳、イーサン・コーエン50歳、ジョエル・コーエン53歳、ポール・トーマス・アンダーソン37歳。今回の受賞の向こうに、何かを越えてきた彼らの人生が見えるような気がした今回のアカデミー賞授賞式。 例年に比べて地味だったけれど、ダニエル・ディ=ルイスとコーエン兄弟、そして舞台には上がる機会はなかったけれどポール・トーマス・アンダーソン。こんな顔ぶれが観れた今回のアカデミーは、私にはとても贅沢な授賞式だった。 楽曲賞に「ONCEダブリンの街角で」のグレン・ハンサード&マルケタ・イルグロヴァに これは嬉しい受賞。昨年のアカデミー賞では「ブロークバック・マウンテン」「クラッシュ」などインディーズ系の作品がずらりと並んだけれど、今回はそれぞれに大作が並んだ。その中にあって、資金もなくハンディカメラで17日間で製作した本作のテーマ曲「Falling Slowly」が選ばれたのは嬉しい。風に乗って流れるこのメロディーに映画のシーンが思い出されます。 授賞式でもこの曲がパフォーマンスとして二人が歌いました。素敵なメロディです。 グレン・ハンサードは泣きながらオスカーを握り締めて「芸術を作ろう!」って。マルケタ・イルグロヴァ「インディペンデント系ミュージシャンには嬉しい受賞です。夢を持ち続ければ、必ず叶うんだ!」って初ノミネートで初受賞。感動的な受賞風景でした。 外国語映画賞には「ヒトラーの贋札」 コンチネンタル・タンゴが印象に残る作品でした。 「モンゴル」はノミネートされたおかげで、諦めていた日本での公開も決まり嬉しい限り。アメリカでの公開も決まったとか。 そしてメモリアル・フィルムの最後にヒース・レジャー 「ブロークバック・マウンテン」の冒頭シーン。壁にもたれ俯いた彼が、少し上をむいて顔をみせるシーン。彼の姿が映し出された時にはやはり胸にぐっときた。
by mchouette
| 2008-02-27 00:00
| ■映画・雑記
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