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UNE PARTIE DE CAMPAGNE
A DAY IN THE COUNTRY 1946年/フランス/40分 東京でこんな展覧会がいま開催されているそうです。 「ルノワール+ルノワール展」 ~画家の父 映画監督の息子 2人の巨匠が日本初共演~ 印象派の画家・ピエール=オーギュスト・ルノワールと、その次男で映画監督のジャン・ルノワールの2人の作品を紹介する企画展で、Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区)で2008年2月2日~5月6日まで開かれているそうです。 面白そうな企画だけれど、私は大阪なので行けません。 ↑展覧会のポスターにもなっている絵柄。 左側が画家オーギュスト・ルノワールの絵。そして右側が息子のジャン・ルノワール監督の「ピクニック」の陽光の中のブランコのシーン。主演のシルヴィア・バタイユ。 「ピクニック」…ジャン・ルノワール42歳の作品だ。 ルノワールの脚本は、晴天を念頭に置いて書かれていたため、雨続きの天候で撮影が長引き、ルノワールは次の作品「どん底」に着手し初めたことや、ルノワールがナチス・ドイツに占領されたフランスからアメリカに亡命したこともあり、35分ほど撮影した時点で中断したまま、未完も止む無しとされたとのこと。けれどプロデューサーのピエール・ブロンベルジュの執念から、10年後の1946年に完成にこぎつけた作品。ユダヤ人であったブロンベルジェはナチスに逮捕され、その後、収容所を脱出した時も、「ピクニック」の完成のことを考えていたそうだ。そして1946年にパリに戻った彼は無事にこの映画のネガを発見することができ、マルグリット・ルノワールが編集を行い、撮影されなかった二つのシーンを字幕説明で補い、そして本作「ピクニック」が完成した。 父親であるオーギュスト・ルノワールの絵のいくつか……夏のアルジャントゥイユ郊外の日傘をさす女性の絵とか、パリに近いブージヴァル近郊セーヌ河畔ラ・グルヌイエールのヨット遊びの絵とか、「散歩道(プロムナード)」「ぶらんこ」などなど……を思い起こさせるような、明るく柔らかな陽光。木漏れ陽。木々の間を吹きそよぐ風。川面を風が優しくなでつけ、細波が陽の光に煌めき……。 文才があれば、もっと適切な言葉で表現できるのでしょうけれど……。 明るくうららかな陽の光が降り注ぐ中の物語。 休日の一日。パリで店を経営するデュフール氏とその妻、そして娘のアンリエット、未来の娘婿となる青年、デュフール氏の母親の一行が馬車で田舎にピクニックにやってきた。 そこでアニエットと村の青年アンリは知り合い、互いに惹かれあう。陽炎のような、束の間の恋。そして、数年後、同じ場所で二人は再会する。アンリはここに来ると君を思い出すといい、すでに結婚しているアニエットだが、毎晩あなたを思い出すわと、目に涙をにじませる。そばで寝ていた夫が眼を覚まし、アンリは隠れ、二人はボードで去っていく。それを丘の上から見つめるアンリ。 そんな映像から季節の流れも感じる。 田舎について木立の中、明るい陽の光に向ってブランコを大きく漕ぐアンリエットを包むのは春の光。そして村の青年アンリに導かれて丘の木立の中に座る二人を包むのは、木陰で湿った夏草の匂いを感じさせる。そして夫とともにボートに乗り、オールを漕いでいるアンリエットの姿にふと秋の日の物悲しさを感じた。 ピクニックに来た時、若やいだ笑顔で、はしゃぎながらボートに乗っていたあの時間は既に過ぎてしまった……。 この時はアンリがボートを漕いでアンリエットはゆったりと身を任せていたけれど、再会したアンリエットは結婚しており、ボートで去っていく時はアンリエットが漕いでいたのが、皮肉っぽい演出だなって思い、そんなとこに彼女の人生がチラッとのぞいているのも面白かった。 アンリエットにとって、ピクニックのあのひと時が人生の一番華やいだ時間だったのでしょう。 春から夏へ、そして秋。40分という短い時間に凝縮された人生、時の移ろい。 ……………………………………………………………………………… 私はCS放映でしか観ていないけれど、DVDではメイキングとかカットされた場面なども収録されているようだ。やはり買いかな?と思う。 アニエス・ヴェルダ監督の「幸福」中でも、若い家族がピクニックの帰りに摘んだ花束を叔母に届けた時、叔母がテレビで観ていたのは、この「ピクニック」の映像だったと記憶しているが…。 そして、この作品で助監督を務めているのがジャック・ベッケル、ルキーノ・ヴィスコンティ、イヴ・アレグレ、そして写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンといった錚々たる人たち。 そしてアンリエットを演じたシルヴィア・バタイユはフランスの思想家であるジョルジュ・バタイユの妻であり、プロデューサーであったブロンベルジュの愛人だったとも言われている。ジョルジュ・バタイユも端役で出ているとか。 学生時代、多分ちっともわかっていなかったと思うのだけれどジョルジュ・バタイユの著作「空の青」を読んで、そのシュールな世界にすっかりはまってしまって「エロティシズム」「眼球譚」…読んでいたっけ。今も書棚には並んでいますけれど…。詩人ジャック・プレヴェールも端役で出ていたとか。そしてジャン・ルノワールはレストランの亭主の役。ジャン・ルノワールが最初の妻カトリーヌ・エスランとの間に生まれた息子アランは、最初に橋の上から釣りをしている少年役で出演している。 また撮影監督クロード・ルノワールはジャン・ルノワールの兄で俳優のピエール・ルノワールの息子。ジャンの甥であり、オーギュスト・ルノワールの孫。 こんな撮影メンバーを観ると撮影現場そのものが「ピクニック」のような雰囲気。 そして、ジャン・ルノワール作品に観られる軽やかさや遊び心、そしてそよ吹く風の音、木々のざわつく声、陽光の暖かさ、雨足の音、川面の水の流れ、小鳥のさえずりまでもが聞こえてきそうな映像美の世界。40分という時間の中に凝縮されている。贅沢な時間だ。 ジャン・ルノワール(Jean Renoir) 1894年9月15日~1979年2月12日 印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの次男としてパリのモンマルトルに生まれる。 ジャン=リュック・ゴダールやトリュフォーなどのヌーヴェル・ヴァーグ、ロベルト・ロッセリーニやルキノ・ヴィスコンティらのネオレアリズモ、他にロバート・アルトマンやダニエル・シュミットなど、多くの映画作家に影響を与える。また、ジャック・ベッケル、ジャック・リヴェット、ヴィスコンティやロバート・アルドリッチなど、後に各国を代表する映画監督がルノワールの下で助監督を務めていた。アメリカに亡命後フランスに戻ることなく、晩年は映画を撮る機会もなくアメリカで失意の底にあったルノワールを精神面で支えていたのは、ルノワールを師と仰ぐヌーヴェル・ヴァーグの旗手フランソワ・トリュフォー監督だったという。 私が知っている彼の作品は「大いなる幻影」「フレンチ・カンカン」「ゲームの規則」と本作。 監督: ジャン・ルノワール 原作: ギイ・ド・モーパッサン 脚本: ジャン・ルノワール/ギイ・ド・モーパッサン 撮影: クロード・ルノワール 音楽: ジョセフ・コズマ 出演: シルヴィア・バタイユ ジョルジュ・ダルヌー ジャヌ・マルカン ジャック・ボレル ガブリエル・フォンタン
by mchouette
| 2008-02-20 00:00
| ■映画
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