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MAGNUM PHOTOS - EIN MYTHOS ANDERT SICH
MAGNUM PHOTOS: THE CHANGING OF A MYTH 1999年/ドイツ/89分 at:シネ・ヌーヴォ マグナムとは、似通った考えと人間性を持つ者たちの集団だ。 1947年、ロバート・キャパが発案し、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ジョージ・ロジャー、デビッド・シーモアらが創設した会員の出資により運営される写真家集団で、写真家の権利と自由を守り、主張することを目的としていた。 発案したロバート・キャパについて、沢木耕太郎氏はその著「キャパその死」で、「このままカメラマンとしてやっていくなら、自分のやり方で、自分で仕事を選びたいと思っていた。彼は『ライフ』がスタッフ・カメラマンの撮った写真のネガと権利の全てを押さえてしまったことに憤慨していた。彼は自分が撮った写真が世界中に売れることを望んでおり、その使用の仕方を自分で管理したいと望んでいた。そうした自立と管理を可能にする唯一の方法は、志を同じくする気心の知れた仲間で、しかも要求するどんな条件でも得られるほどの才能のあるカメラマンが集団を作ることだ、と彼は思っていた。」と記している。 マグナム・フォトによる、この写真家の著作権の主張は画期的なことであり、歴史的には大きな功績だろう。 マグナムに冠せられた言葉は「世界最高の写真家集団」「行動する写真家集団」 事務所をニューヨーク、パリ、ロンドン、そして東京に構え、現在約50名の写真家・フォトジャーナリスト(報道写真家)が在籍しており、その多くの会員たちは、世界最高峰の写真家たちであり、地球的規模で活躍している、といっていいだろう。 ![]() 本作は過去50年間のマグナムの足跡とその知られざる内幕に迫るドキュメンタリーとして1999年に制作され、マグナムを率いる中心会員16人のインタビュー、彼らの撮影現場、パリやニューヨークの支社、年次総会にも初めてカメラが入り撮影されている。 そして制作から10年後マグナム創立60周年を祝う2007年に、ベルリン国際映画祭で特別上映作品として上映され、賞賛をもって再評価されたという。 本作はマグナム・フォトの歴史を綴るといったものではなく、写真家としての自らの思想と対象に対するアプローチ、報道写真家の存在意義、そしてマグナムそのものの存在意義といったものが赤裸々に語られている。 「撮影する対象や人間に対し敬意をもって撮影すること。ありのままを記録すること。」 これが設立当初からマグナムの信念であり、会員に義務づけられていることだという。作為や嘘はマグナムの会員には許されない行為なのだ。 マグナムの会員達は、マグナムのこの信念を誇りをもって語っている。これがマグナムのプライドであり、半世紀を経てもなお、このポリシーを継承していることが、最高峰といわれるところでもあるのだろう。 マグナムの会員は、この信念に基づき、自らの意思で行動し、撮影する対象やアプローチについての自由は保障されている。その活動は報道写真だけでなく、コマーシャル、ポートレイト、ファッションなど多岐にわたっている。 ラリー・タウェル(Larry Towell)は、1994年にはガザ地区で空に向かって銃をかまえる子供の写真で世界報道写真大賞を受賞し、現在は、キリスト教のマイノリティな宗派の家族を数年間にわたって撮り続けている。こういう活動ができるのはマグナムの会員だからこそできる活動だと語っていた。 彼は戦場での報道写真は撮らないと語っている。戦場ではいい写真はたやすく撮れる。しかし、優れたカメラマンは戦場でなくても優れた写真は撮れるはずだと語っている。 ドノヴァン・ワイリー(Donovan Wylie)は、実績が問われるマグナムで会員を希望する写真家たちの平均年齢が35であるという中で20代という最年少で正会員となっている。彼は戦争は嫌だし従軍は苦手だが、自分自身の存在を強く感じると語っていた。モスクワや中国、チェチェンなどの取材を続ける傍ら、自らの故郷であるアイルランドを撮り続けている。 マーティン・パー(Martin Parr)は「コモンセンス」をテーマに街中の日常を取り続けている。 人々、夫人がつけている手作りのピアス、パン屋で売られているパンなどなど……。 彼は会員の申し込みをし続け、そのたびに賛成が過半数に達せず何年も入会を拒否されてきたという。 ![]() この選出は、会員全員が集まる年次総会が開かれ、会員の無記名投票で過半数の賛成によって決定される。贈られてきた写真を50名ほどの会員達がそれぞ思うままに観、一人が被っていた帽子を手に、投票用紙を集めてまわり集計し、その結果を発表するといった、きわめて内輪の集まりの、リラックスした雰囲気で行われている。 候補生、準会員そして会員になるマグナムのハードルはかなり高い。キャパが考えた「要求するどんな条件でも得られるほどの才能のあるカメラマン」が求められているのだろう。そして会員となるには協調性が判断されるそうだ。 マーティンの写真がマグナムに合わないと会員になることに反対する声もあり、数年間、会員になれなかったが、ドノヴァン・ワイリーは、彼が会員になったことはマグナムの進化だと語っている。 会員の選出などから、マグナムの将来に向けての方向と合わせて、一つの岐路にあることも見えてくる。 会員となるため写真家達から送られてくる写真が、ここ数年、似通ったものばかりだという声が年次総会の席で会員達から上ってくる。「我々が求めているのは最先端の仕事をしている写真家だ」という。 メディアの発達により、リアルタイムで世界の状況が映し出される中で、報道写真のあり方そのものの問われてきているのだろう。過去の歴史と、今、そして未来。彼らの葛藤もありのままに綴られている。 ルック・ドラエ(Luc Delahaye)は、中東からグランド・ゼロまでテロ問題の最前線をカメラに収め、その写真の構図は19世紀の歴史画や戦争写真を思わせ芸術性が高いとされている報道写真家だが、2005年に自らの信条によりマグナムを離れている。 インタビューで現在のマグナムを語る言葉に彼らの葛藤が観られる。 マグナムは大きくなりすぎた。もっと小さな集団であるべきだ。 「マグナムは大きくなりすぎた。もっと小さな集団であるべきだ。」 「神話など必要ない。どうかすると過去の写真が何度も繰り返し利用されている。」 申し込んでくる写真家達の平均年齢が35歳というマグナムの会員たちの年齢の高さもネックとなっているのだろう。 一人の会員は、「アンリ・カルティエ=ブレッソンはいまや雲の上に近いところにいるが、何かあれば下りてきてくれて助けてくれる存在だ。彼がいたことでマグナムは今まで続けてこれた。」と語り、そして最後にブレッソンが「お呼びとあればいつでも……」とにこやかな笑顔で書き記した紙をカメラに向って見せていた。 そして、創設メンバーの最後の一人だった、そのアンリ・カルティエ=ブレッソンも2004年にこの世を去った。享年95歳。 ![]() 創設会員には戦争カメラマンとして伝説とも神話的存在ともなっているロバート・キャパ、瞬間の記録という言葉で称されるアンリ・カルティエ=ブレッソンを創設会員にもつ「マグナム・フォト」。その称号を背負う重みと責任。葛藤。マグナムという集団の体質、最高峰といわれる「マグナム・フォト」ひいては報道写真家の未来を検証するという、最後はそんな重さを見せ、その重さに観終わった後もすぐに席を立てなかった。 同時に、最高峰にいる写真家達の対象に向う視線、撮影風景、写真と言うものに対する彼らの思想など、彼らの素顔に触れることができた貴重な映像でもあった。
by mchouette
| 2008-02-11 00:00
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