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The Straight Story
1999年/アメリカ・フランス/111分 ![]() 先日vivajijiさんのブログで、心惹かれる映画が紹介されてました。 デヴィッド・リンチ監督の「ストレイト・ストーリー」 物語は、73歳のアルヴィン・ストレイトというアイオワ州ローレンスに住む老人が10年間絶縁状態にあった兄が病気で倒れたという報せを受け、時速8kmのトラクターに箱をつなげた風変わりな車(↑写真)で550kmも離れた兄に約6週間かけて会いに行く物語。1994年にニューヨーク・タイムズに掲載された実話を基にしたものだそうだ。 映画の中のストレイトは腰が悪く2分と立っていられず、初期の肺気腫で、他にも循環器系にトラブルありの状態で、棺おけに片足突っ込んでいるような状態。「死」が現実味を帯びて彼の前に立っている。 老人の名前がストレイト。 どこまでも広がるとうもろこし畑の間に延びたまっすぐな道。 途中でトラブルが起きようと初志貫徹で兄に会いにいくストレイトのまっすぐな意思。 年をとると、実と殻の区別がつくようになると語るストレイトの、老いたがゆえのまっすぐな視線。 「Straight」には、いろんな意味が込められていると思う。 「老い」を描いた作品。そして、「老い」を描くということは、その後ろには、彼がそれまで生きてきた人生があるわけで、アルヴィン・ストレイトのこのロード・ムービーから紡ぎだされてくるのは、人の世の哀しみ、辛さ、淋しさ、胸にしまいこんだ苦しみ、家族に対する思い、兄弟に対する思い、人と人との触れ合い、人情、そして老いるということ……。 アルヴィン・ストレイト演じるリチャード・ファーンズワース。 そして、星が瞬く夜空。地平線を染める夕焼けの空。青く澄み切った空。稲光。どこまでも広がる草原をとことこと動くストレイト。 余分な台詞などなくても、そんな映像から、リチャード・ファーンズワースの顔や目の表情からアルヴィン・ストレイトが生きてきた人生が見えてくる。 台詞が何かを説明するのではなく、彼の語る台詞から老いたストレイトの後ろに続いている彼の人生が見えてくる。 妊娠して家族から逃げるヒッチハイクの娘。いつも車で鹿を轢いてしまう女性。トラクターのトラブルを助けてくれた親切な中年男性。ストレイトをお茶に誘う老人。ストレイトの横を軽やかに走り去っていく自転車レースの若者たち。いつも喧嘩している自動車修理の双子の兄弟。墓場で野宿する彼に話しかける神父、そして娘のローズのこと……。 自転車レースのキャンプに合流したストレイトは、「年をとって最悪なことは?」と一人の若者に聞かれ、「若かったときのことを覚えていることだよ」と答える。 老いて初めて知ること。 最後にようやく辿りついた兄の家の前。10年ぶりの兄弟の再会。 「あれで、お前は俺に会いにきたのか?」という兄の言葉。 老いて失ったもの、得たもの。老いたからこそ分かる人生。 多くを語らず、淡々と描かれていて、登場人物も、よぼよぼと歩く老人たちがやたら出てくるけれど、なぜか生きる力強さを感じ、人の世の奥深さを感じ、「生きる」ということのなかに、どれだけの思いを抱え込んで人は老いていくのか……目頭がじんわりと熱くなってくる。 ちなみに、なぜ彼がこんな風変わりな乗り物で兄に会いに行こうとしたのか…彼は目が悪いため、車の運転は出来ないし、かといって人に乗せてもらいたくなかったことと、仲違いしていた兄に、今会いに行かなければ…一番分かり合えるのは兄弟だ…そのためには、自分の力で兄に会いにいくことが大切なんだと彼は決めたからなんです。 そして一人の老人のロード・ムービーのこんな映像からも、「リンチだ!」って思わせてくれる感覚がやっぱり漂っている。語らずとも感情が伝わってくるような映像。 デヴィッド・リンチ監督の底力というか、「彼は凄い!」と思った。 リンチ53歳の作品だとか。彼も幾多の修羅場をくぐって53歳になったんでしょうね。人生の端くれがちっとは分かるような年齢にならないと、こんな一見シンプルでストレイトに見えるけど、けっして直球だけで描いていない、こんな味のある作品はつくれないでしょうね。 主役のリチャード・ファーンズワースは 本作で1999年インディペンデント・スピリット賞で主演男優賞をし、アカデミー主演男優賞、ゴールデングローブ賞 主演男優賞にもノミネートされ、また監督のデヴィッド・リンチもカンヌ国際映画祭でパルム・ドールにノミネートされた「ストレイト・ストーリー」 年末、ちょっと最近の公開映画に物足りなさを感じていた私にとって、悲しさを漂わせずとも、スクリーンで涙を流すような映像でなくとも、思わず目頭が熱くなるこんな作品を教えてくださったvivajijiことJiji姉に感謝!です。 静謐な雪の風景の映像で観終わった後、悲しいとは思わなかったのに、不意に突然、涙がこみ上げて嗚咽が止まらなかった「山の焚火」、壮絶ともいえる父と息子の物語「キャラクター」などなど……Vivajijiさんには随分といい作品を教えていただきました。 映像でこれでもかとばかりに描かなくても、台詞で説明しなくても、映像で泣かなくても、こんな風に胸に何かが広がっていき、その感動で目頭が熱くなる…そんな作品が欲しかったからでしょう。本作、ブログを読んだその日、すぐに会社の帰りにレンタルしました。 一度観ての感想ですが、何度も見返して味わいたい作品です。 でもこれも、今の私だからこそ、この作品の味の深さが素直に胸に沁みてくるんでしょうね。 監督:デヴィッド・リンチ 製作:アラン・サルド/メアリー・スウィーニー/ニール・エデルスタイン 脚本:ジョン・ローチ/メアリー・スウィーニー 撮影:フレディ・フランシス 音楽:アンジェロ・バダラメンティ 出演: リチャード・ファーンズワース シシー・スペイセク ハリー・ディーン・スタントン ジェームズ・カダー ウィリー・ハーカー エヴェレット・マッギル
by mchouette
| 2007-12-28 20:30
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