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L'AMANT
1992年/フランス・イギリス/116分 マルグリット・デュラスの自伝作品ともいえる小説の映画化。 フランス領インドシナ、サイゴン。 1920年代のインドシナを忠実に再現することにこだわったと語るジャン=ジャック・アノー監督。 時代の空気、インドシナの空気までが伝わってくるメコン川の情景。 メコン川を渡る汽船。 川べりの風景。 人々の営み。 少女の世間に挑むような視線。 中国人青年のまっすぐな視線。 ジャンヌ・モローのナレーション。 ガブリエル・ヤーレの音楽。 ショパンのワルツ。 十数年ぶりに観て、この作品がこんなに美しい映像だったのかと……。 昨日紹介のダニエル・シュミットといい、今日のジャン=ジャック・アノーといい、「描く」という、その無駄のない映像表現と構図にこだわった作品を観た後の余韻は格別。 そして、少女の、「若い」ということの残酷さと、失ったもの「愛」の存在を知った少女の痛みに泣いてしまった。 ![]() サイゴンのリセに通う貧しいフランス人の少女と、富豪な華僑の息子でパリ帰りの青年。 15歳半の少女と32歳の青年。 車の中で触れ合った指が、重なり、絡まり…少女の身体を貫いたのは愛? 肉欲? 野心? インドシナの地で白人社会から取り残された貧しいフランス人家族。少女は、男性の帽子を被ることで「私」を主張し、世間の価値観に刃向かう。少女のプライドと反骨精神。そして性に対する強い願望。権力と金に対する憧れ。自虐。家庭に対する鬱屈した思いと強い愛。醒めた眼。15歳の多感な少女の心の襞が伝わってくる。 ショロンの街の喧騒と明るさから閉ざされた密室で交わされる激しく秘めやかな二人だけの官能の時間。 お金のため? そのはずだった。 青年がお金持ちだったから愛に応えた。リムジンの座席に座った。青年の財布からだされた真新しいお札に眼が留まった。 パリの自由な空気に触れた青年にとってサイゴンの華僑の世界は檻だったのだろう。少女を連れて遠くに行きたいと願った。 こことは違う別の時間の中で、青年の愛に、性に目覚めた多感な少女が若い肉欲で応えた愛の儀式。二人には共通する未来がない「愛人」のはずだった。青年に対する愛はないはずだった。 青年が結婚式を挙げた後、家具が取り払われた何もないこの部屋で、青年が来るのを少女は何時間も待ち続けた。 インドシナを離れフランスへ引き上げる船のデッキで、少女は声を出さずに心の中で泣いた。 埠頭の倉庫の影で、黒いリムジンがひっそりと停まっていた。打ちひしがれ、じっと少女を見つめる青年が乗っているリムジン。 少女は、青年と初めて会った時のように甲板に頬杖をついて青年の乗っているリムジンをいつまでも、その姿が見えなくなってもずっと見続けていた。 ショパンのワルツが夜の船上に流れてきた時、少女は初めて声を出して泣いた…… ショロンの男を想って泣いた。 この場面では思わず泣いてしまった。 「若い」ということの残酷さ、それを思い知った少女の痛み。 相手を傷つけ、そして自らに傷つき…… 「愛」を失って知った「愛」というものの存在…… 私の人生はめまぐるしく過ぎ そして中国青年の少女に向けられたまっすぐな視線。 中国青年を演じたレオン・カーフェイの物静かな抑えた演技と少女に向けられた一途な愛。 年月が経ち、作家となった彼女の元にかかってきたかつての愛人であった青年からの電話。 「今もあなたを愛している。そしてこれからもずっと愛し続ける」 こんな言葉が、レオン・カーフェイの佇まいや漂わせる雰囲気から、とても真実味を帯びた言葉として響いてくる。 そしてエロティックなシーンであっても、少女の固い蕾のような伸びやかな肢体と、レオン・カーフェイの抑えた大人の色気が、美しい官能の世界を描き出している。 ジャン=ジャック・アノー監督は、この中国人の青年については、中国人というとカンフーかギャング役のどちらかで、アメリカで探すとアメリカ人よりアメリカナイズされていて、中国の伝統とヨーロッパの伝統を併せ持つ雰囲気を漂わせた中国人の青年役を探すのに苦労したそうだ。 チベット高原に源流を発し、中国雲南省を通り、タイ・ラオス国境線、カンボジアを通じてベトナムに抜ける大河メコン川。そのメコン川を渡る船上で出会い、そして別れがあった。中国人青年と少女の愛欲と透き通った純愛の世界。少女が味わった青春の残酷な痛み。少女の涙は私の青春の痛みにも似て重なる。 十数年ぶりにみて、あらためてジャン=ジャック・アノー監督がこだわり続けた1920年代のインドシナの時代と空気の忠実な再現、そしてデュラスの原作世界を映像で描くことにこだわった「愛人/ラマン」…堪能しました。 監督: ジャン=ジャック・アノー 製作: クロード・ベリ 原作: マルグリット・デュラス 脚本: ジェラール・ブラッシュ ジャン=ジャック・アノー 撮影: ロベール・フレース 音楽: ガブリエル・ヤーレ ナレーション: ジャンヌ・モロー 出演: ジェーン・マーチ レオン・カーフェイ メルヴィル・プポー リサ・フォークナー アルノー・ジョヴァニネッティ
by mchouette
| 2007-10-26 21:30
| ■映画
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