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LES YEUX CLAIRS
2005年/フランス/87分 at:第七藝術劇場 オフィシャル・サイト http://www.astaire.co.jp/akaruihitomi/ うまく社会に馴染めないファニーという女性の物語。 ファニーは兄夫婦と暮らしいた小さな村を飛び出し、ドイツの森で木こりの青年オスカーと出逢う。フランス語しか分からないファニーとドイツ語しか分からないオスカーは言葉が通じない。言葉も通じないふたりが、美しい自然の中で、視線を交わすことで心を通わせていく。 社会から見たら、社会に馴染めないファニーは変人扱いされるけど、ファニーから見たら、社会は欺瞞と偏見だらけの「嘘」っぱち。ファニーはきっと正直すぎるし、純粋すぎるし、きっと上っ面のおしゃべりなんて出来ない人なんだ。 「僕のパパが言ってた。ファニーは変人だって」という男の子に、「あんたのパパは人食い鬼って知ってた?今までの子供は皆食べちゃったんだ。大きなナイフ持ってるから気をつけたほうがいいよ」なんて毒づいたりなんかもする。他にも、他にも、いろいろやらかしてくれる。そのやりたくなる気持ちも、やらかすことも、とってもよくわかる。きっと、私の中でも本当はこんな風にやってやりたくなる気持ちってあるんでしょうね。だから思わず微笑んでしまう。それよりも、ファニーの苛立ちとか感じているストレスとか疎外感といったものが、彼女観ていると伝わってくる。わ~っと叫びたくなる気持を抑えているからかしら、いつも頭の中で声がして「黙れ、黙れ」ってそんな自分と闘っている。 観ている私は、すっかりファニー・モードになっている。 私をそんなファニー・モードに引きずり込んだファニーを演じているのはナタリー・ブトゥフ。 ファニーの神経に一番触るのが、優しい顔して良き妻の顔で取り繕ってる義姉の存在。ファニーは自分のことをとてもよくわかってくれて、大事にしてくれるお兄ちゃんが大好きで、二人が仲良くしていたり、比較されたりするのも嫌だったところもあるんでしょうね。浮気現場を目撃したファニーは許せなくって、言葉じゃ負けるから、義姉の後ろで束ねている髪の毛を思い切り引っ張ったりして、取っ組み合いになって、とうとう優しいお兄ちゃんが怒鳴ってしまって…… 家を飛び出して、ドイツにあるパパのお墓に行こうとする。車がエンスト起こして、通りかかった車を止めて、お墓に行きたいって言いたいけど、ドイツ国内だから言葉が通じない。で、ファニーは、ばたっと倒れて地面に寝そべって、次に土を掘るジェスチャーをして、最後に埃だらけの車体にクロスを一杯描いて……。 これがオスカーとの出会い。 オスカーもちょっと浮世離れた人っぽい。街で暮らすリズムではないかもしれない。だから森で一人で暮らしている。パパのお墓の前でオスカーを紹介して、オスカーも律儀に帽子をとって挨拶をして……こんな人。そしてファニーがパパの墓石に向かってお話をしている間、オスカーは一人遊びして、黙ってファニーを待ってくれている。 オスカーの森の家で泊めてもらうことにしたファニー。森で木を切るオスカーの周りをファニーはぐるぐる回ったり体操したり、そんなファニーをオスカーは当たり前に受け止める。黙ってみているだけ。 言葉が通じないから、二人の交わす台詞はない。オスカーの醸し出す雰囲気と森の自然がファニーのリズムに合っているんでしょうね。村にいた時はいつも苛立って上手く弾けなかったファニーが、オスカーの家にあったピアノを弾いたときは、とても伸びやかに弾いていた。それを黙って見つめるオスカー。オスカーの眼差しって、とても優しくて哲学的(どんなんや?この眼差しがなかなか良かった)。オスカー演じたラルス・ルドルフは、もともとは前衛ミュージシャンで、今でもバンド活動はしているみたい。ちょっと宇宙人的な雰囲気の人で気に入った。 布で覆われたピアノを見つけたファニーは、布が外せないから布にもぐりこんでピアノを弾く。 ファニーってとても柔軟で自由な発想ができて、それに身体がすぐ反応できる人なのかもしれない。 台詞がない二人の姿をカメラは長回しで撮っているけど、台詞がなくっても映像から二人が伝わってくる。ファニーとオスカーが黙って森を歩くシーンなんかも、言葉が無くてもポエムがあるって感じでとってもいいんです。二人が初めてキスするとこなんかも、とっても自然で、この雰囲気はとっても好きなシーン。 ファニーのいわゆる「ダサ可愛い」ファッションとか、色とりどりの椅子とか、オスカーの森の家も造りものめいた浮いた感じがしなくって、全体に流れる飄々とした空気といい、それでいて映像に細やかな感性が感じられる。ジェローム・ボネル監督はなかなかのセンスを持った映像作家だと思う。 映画のオフィシャル・サイトにあったコピー使わせてもらおう。(少しニュアンスが違うけど…) みにくいアヒルの子が、森でクマさんに出逢い、美しい白鳥となって飛び立とうとしている…… こんなお伽話は好きだわ。 この写真の松葉杖突いている男性はオスカーではありません。通りかかったファニーが椅子を運ぶのを手伝ってあげている場面。こんなに椅子を担ぐシーンがまた傑作。こんなファニーも好きだわ!この色と映像のセンス! 監督: ジェローム・ボネル 製作: ルネ・クライトマン 製作総指揮: ベルナール・ブーイ 脚本: ジェローム・ボネル 撮影: パスカル・ラグリフール 出演: ナタリー・ブトゥフ (ファニー) マルク・シッティ (ガブリエル) ジュディット・レミー (セシル) ラルス・ルドルフ (オスカー) オリヴィエ・ラブルダン ポーレット・デュボスト エリック・ボニカット アガト・ドゥロンヌ
by mchouette
| 2007-10-18 00:00
| ■映画
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