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三峽好人(STILL LIFE)
2006年/中国/113分 at:テアトル梅田 ジャ・ジャンクー監督作品は、前作「世界」についで2作目。 「世界」は、中国の北京郊外に実在するテーマパーク「世界公園」を舞台にした物語。ダンサーとして世界各国の衣装を身につけて、世界公園の中にある様々な国を回るけれど、彼女達の人生は、その公園から一歩も出ることがない、そんな若い彼女たちの人生模様を描き出したドラマ。経済発展が著しい中国の華やかな虚構の世界の中に生きる彼女達の実態を描いたのだろうけれど、彼女達の抱えている問題や彼女達の心情が胸に伝わってこず、頭で理解しながら見ていて、上映時間中かなり辛いところがあった。 本作「長江哀歌」の舞台となっている「長江」は中国大陸最長の川であり、黄河文明と並ぶ長江文明の発祥の地。「悠久」という言葉からくる風景に魅かれたこと、長江流域で進行中の三峡ダム建設による街の水没をテーマに、ジャ・ジャンクーがどのような物語を描いたのだろうか、そして本作がベネチア国際映画祭で審査員全員がすぐさま金獅子賞に選んだということ、そんなことから、いささかの期待を持って劇場まで足を運んだ。 ![]() 本作も、完成すれば世界最大の水力発電ダムとなる、三峡ダムという中国の国益として重要なプロジェクトが進行する中で、市井に生きる人たちは、そこから弾き出され、あるいは埋もれていくその現実、それでも続いていく人々の営みを描いたのだろう。 ダム建設は、長江流域の住民110万人の強制移転、長江文明の遺跡、名勝旧跡の水没、更には水質汚染や生態系への悪影響など、ダム建設に伴う問題も指摘されているという。 「2000年の歴史が2年で消えていく。ひどいことだよな」劇中で一人の男がダム建設について語る場面がある。監督の伝えたい思いなのだろう。 山西省から、一人の男が16年前に別れたきりの妻子に会いに、妻が住む長江流域のこの町に着いた。けれど町はすでに水没し跡形もなかった。長江流域の奉節の街に住み、住民移住で不要になった建物の解体作業をしながら妻子を探すことにした男だったが、妻とは売買結婚であることがわかる。会話の中に出てくるので中国ではそれほど特異なことではないのだろうか。居所の分かった妻を尋ねると、彼女は兄の借金のかたに男に囲われており、連れ帰るなら借金を返せといわれる。1年の猶予をもらった男は、危険だが収入のいい炭鉱の仕事に就くため山西省に戻ることに。解体作業の仲間たちも収入のいい炭鉱の仕事に就くため、おそらく男と一緒に長江を去るのだろう。 もう一つの物語。山峡の工場に働きにきたまま連絡の途絶えた夫を尋ねて一人の女性がこの町に来た。夫はすでに工場をやめ荷物だけ残っているという。夫の新しい職場はダム建設関連で、その女性経営者と関係のあることが分かった。そして夫が経営しているというダンスホールに行く。ダンスなど知らなかった夫なのに…。気晴らしだと、慰める夫の友人に、好きなことをしているだけだわと、吐き捨てるようにつぶやく。翌日、夫と再会した妻は、好きな人ができたと嘘をつき、一人長江を去る。自分から離れ新しい人生を生きている夫に対する精一杯の意地だろうか、それとも、運命と思い定めた末の嘘なのだろうか……。 ダム建設によって長江流域は急激に変化し、一部のものは冨を手にしたが、山西省からきた男も、男の妻も、そして男が長江のこの町で出会った人たちも、その日暮らしといっていいほどの貧しさにある。 町が水没して行き所の無い者たちの船上生活。住民撤去により無人になったアパートの爆破。かつては多くの人々がそこで日々の営みを紡いでいたことだろう。水没の運命にある遺跡発掘現場。ダム建設の大橋の建設で成金になった男。自慢げに大橋を点灯させる。2000年の悠久の古代文明が息づく長江に、突然、現代が浮かび上がるかのように点灯されくっきりと浮かび上がる大橋。解体現場で瓦礫に埋もれ命を落とした者。 オリッピック開催も控え、巨大ダムが建設され、中国の経済発展の中で、確実に取り残されていくであろう人々。そして、そんな彼らの横を長江の悠久の流れは変わらない。 一つの巨大なダム建設と、市井に生きる一人ひとりの人生ドラマ。ダムの巨大さと比べると、取るに足らないであろう人々であるけれど、その日の糧を求め、ひとときの安らぎを求め、それぞれに幸福を求め、日々を生きている。 物語は、古来より中国人に欠かせない4つの品をタイトルにした「烟(たばこ)・酒・茶・糖」の4つのパートで語られている。これら4つは人々に喜びと幸福をもたらす品だそうだ。 夫の荷物にあったお茶の葉をコップに入れみつめる女。 妻の兄に土産の酒を差し出す男。 炭鉱に戻る前の夜、タバコを1本ずつ仲間に配る男。男たちがタバコを吸うシーン、タバコの火をつけるシーンなどがよく登場する。 ただ、映像から監督のいう「人々に喜びと幸福をもたらす」ということが結びつかず、パンフレットを読んで物語が4つのパートで語られて、それぞれのタイトルを意味することを知ったというお粗末。 言葉で本作を語れば以上のようになるだろうけど、今回も私が鈍感なのだろうか、映像からしんしんと胸に伝わってはこず、頭で導きだした感想に近い。文化とか生活感覚の違いからくるのだろうか。冒頭から、悠久のリズムのようなゆったりとしたテンポで、一人の男を船の上からずっとカメラが追いかけていく長回しの映像は、眠気を誘い辛いところがあった。その前に同じ劇場で上映されている「キャンディ」を観た後の本作の鑑賞のせいかも知れないが……。 とはいえ、長江を背景にした映像は山水画のような味わいのあるものだった。 中国の悠久の歴史を感じさせる長江の景色。窓枠を額縁のように効果的に使い、長江のたゆとうような自然の風景を背景に男と女を映し出す。そして炭鉱に戻る男の背後に、高いビルとビルの間の張られた綱の上をゆっくりと歩く男の姿。このラストの綱渡りの映像に監督の思いが託されているのだろう。とても印象深い映像だった。 人の営みとは、こんなか細い綱を歩き、一歩踏み外せば命を失う、そう受け止めることもできるだろけれど、私は、それよりも、精力的な経済活動のなかで中国は急速な発展を遂げていくだろうけれど、人々の営みとは、細々ではあるが、綱の上を歩く男の歩みのように、時代がどれほど急激に変わろうとも、悠久の昔より変わらない長江の静かなゆったりとした流れのように、一歩一歩ゆっくりと流れ、前に進んでいく……そんな風に受け止めた。 男は16年かかって妻子に会いにやってきて、そして男はまた何年もかけて借金返済の金を稼ぐのだろう。 詩的な映像。 ジャ・ジャンクー監督の作品は、ストーリーを辿るというより、散文で語られた映像を感受する作品なのだろう。 残念ながら一度の鑑賞ではジャ・ジャンクー監督の描いた、長江をテーマにした、詩的な映像世界を味わうところまでは至らなかった。その映像に、胸に沁み通るもの、なにかしら引き寄せられるもの、そういうものが感じられれば、そこから作品に入っていけたのだろうけれど、今回も頭で見たという印象が強い。心に響くものがあれば、ラストの綱渡りのシーンにもっと静かな感動を覚えたことだろうと思う。 監督: ジャ・ジャンクー 脚本: ジャ・ジャンクー 撮影: ユー・リクウァイ 音楽: リン・チャン 出演: チャオ・タオ シェン・ホン ハン・サンミン ハン・サンミン ワン・ホンウェイ ワン・トンミン リー・チュウビン グォ・ビン マー・リーチェン ヤオメイ チョウ・リン マーク ホァン・ヨン 歌う少年
by mchouette
| 2007-10-09 00:00
| ■映画
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