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1999年/スペイン/95分
監督:ホセ・ルイス・クエルダ 出演: フェルナンド・フェルナン・ゴメス マヌエル・ロサノ ウシア・ブランコ アレクシス・デ・ロス・サントス ゴンサロ・ウリアルテ タマル・ノバス 自国民同士が闘いあう内戦の悲劇というものをテーマにした作品は多い。 最近作では、アイルランド紛争を描いたケン・ローチの「麦の穂を揺らす風」では兄弟が敵味方に分かれ、親しかった友をこの手で殺さねばならないという悲劇があった。いまも世界のあちこちで出口のみえない戦争が続いている。生まれたときから戦場で、戦争しか世界を知らない子供たちも…… 本作「蝶の舌」は1936年、スペイン、ガリシア地方の小さな村を舞台にスペイン内戦の悲劇をテーマに描かれた物語。 喘息のせいで、1年遅れで小学校に入学したモンチョは、学校に行くのが怖くて仕方がなかったけれど、担任のグレゴリオ先生は勉強ばかりでなく、自然の神秘も教えてくれ、休みになるとモンチョは先生と一緒に森に出かけるのが楽しみだった。モンチョの家族もそんなグレゴリオ先生を信頼し、洋服屋を営んでいるモンチョの父親は先生にスーツを仕立ててプレゼントする。平和で穏やかな日々。そして垣間見る大人たちの世界。哀しみ。小さな初恋……。 けれど、1936年の冬の終わりから夏の始まりにかけてのこの季節は、人民戦線派が総選挙で勝利し、労働者階級や自由主義者たちの台頭を恐れた特権階級(地主や教会、資本家)が軍部にはたらき掛け、それぞれの地域で独自のクーデターへの準備を始めていた時期でもある。大人たちの間に広がる不穏な空気。対立する大人たち。 そしてクーデター勃発。 ファシズムが村人たちを分断する。広場に集まった群集の前に、両手を縛られた共和派の人々が一人づつ姿をあらわす。昨日までは隣人として親しくしていた人々。そしてその中にはグレゴリオ先生の姿もあった。「アテオ! (不信心者)アカ! 犯罪者!」彼らを罵る声が飛び交う。躊躇っていたモンチョの両親も必死に叫ぶ。ファシスト達を恐れているのだ。叫ばなければ仲間と思われてしまう。「お前も叫ぶのよ」モンチョにお母さんがいう。じっと先生を見つめるモンチョ。先生もモンチョをみつめる。モンチョも叫んだ「アテオ! アカ!」。車が走り出すとモンチョはお母さんの手を振り切って駆け出し、石を拾いあげ遠ざかって行く先生を必死で追いかける。石を投げながらモンチョが叫ぶ。 「ティロノリンコ! 蝶の舌!」 モンチョの怒ったような、睨みつけるような表情がいつまでも目に焼きついて離れないラストシーン…。不条理というにはあまりにも残酷な現実。 グレゴリオ先生が僕に教えてくれた「蝶の舌」。 「蝶の舌は、今は隠れていて見えないけれど蜜を吸う時に巻いていた舌を伸ばすんだよ」。 本を読みなさいといって僕に本をくれたグレゴリオ先生。 原作者マヌエル・リバスは語っている 「本は我が家と同じだ。読めば心が豊かになり、安らげる。凍え死ぬこともない」 そして、教壇を去る時にグレゴリオ先生が僕たちに言った言葉「自由に飛び立ちなさい!」 昨日紹介した「夜よ、こんにちは」よりも、モンチョ少年が最後に叫んだ「ティロノリンコ! 蝶の舌!」この言葉とモンチョのあの表情に、ルーカス・ムーディソン監督のこの時代の悲劇、不条理な時代に対する強いメッセージと熱い思いが胸に響いてくる。 音楽を「オープン・ユア・アイズ」「アザーズ」の監督でもあるアレハンドロ・アメナーバルが担当しているのも興味深い。
by mchouette
| 2007-10-06 00:00
| ■映画
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