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ミヒャエル・ハネケの日本未公開作品。 英原題「CODE UNKNOWN」 2000年/フランス・ドイツ・ルーマニア/113分 直訳すると「未知」と訳せるだろうか。 冒頭クレジットと本編の間に差し挟まれた映像。 一人の少女がジェスチャーで何かを伝えようとしている。その様子をじっと観ている子供たち。「一人ぼっち」「心のやましさ」「ギャング」「かくれんぼ」「悲しみ」「刑務所」。。少女の仕草をみた子供たちが手話で答えている。聾唖の子供たちだ。子供たちの答えはみんなバラバラで、そのどれもが少女が伝えたい内容とは違う。最後クレジットの後でも一人の少年のジェスチャーが映されている。少女の仕草に関心を持つところ、受け止め方が子供たちによって、それぞれ違うのだろう。少女が身をひそめる動作に、ある子供は怯え、ある子供は悲しみ、ある子供は囚われと捉える。 これが、本作の隠されたテーマだろう。 いろんな意味が隠されているし、いろんな風に解釈できる……。 そして本編冒頭……こんな言葉で始まる。 「いくつかの旅の未完の物語」 女優を仕事にしているアンヌが暮らすパリのとある街角。 アパートから出てきたアンヌを一人の少年が声をかける。少年は、アンヌが同棲している恋人で報道カメラマンのジョルジュの弟ジャン。田舎で父親と二人暮しのジャンは農業を嫌って家出してきたという。用事で時間がないアンヌはジャンに部屋の鍵を渡し、3人で暮らすのは無理だと釘をジャンに刺す。ムシャクシャしたジャンは道端で物乞いをする女性の膝に紙屑を投げ捨てる。それをみた一人の黒人青年がジャンを呼び止め注意するが、逆にジャンは青年に食って掛かり掴み合いの騒ぎになる。騒ぎにアンヌも戻ってきてジャンを止め、警官までやってくる騒動になる。騒ぎの張本人として黒人青年は警察に連行され、物乞いの女性は不法入国者として強制送還させられてしまう………。 こんな場面から始まる本作は、女優をしているアンヌ、報道カメラマンのジョルジュ、黒人青年、強制送還させられた女性、黒人のタクシー運転手、黒人青年の母、ジョルジュ、ジョルジュとジャンの父親たちが登場するが、群像劇ではなく、それぞれの日常生活の断片を、なんの説明もなく、淡々とドキュメンタリータッチで描き、1~2分の短い映像で、なんの繋がりも持たず、つなぎ合わせただけの映像で構成されている。 けれど、その映像から、彼らの生活の表層から、隠された感情、知らなかった一面、見えなかっものが見えてくる。そして、都市と農村、資本主義社会の歪、難民、不法入国者、人種差別、偏見、幼児虐待、コソボ紛争の悲劇といった、彼らの日常生活に横たわる社会に潜む闇、彼らが抱えるさまざまな状況、問題がくっきりと浮かび上ってくる。映像からハネケは無言で常に発信し続けている。それが緊張感として映像に漂う。見るものをその映像に引きずり込む。この巧みな演出手腕、緻密は脚本はさすがといえる。 そしてラスト…… アンヌは急ぎ足で歩き、強制送還された女性は再びパリに戻り自分の居場所を探して街を歩く…。彼らの姿は日常の街の風景の一つ。見慣れた光景。そこからは何も見えない……。 「現代社会が抱える闇とそこに生きる我々」ミヒャエル・ハネケの一貫した作品テーマである。 本作は日本でも劇場公開された「ファニー・ゲーム」の後に製作された作品で、ハネケ監督にとっては初のフランス語作品で、その後に続く「ピアニスト」「隠された記憶」などフランス映画界における新境地の原点ともいえる作品。CS放映で昨年に一度、今月に再度観た。日本で劇場公開された作品と比較するとインパクトはないけれど、ハネケ作品の面白さが凝縮された作品だと言っても過言ではないと思う。日本での劇場未公開は惜しい。DVD発売されているようだ。 そして本作で特筆すべきは、見事な演技を見せたアンヌ役のジュリエット・ビノシュだろう。 女優という設定で、彼女の仕事の一場面も映像で映し出される。少なくとも3つの全く異なる芝居の、異なる役柄。リハーサル風景、音入れ、本番。それぞれの異なるシーンで見せる異なる顔。そして普段の彼女…アパートでアイロンかけをするアンヌの耳に聞こえる幼児虐待を思わせる物音。ジョルジュと言い争い甘えるアンヌ。ジョルジュや友人たちと食事をしているアンヌ。電車の中で不良に付きまとわれるアンヌ。 ハネケは本作でのビノシュの繊細な演技を高く評価し「隠された記憶」で彼女を起用したとのこと。 2000年 カンヌ国際映画祭 エキュメニック賞受賞作品 2001年 第23回ぴあフィルムフェスティバル 招待作品 ミヒャエル・ハネケのプロフィールをみてみると…… 監督:ミヒャエル・ハネケ 製作:マラン・カルミッツ/アラン・サルド 製作総指揮:イヴォン・クレン 脚本:ミヒャエル・ハネケ 撮影:ユルゲン・ユルゲス 出演: ジュリエット・ビノシュ ティエリー・ヌーヴィック ヨーゼフ・ビアビヒラー アレクサンドル・ハミド
by mchouette
| 2007-09-28 19:55
| ■映画
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