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監督:ジャック・ジャンセン 字幕監修:重信メイ 本作は、アップリンク創立20周年記念イベントとして、世界の異なる文化的バックグラウンドを持った音楽に関するドキュメンタリーを上映する映画祭「第1回ミュージック・ドク・フェス」(2007年1/27~2/23)の1本です。大阪でもシネ・ヌーヴォーで上映されましたが、その時は他の映画と重なって見逃したのですが、先日リスペクト上映され観ることができました。 アップリンクのサイトです。 http://www.uplink.co.jp/top.php かつては「中東のパリ」と呼ばれ、アラブ世界の商業と観光の主要な中心地として栄えた港町ベイルート。 1975年、レバノンで内戦が勃発すると、首都ベイルートはイスラム教徒の西部(ベイルートの大部分)とキリスト教徒の東部に分断されてしまった。 レバノン人の歌手ファイルーズは、そんなアラブ世界で国境、世代、宗派を超えて広く人々から愛されている「歌姫」。彼女は1975年から15年間続いた内戦の間もレバノンの首都ベイルートに留まり歌い続けていたという。 本作は、そんな彼女と彼女の歌を愛する人たちの声、そしてベイルートの人々をカメラに収めたドキュメンタリーです。 彼女の歌は私自身だ。 彼らが愛するファイルーズは、スターという華やかな存在ではなく、神のように自分の傍らにいて、敬虔なる存在としてあるようだ。彼女の歌、彼女の生き方に、人々は、自分自身を重ね合わせ、アラブ世界に対する悲痛な願いを託し、そして希望の光を見出しているかのようだ。 そして、ファイルーズの歌に思いを託し、内戦後の激動するレバノンに対する彼らの切々たる思いも語られている。 彼女の歌う歌は「祖国への思いと恋人への思いを重ね合わ、中東情勢に対する国民の感情の多くを、一見ラブソングかと思わせるような歌詞の中に見事に取り入れている」と本作の日本語字幕監修に携わったジャーナリスト重信メイは映画資料で語っている。 ……内戦前のこの国は本当に美しく、人々も純粋だった。自己犠牲の精神があった。今はご都合主義に満ちている。と語るタクシーの運転手。 ……この国の大地には血が沁みこんでいる。だから私は自分のポリシーに従って戦う。武器を持たずとも行動で示す。妥協はしないし、決して諦めない。私が願うのはパレスチナの解放だ。 彼は医者だが医療活動ができない状態にあるという。 ……内戦前はいろんな宗派の人がいたけど、誰もそんなことは口にしなかった。今の若い子たちをみていると宗派が彼らの価値基準になっている。まず出身地を探り、どの宗派に属しているか。違う宗派とは付き合わない。そんな若者を見ていると次の世代が心配だ。と大学生の娘をもつ女性は語る。彼女は、ファイルーズの歌は自分そのものだと語っていた。 ……内戦で一瞬にして全てが破壊された。そしてこの国は美しさも道徳も愛も失ってしまった。初老の婦人は語っていた。彼女は内戦の爆撃で宝物だったファイルーズの写真もレコードも全て失ってしまったそうだ。 ……国境付近では国際法で禁止されている爆弾が使われていた。そこで僕の友人も数人殉教した。そう語る10代の若者。 祖国を守る、祖国を離れないと彼らは言う。 その一方で、カナダへの移住手続きをとっているという4人の子供をもつ男性は語る。 ……この国に一秒たりともいたくない。今すぐこの国から出られるなら何も要らない。 この国が出られないなら私は自殺する。 傍らで妻は苦渋の表情をしている。祖国を棄てることの苦痛だろうか。それとも自分たちの置かれた苦渋の現実に対する絶望だろうか。家族の顔には重苦しい空気が漂っていた映像だった。 祖国に残り祖国を守るという人、祖国に絶望し脱出しようとする人。 それぞれの意思に従った選択だろう。 自分の立場、意思を明確に持って、祖国について語る彼らが印象的だった。自分の言葉で語っている。 いつ終わるとも知れないアラブ諸国の内戦状態で、死と隣り合わせに生きる彼らは、自分の考えをしっかり持っていないと、知らない間に大きなうねりに飲み込まれてしまうことも激動の歴史の中で身に沁みているのだろう。 そんな彼らをみて、私も含め、日本人だったら……とやはり思ってしまう。 ファイルーズを愛し、彼女の歌を愛する彼らは、その社会的階級、宗派、政党はみんな異なる人たちだそうだ。 けれど、ファイルーズを語り、祖国を語る彼らの言葉にそんな違いは感じられない。 彼らの思いは同じように思う。 どこで分かれてしまったのだろうか。 「内戦前はいろんな宗派の人がいたけど、誰もそんなことは口にしなかった。」と語る女性の言葉が、内戦によって失われたものの大きさを感じる。 最後に、ステージで歌うファイルーズの映像があった。 内から滲み出るような重みを持った歌声とマイクに向かってまっすぐに立つ彼女の姿が印象的だった。 彼女の活動は、1957年にパールベック国際芸術祭で初ステージから始まり、中東諸国の遺跡でコンサートを行なう一方で、世界中でコンサート活動をしながら、世界中のいろんな都市に住むアラブの移民者たちの支援をしてきたという。現在もなお歌い続けている。 現在、内戦後の経済復興を進めるレバノン政府は、ベイルートを再び観光地として売り出す計画を進めているそうだ……。 <画像掲載についてはアップリンク承諾>
by mchouette
| 2007-08-21 09:35
| ■映画
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