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HARD CANDY 2005年/アメリカ/103分/ R-15 やっと観れた。 劇場公開を見逃して以来、ずっと気になっていた作品。 夏休みにお家CINEMAで見た作品。こんなに緊張を強いる作品は、暑い夏にはすこぶる気持ちがいい。夢見るラブストーリーより、やっぱりこんな辛口のギリギリくる映画が好きだな! ハードキャンディー(HARD CANDY) 赤ずきんが仕掛けるオオカミへのゲーム 出会い系サイトで知り合ったヘイリーとジェフ。ヘイリーは14才の女の子。ジェフは32才のカメラマン。3週間の間、二人はネットでお互いのことを話し、ついに実際に会う約束をする。待ち合わせのカフェで初めて会う二人。そしてヘイリーの自宅へと向う…… 作品情報によると「赤ずきん」をモチーフとした作品で、日本の女子高生によるオヤジ狩りのニュースに着想を得て製作されたとのこと。 監督はミュージック・クリップで活躍してきたデイヴィッド・スレイド。 脚本はブライアン・ネルソン。本作が映画脚本デビューとのこと。 これは監督デイヴィッド・スレイドの演出とブライアン・ネルソンの脚本の見事な結晶といえる。 低予算で、わずか18日間で撮った作品だそうだ。 2005年サンダンス映画祭上映作品。 本作の監督デイヴィッド・スレイド 密室劇。男と少女の交わす会話で物語が進行していく。 会話の一つ一つが裏バージョンを含んだクセありセリフ。そして言葉の駆け引き。言葉を巧みに操り、言葉で追い詰めていく。これはブライアン・ネルソンの脚本の上手さだろう。耳と目はずっとテンションあがったまんまで画面に見入ってしまう。 ジェフと会話するヘンリーのセリフには「心理学、行動科学、犯罪学の知識と話術を用いて、犯人と直接的に交渉・折衝を行い、犯人の精神状態や現場の状況についての情報を収集し、事件を平和的に解決するように導くことが任務とされている」ネゴシエーターを見るようだ。本作の向う方向は解決ではなく破滅ではあるけれど……。 思い出すのはケヴィン・スペイシーとサミュエル・L・ジャクソンの「交渉人」(1998)。会話の駆け引き、巧みに言葉を操るということでは本作「ハードキャンディ」の方がはるかに面白い。 共感したかと思うと、サラリと交わす。その戸惑いが男を更に恐怖へと駆り立てる。衝かれたら別の切り口で突きかえす。奈落の底へ落とすと見せかけてひょいと救う。 これは、もう1秒たりとも目が離せない。 さらに「ゴッド・アンド・モンスター」(1998)を思い出す。この作品もイアン・マッケラン扮するゲイの老監督とブレンダン・フレイザー演ずる若い庭師の二人の会話だけで物語が進行していき、二人の人間の心理の絡みを描き、観るものを映像に惹きつける。 本作でも同じような手ごたえを感じる。さらに男の恐怖が加わる映像だった。 いろんなテーマをもつ映画だと思う。 内容は性犯罪を扱っているけれど、あらゆる情報がネット上で氾濫し、あらゆるものがイージーで希薄になっている現代社会に警告を発する映画でもあると思う。 誰でもどんな人物にもなれる。何が本当なのか、どこまで信用できるのか分からない。そんなネット上で繰り広げられる欺瞞の世界、架空の仮想の関係。 「いろんなハンドルネームであなたに近づいたわ」 「無名のアーティストなんかやけに詳しいの。でも返事は数分たってから。ネットで調べたのね。あなたの感想はアマゾン.comと同じなのよ」 14歳の少女でも、男のスケベ心を逆手にとって、男を襲うことができるということ。 殺人は肉体的殺人でなくても精神的に殺すことができるということ。 仰向けで股間剥き出しのこの姿勢は、見ている男性にとっては、さぞや身が縮む思いだろうと思う。男のシンボルともいうべきものがこんな風に晒されるのは、男にとっては最も弱い姿だろう。男の強さをシンボライズするものは、男の一番の弱点でもあるんだろう。 でも、女である私は、女のこんな姿を映画でも幾度となく見せつけられている。歴史の中で、どれだけの女が、どれだけの陵辱と恐怖と哀しみを味わってきたことか…。 男のこんな姿に憐れみと痛みを感じる一方で、思わず過激に思ってしまった。 タマの一つや二つ取られたってどうってことないよ。 男たちよ、わかったか! ヘイリーはジェフに怒りを顕わにする。 「誘惑されたって! 子供の誘いなんか、大人だったらシカトすればいいでしょ!」 「子供! 少女に大人の女と同じことができると思う?!」 これは男にとっては単純に恐怖を感じる作品だと思う。 「危険な情事」(1987)という映画があって、その時に「これをみて男性は浮気をするのが怖くなったことだろう」なんて言われたけど、最後に死んだと思ったグレン・クローズががばっと起き上がった時には、サスペンスを通り過ぎてホラー映画観てるみたいで、私は思わず笑ってしまった。 しかし本作は、言葉で男をぎりぎりの、もう2者択一しか判断できない状況にまで心理的に追い詰めていく。ここに至るまでの男の精神的ダメージは見ている側は十分に了解できるので真に迫ってくる。103分間、見るものを説得させた演出は見事と思う。 ジェフの部屋の赤がさらに心理的効果を挙げ、印象的だったこともつけ加えたい。 まったく、最後まで眼が離せなかった。 何本か過去の作品を挙げているけれど、本作が面白いってことを伝えたかったから。 人間心理をついた作品。価値観とか常識なんて、捉え方、見方一つで覆る。男と女、大人と子供。観る人の視点によって見方が随分違うだろうと思う。 14歳ヘイリー役を演じたエレン・ペイジの演技が見事だった。撮影当時は17歳であったという。 ジェフと喫茶店で出会ったときは、ケーキをほおばり、頭がよくって、でもすこし大人ぶって精一杯背伸びして、すこし不安げな様子もチラチラ覗いている女の子風。 ジェフの身体の自由を奪い、ジェフの本性を暴いていこうとする時の彼女の演技はまた見事。哀れみ、怒り、共感、誘惑。あらゆる表情と長セリフで、ジェフをじわりじわりと追いつめる。 そして、こんな憐れな男ジェフを見事に演じたのが、映画「オペラ座の怪人」(2004)で見事な美声を披露してくれたパトリック・ウィルソン。この時は優しいだけの伯爵で、結局愛する女性とは添い遂げたものの彼女の心はジェラルド・バトラー演じるロッカー野郎「ファントム」の虜になったままという、すこし弱いキャラで、あまり魅力も感じなかったけど、本作と、そして大阪で今週末から公開の「リトルチルドレン」でケイトウィンスレットと不倫する関係になる男性を演じる。ちょっと注目してみたい役者。 「オペラ座の怪人」のパトリック・ウィルソン 監督: デヴィッド・スレイド 製作: マイケル・コールドウェル デヴィッド・ヒギンス リチャード・ハットン ジョディ・パットン 製作総指揮: ポール・G・アレン ローザンヌ・コーレンバーグ 脚本:ブライアン・ネルソン 撮影:ジョー・ウィレムズ プロダクションデザイン:ジェレミー・リード 衣装デザイン:ジェニファー・ジョンソン 編集:アート・ジョーンズ 音楽:ハリー・エスコット/ モリー・ナイマン 出演: パトリック・ウィルソン ジェフ エレン・ペイジ ヘイリー サンドラ・オー ジェニファー・ホームズ ギルバート・ジョン
by mchouette
| 2007-08-17 00:00
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