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![]() LE CHIAVI DI CASA 2006年/イタリア・フランス・ドイツ/111分 どうして、この映画を劇場で見なかったのだろう。静かに深く胸を刻み込まれる作品だ。 ミュンヘンからベルリン、そしてノルウェイの海辺の町へ、 15年の空白を経て出会った父と息子が辿る 心の旅路 こんな映画のコピーに「障害をもったわが子と15年ぶりに再会した男が、息子との愛に目覚める」お涙頂戴を感じてしまったのだろう。痛い映画は好きだが、泣かせる映画は嫌いな私は劇場公開時は何度か本作のポスターを目にしていたが結局見なかった。 若き日、出産で恋人を失った衝撃から、生まれてきた我が子も見ようともせず手放してしまった青年ジャンニ。15年の空白を経て、障害を持った息子パオロと出会った彼は、パオロをミュンヘンからベルリンのリハビリ施設に送り届けることになった……。ふつふつと胸の底から過去の自分が浮かび上がってきたことだろう。痛みを感じながら蓋をして見ようとしなかった過去と、そして突きつけられた過去から繋がっている現実の重さ。 ![]() 障害を負った息子パオロを演じたアンドレア・ロッシ16歳は本作が映画デビュー。 彼自身が障害を持っており、ローマ生まれの、ローマ育ち。水泳選手で、彼のカテゴリーのチャンピオンで、パオロ役のただ一人の候補者として水泳の競技会で助監督が見つけたとのこと。 彼がじっと見つめる視線に、向き合ったものの、そして自分自身の悲しみ、不安といった心の闇を見つめるような豊かな感受性を感じさせる。いい目をしている。 ![]() 「母親にあてがわれた汚れ仕事よ。父親にはできない。何かと口実を見つけては逃げてしまう。娘に近づけなかったし、触れもしなかった。娘を傷つけるのが恐いと…」 彼女の言葉は、ジャンニには鋭いナイフのように突き刺さったことだろう。 「元気に遊ぶ子供たちの姿を妬ましいと思う私を恥じとは思わない」…挫けそうになる自分を、逆説的ともとれるこんな言葉で、必死で自分を支えている彼女の姿が見えてきて痛い。 「娘が絶望的な目で私を見る。死んでくれれば、と思う」口にできない彼女の悲痛な心の言葉。じっと相手を見詰め、言葉よりも多くを物語る無言に近いランプリングの見せる表情。素晴らしいの一言です、本作のシャーロット・ランプリングは(も…かな?)。 ![]() 自分が棄てた息子と15年前の自分の過去の償いから始まったジャンニと息子パオロの戸惑いながらの二人で歩く時間。 そんなジャンニにニコールは見透かしたかのように言う「夫と同じ目で彼を見ている。おどおどして不安げで、他人への迷惑を恥じているような……」 杖の代わりになって掴まる手が必要な障害を持つ者。 その手がいつ引っ込められるのか…。ずっと握り締めてくれる手なの?…、本当にこの手でいいの?…生れたときに一人ぼっちだったパオロは、心の不安を語るように車のクラクションを鳴らし続ける。「遅いから家に帰らなければ…」自分の家を求めるパオロ。 「一緒にいたいと思うなら苦しむ覚悟が必要よ」ニコールの言葉が重い。 車を停め、思わず外へ出るジャンニ。 ジャンニの腕に支えられて一緒に歩く父と息子。 「ぼくがそばにいるよ。泣くのはナシだよ」ジャンニをパパと呼ぶパオロ。 握り締める手を求めているのは、障害をもつわが子よりも親の方なのかも知れない。 15年間一度もわが子を見なかった父親と、生まれたときに愛してくれる人がいない一人ぼっちだった息子の、おそるおそる近づいていく、そんな二人の心のロード・ムービー。 ![]() そして、忘れてはならないのが、15年間、彼を育ててきた、パオロの母であった女性の姉とその夫。特に夫のアンドレアとパオロの関係も15年間の重みをみせている。 パオロの症状について、奇跡が生まれるかも知れないから実の父親に会わせるように、医師から言われ、ジャンニにパオロを託す。彼にとっては無念な辛い選択だったろう。血なのだろうか。我が子と思っていても、パオロの胸の内にはアンドレアは叔父であり仮のパパでしかないのだろうか。汽車から降りる時のアンドレアの表情も忘れ難い。 ジャンニの前で幾度となくパオロが口にするアンドレアの名前「アンドレアだったら…、アンドレアは…」 パオロにとっては、「アンドレア」は、自分をしっかりと受け止めてくれる大樹のような存在だったのだろう。ジャンニはアンドレアになれる? 目の前に現れた新しい木と自分との距離を探っているようだ。 「障害を抱えた家族」がテーマだけれど、そんな特殊な状況だからこそ浮かび上がってくる人と人との絆。優しい眼差しで、静かだけれど鋭く描いている。胸に沁みました。沁みる映画が好きな私のテイスト。 そして、この映画はパオロの治療先の病院がドイツにあり、当然ドイツ語が話されている。イタリア人であるジャンニはドイツ語は分からない。字幕にもドイツ語の部分にはあえて字幕はない。 こういうところにも、監督のメッセージがあるのだろう。 一見するとサラリと描かれた作品だけれど、描かれているテーマは入るほどに深く広いと思う。 一度だけで分かったつもりでも、もう一度見たときに、見えなかったものが見えてくる。そんな類の作品だと思う。 監督はイタリア映画界のジャンニ・アメリオ。本作で初めてアメリオ監督作品に触れました。 1945年イタリア・カラブリア地方の小さな村に生まれ、映画監督の夢を追って、ローマに移り、ヴィットリオ・デ・シーカのもとで働き始めたアメリオ監督の作品をみると、常に弱さを乗り越えて力強く生きたいと願う人間の姿を描き続けている監督なのでしょう。他の作品も観たいと思う。 死刑制度をモチーフに、人間の尊厳を問いかける『宣告』 孤児院へ向かう幼い姉弟と、二人に付き添うことになった憲兵の旅を描いた『小さな旅人』、時代に翻弄される兄弟の悲劇『いつか来た道』。 ![]() 本作は劇場公開時には見なかったものの、その後、気になっていた作品だった。 先日「さよならS」を見、さらに痛い映画を、と探していたら「ぼくは、あなたに、癒されていく」こんな映画コピーに惹かれ「アパッショナート」(1994年)にぶつかった。本作で若い父親役ジャンニを演じたキム・ロッシュ・スチュアートが主演の映画。偶然の重なりに、まずは気になっていた本作を先に見た。本作「家の鍵」では彼も30代後半の落ち着いた雰囲気がありました。 ![]() 写真は「アパッショナート」のキム・ロッシュ・スチュアート。 ![]() 監督:ジャンニ・アメリオ 製作:エルダ・フェッリ /エンツォ・ポルチェッリ 原作:ジュゼッペ・ポンティッジャ 『家の鍵-明日、生まれ変わる』(集英社文庫刊) 脚本:ジャンニ・アメリオ/ サンドロ・ペトラリア /ステファノ・ルッリ 撮影:ルカ・ビガッツィ プロダクションデザイン: ジャンカルロ・バージリ 衣装デザイン:クリスティナ・フランチョーニ 編集:シモーナ・パッジ 音楽:フランコ・ピエルサンティ 出演: キム・ロッシ・スチュアート(ジャンニ ) アンドレア・ロッシ(パオロ) シャーロット・ランプリング(ニコール) アッラ・ファエロヴィック(ナディン) ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ(アルベルト)
by mchouette
| 2007-08-03 02:05
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