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2005年/イタリア・フランス/130分 at:梅田ガーデンシネマ 「世界中の子供たちの窮状を救うため」というイタリアの女優マリア・グラツィア・クチノッタの呼びかけにユニセフと国連世界食糧計画が賛同し、7つの国から7組8人の映画監督が参加。それぞれの国の子供たちの現実を描き出したオムニバス作品。 (左から) ジョン・ウー(監督) マリア・グラツィア・クチノッタ(製作) スパイク・リー(監督) カティア・ルンド(監督) (左から) エミール・クストリッツァ(監督) ジョーダン・スコット(監督) キアラ・テイレシ(製作) ステファン・ヴィネルッソ(監督・製作) 「大人は誰も、昔は子供だった。でも、そのことを忘れずにいる大人はほとんどいない。」アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「星の王子様」 これが、この作品を撮るにあたっての大きなテーマなんでしょう。 どの作品も、監督自身が昔子どもだった、そんな視線で子どもたちを描いているのが感じられる作品ばかり。 今生きているその状況の中で、子どもたちがどんな風に生きているのか、セリフで語るよりも、彼らの表情や行動で、彼らの現実とそこに生きる彼らを描いている。 ただ、この映画は社会問題にメスを入れるといった主旨の映画というよりも、社会の底辺で生きている子供たちがいるということを忘れないでほしいという思いを込めて作られた映画なんでしょう。だから観る人によっては描き方が甘いと感じる人もいるかもしれない。 そんな子供たちが生きる社会に対する厳しい視線よりも、そこに生きている子供たちに向けられた視線の優しさを感じる映画。 この映画をみてあらためて思うのは、子供たちがいかに社会的に弱者であるかということ。自分で人生を選べないということ。そこから逃げ出すには彼らはまだ幼すぎる。生まれてきた状況の中で生きていくしかない。頼るべき者がいなければ自分たちで生きていくしかない。大人に混じって、大人と張り合って生きる子もいる。嘆くよりも生きていかなければ…そんな、逞しさを感じる。 そんな彼らが最後にみせる表情は、どれも素晴らしい。ふと子供に戻った彼らの素直な顔。見ている私まで、なにか純真な気持ちになれた気がする。明るい力を貰ったような気がする。そんな映画。 ティナ・ターナーとイタリア人歌手エリーザが歌うテーマソング「Teach Me Again」も素晴らしかった。 この映画の中で、私が一番良かったのはエミール・クストリッツァ監督の「ブルー・ジプシー」。不条理な世界を子供の視点で見事に描いていたのは、さすが! スペインのステファノ・ヴィルネッソ監督は製作も関わっており、この作品で初めて知ったけれど「チロ」は良かった。最後にチロが見せる表情は忘れられない。 ジョーダン&リドリー・スコット父娘共同監督「ジョナサン」では、心に傷を負ったフォトジャーナリストが、子供たちの声に森の中をかけていきながら、子供の頃の自分になっていくシーンにはなぜだか涙が湧いてきた。 スパイク・リー、ジョン・ウー監督作品には、子どもの視線に立って、こんな優しい作品も作れるんだって思った。 カティア・ルンド監督作品は「シティ・オブ・ゴッド」の逞しさに通じる。これはお日様向いた明るさに溢れていた。 簡単に作品紹介を… 「タンザ」…メディ・カレフ タンザは12歳。マシンガンをもってゲリラ活動を行う。時限装置をもって建物に侵入したところは彼が行きたかった小学校。顔を机につけた彼の眼から涙が… 「イノセント・ボイス~12歳の戦場」でも中米エルサルバドルで12歳で無理やり徴兵された子供たちと、そこから逃れてゲリラになった子供たちが、友達同士が戦いの中で殺しあう悲劇が描かれていたけれど、本作も同じ状況だろう。 「ブルー・ジプシー」…エミール・クストリッツァ 自分を守ってくれるところは少年院だけ。自分が自由でいられるのは少年院だけ。盗みを強要する父親から逃れるため自ら舞い戻った少年院。15歳でこんな風に自分の人生に折り合いをつけるウロス。 旧ユーゴスラビアのサラエボ(現ボスニア・ヘルツェゴビナ領)出身のエミール・クストリッツァは祖国にこだわり続ける。ジプシー音楽もにぎやかに始まり、本作でも動物が脇役で登場する。 「アメリカのイエスの子ら」…スパイク・リー 父親はイラク帰還兵。HIV感染者。両親とも麻薬中毒患者。エイズ・ベイビーといじめられるブランカ。 「25時」でも感じたけれど、スパイク・リーって優しいんだ。本作でも彼に優しい視線を感じる。 「ビルーとジョアンナ」…カティア・ルンド 年端もいかないビルーとジョアンナの兄妹。リアカーを借りてダンボール、空き缶を集めて小銭に換金しては、たくましく二人で生きている。彼らにとって生きることは毎日がゲームの世界。 カティア・ルンド監督は「この映画を見て可愛そうなんて思わないでほしい。観客に感じてほしいのは、子供たちの力強さ。そしてそれを新たな視点で見ること」と語っている。 彼女は2002年「シティ・オブ・ゴッド」でフェルナンド・メイレレスと共同監督を務めている。 「ジョナサン」…ジョーダン・スコット、リドリー・スコット 戦地に赴いたフォト・ジャーナリストのジョナサンは写真を撮るだけで誰も助けられない自分に苦しみ、精神を病んでいた。森の中から聞こえる子供たちの声にひきつけられるように走りだした彼は、いつしかカメラ好きな少年に戻っていた。子供の彼は大人になって見えなかった、もう一つの戦場をみる… デヴィッド・シューリスが心を傷ついたフォト・ジャーナリストを演じていた。 リドリー・スコットと彼の娘のジョナサン・スコットの共同監督作品。リドリー監督の「トリスタンとイゾルデ」素敵でした(2回も見にいった)。ラッセル・クロウ主演の「プロヴァンスの贈りもの」は期待。 「チロ」…ステファノ・ヴィルネッソ 最下層に生きるチロは金持ちから高級品を盗み、ボスのところにもっていって換金して生活している。そんな彼の楽しみはボスが経営する遊園地。閉館後の遊園地が彼が子供にもどれる時間。チロ君なかなかのハンサム君。本作に出てくるのは、実際に街角にいた子供たち。 「桑桑(ソンソン)と子猫(シャオマオ)」…ジョン・ウー 生まれてすぐに捨てられたシャオマオ。拾ってくれた貧しいおじいさんの愛情をいっぱい受けて暮らしている。そのおじいさんが車に引かれて死んでしまった。 何不自由なく暮らしているソンソンは両親の離婚から愛を見失った子供。そんな二人の子供が出合った… 他の作品に比べると少し意図的なものがあるけれど、シャオマオのまっすぐなまなざしと無垢な笑顔は、この映画の最後にとてもいいものを見たようなそんな思いにさせてくれる笑顔だった。 監督は「フェイス/オフ」「ペイチェック消された記憶」のジョン・ウー 本作の制作会社Mkフィルム・プロダクションズが得る本作の収益は全額、WFP国連世界食料計画に寄付され、世界の子供を救う助けのために活用されるそうです。
by mchouette
| 2007-07-04 06:16
| ■映画
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