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2006年/フランス/103分 at:テアトル梅田 久々に素敵なフランス映画に出会いました。 口に含むと、口中にその香気が広がり鼻腔までいきわたるような、そんな滋味で芳醇なドラマの香り漂うワイン。そんなワインを楽しむように、ここに登場する彼らが絡みあい織り成す人間ドラマを味わいたい、そんな映画でした。 フランス映画祭2007のオープニング作品。邦題「輝ける女たち」 大阪では6月16日から劇場公開でした。 ニースにある小さなキャバレー「青いオウム」 ある夜オーナーのガブリエルが病を苦にして自殺した。 ガブリエルの葬儀で離れ離れで暮らしていた者たちがニースに集まってくる。 集まった彼らの人間関係やつながり、それぞれの抱えている問題、秘密、嘘などが見えてくる。「8人の女たち」「ブッシュ・ド・ノエル」「愛する者よ、列車に乗れ」これらの映画と重なるものがありました。 ニッキーは、自分が知らなかった女たちの秘密、優しい嘘を知るにつれ、ガブリエルの愛の下でいつまでも15歳の少年のままであったことを痛感する。彼のプライドも女性達に対する自信もずたずたに。女たちの間でなすすべもなく立ち尽くすニッキー。 ニッキーを演じているのはジェラール・ランヴァン。笑顔にどこか少年っぽさが漂う彼はこんなキャラが似合っている。 ついでに素敵なジェラール・ランヴァンも紹介 この映画は輝いている女たちの物語ではなくて、実は未だ少年のまま大人になりきっていない中年男ニッキーの自立物語ではないかしら。 ニッキーはアルジェリアからの亡命者。15歳でこの『青いオウム』に足を踏み入れ、マジシャンとして舞台にたち、オーナーのガブリエルは彼を息子のように弟のように愛し、彼もガブリエルを父とも兄とも慕っていた。プレイボーイで「俺は浮気者さ」と自負し、女たちとの恋に生きる50歳を過ぎた中年男。 ニッキーには元妻アリス(カトリーヌ・ドヌーヴ)との間に生まれた息子ニノ、幼なじみで、かつて彼のマジックの助手をしていたシモーヌ(ミュウミュウ)と浮気をしてできた娘マリアンヌがいた。そしていまは店の歌姫レア(エマニュエル・ベアール)に夢中のニッキー。 エマニュエル・ベアールって、「深夜カフェのピエール」」ではとてもキュートだったし、「美しき諍い女」では惜しげもなく裸体を披露したけど、爆笑ラブ・コメディ「恋は足手まとい」で主演の歌姫役のコケティッシュな演技が似合ってた。彼女コメディが向いてそうな気がするんですけど…ガブリエルと40年近く親子のように一緒に暮らしてきたニッキーは当然遺産を継ぐのは自分だと思っていたが、ガブリエルが店や不動産などの遺産相続人として指名したのはニッキーの二人の子供、ニノとマリアンヌだった。ニッキーにとってはショックな遺言の内容。 遺産を相続された二人も、パリでそれぞれの生活も仕事もあり、ニースで暮らす気は全くない。おまけにキャバレーも時代遅れでこのまま赤字経営を続けていく意味もないと判断した二人は店を売却することに決めた。ここでマジシャンとして働いていたニッキーも職を失うことになる。 大人気なくすっかり不貞腐れてしまう。 子供たちは失職してしまうニッキーに対して自業自得と冷たく突き放すばかり。 一人夜の海で立ち尽くすニッキー。ガブリエルの幻が彼に語りかける。 飛び込むんだ。 ためらったらそこで終わりだ。 もう一度生まれ変われ。 そんなニッキーに、葬儀に来たシモーヌも、元妻のアリスもなぜか優しく、自分に潔い。 ニッキーはなんだかんだ言っても、ガブリエルからも、女性からも愛される男なんでしょうかしら。でもそんな愛が彼をすっかり駄目な男にしてしまったんでしょう。元妻のアリスはそんなニッキーにとっときの勇気を与える。 そして、息子のニノもパリを引き払い青いオウムの経営を引き継ぐ決意をする。 『青いオウム』の地下はかつては娼館でもあり、母親のアリスがそこで『翡翠のハート』といわれていたことを知ったニノは、父親について詰る。 ニースが舞台のこの映画は、リゾート地ニースの風景の美しさが見事。どこまでも続く海岸線、丘から見下ろす街並みの眺望はパリの風景とはまた違う素晴らしさ。 「青いオウム」の舞台で夜毎繰り広げられる女たちの華やかでセクシーなレビュー、楽屋裏、女優達が披露する歌の数々も大きな魅力。 私は特にマリアンヌ役のジェラルディン・ペラスがハスキーな声で歌う「La Rose」(ベッド・ミドラーの「ローズ」のフランス語カバー)がずっと聞いていたいくらい胸に沁みました。 ガブリエルの死がみんなを「青いオウム」に呼び寄せ、各々のわだかまりから新しい関係、新しい人生に向って歩き出す。 ラストシーン。ガブリエルの形見の赤いコートを着てステッキをもってニースの海岸線を歩いていくニッキーの後姿がとても素敵に輝いていた。 輝いているのはどっち? そんなことより、この映画、劇場の椅子の背にもたれて、青いオウムで彼らが繰り広げるドラマをゆったり味わいたい。 監督:ティエリー・クリファ
by mchouette
| 2007-06-17 00:30
| ■映画
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