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2005年/アメリカ・フランス/122分
「国境」の重さ そしてバリー・ペッパー 劇場で見たとき、島国で「国境」という認識をもたない日本人である私には「国境」ということ、そして「国境を超える」ということの映像の重さに圧倒されて、トミー・リー・ジョーンズがこの映画で伝えたいテーマを自分の中でまとめきれないままに1年が過ぎてしまい、先日WOWOWで放映されていたのでもう一度見てみた。 やはり同じ感覚が蘇ってきた。 ![]() 「国境」 地理的なことだけではなく、 人にとっては立ちふさがった壁であり、 あるいはその向こう側に希望を託すものであり、 あるいはそれでも越えなければならない生命線であり…… そういう感覚に想像を働かせようにも、国境のない日本という国、そしてそこに住んでいる私には想像をはるかに超える。 この作品を見てそう思った。 なんて気楽に安穏と暮らしていることだろうか、劇場を出たときの私の気持ち。 メキシコとの国境地帯の町。 何もなく、砂漠が広がっているような荒涼感。 ただ、日々を過ごすだけの単調な生活。 都会からきたものには、楽しみも刺激もない不毛な日々の連続 こんな不毛な地にあっては、見せかけの優しさとか愛は通用しないのだろう。 人々の乾ききった心と孤独感がこれでもかというほどに映像で描き出されている。 そんな不毛な孤独感の中で、やはり人は人のぬくもりを無意識に求めるのだろう。 束の間の情事に愛を見出してすがるのだろうか。 カーボーイのピート。家族がいたのか、流れ着いてここにきたのか、ここで生まれ育ったのか、彼の過去にどんな人生があったのか判らない。しかし、ここに住むものはその程度の差はあれ、誰もが孤独感を抱えて生きている。 ![]() 一目でメキシコからの不法入国者と分かる男メルキアデス・エストラーダ。流れ着いてここに来たのだろうか。片言の英語しかわからないこの男に、ふと優しさを抱いたのもピートの孤独から来たものだろうか。それとも、メルキアデスの無骨さに人の真心を見たのだろうか。カーボーイのピートはメルキアデスというメキシコからきたこの男に心を通わせる。 「俺が死んだら故郷ヒメネスへ遺体を運んで埋めてくれ」その美しさに心が張り裂けるというメルキアデスの故郷ヒメネス。そこに暮らす愛する妻と子供たちの元に運んでくれという。 そんなメルキアデスを国境警備隊員のマイクが誤って撃ってしまった。 発見された時は、メルキアデスはコヨーテに食われ無残な遺体となっていた。 ピートは彼を撃ち殺した人間を必死に探す。 ようやく国境警備隊員マイクにたどりつく。 マイクは都会から最近この地に妻と共にやってきて、この何もない土地で鬱屈した思いを抱える男だった。その鬱屈した気持ちの捌け口を不法入国したメキシコ人に向け、彼らを手荒く扱う、そんな男だった。 ピートはマイクを拉致し、メルキアデスの死体を彼の故郷のヒメネスまで運べという。 埋められている死体を掘り起こさせ、彼の服を着替えさせ、毛布に包み、警察の捜索の手から逃れて、そそり立つ岩肌ばかりの山を越えての、生命の危険を伴う3人の過酷な国境越えの旅が始まった。 ![]() ようやくたどり着いたメキシコ。しかし誰も「ヒメネス」という村は知らないという。 写真に写っているメルキアデスの愛する妻だという女性は彼のことは知らないという。 メルキアデスも孤独な男だったのだろう。 恐らく彼は流れ流れの旅の途中で出会った見知らぬ女性と子供たちの姿は、彼にとっては胸が張り裂けるほどに渇望する夢「家族の姿…愛する人と子供たち」だったのだろう。 そして出会ったその場所が彼の夢の場所「ヒメネス」だったのだろう。 それはまた、ピートの見果てぬ夢でもあったのだろうか。 彼はメルキアデスの「死んだら俺の遺体をヒメネスまで運んでくれ」という約束だけでなく、彼のヒメネスに帰るという「夢」にピートがとっくに打ち捨てたはずの「夢」を重ね合わせたのだろうか。 たどり着いたメキシコの町から情事の相手であるダイナーカフェのウェイトレスのレイチェルに電話でプロポーズする。「帰ったら俺と結婚してくれ」 彼の申し出に、レイチェルはダイナーを経営する夫を愛してると言う。 電話を切った後の彼女の表情は胸に焼きつきます。惚れているのはピートかも知れない。愛とは別に生活の重みがあるんですよね…。彼女もどういう風にこの国境地帯のこの町に住み着いたかはわからない。きっとこの国境の町まで流れ着いた、彼女の過去があるんでしょう。 帰れる場所がないだろう彼女は、この国境の町を自分の居場所と思いきめたんでしょう。 ヒメネスという場所を探し当てたピートは、マイクに墓を掘らせメルキアデスを埋葬する。泣きながらメルキアデスの墓の前で彼に許しを請うマイク。 「許してくれ、ずっと悔やんでいた。本当だ。信じてくれ。許してくれ」 ![]() これほどの過酷な旅を経ないと、人は心の中の言葉を出せないのだろうか。 それほど、この世界の張られた壁が大きいのだろうか 貧困、差別、偏見、孤独、その中で人は夢見る事を忘れているのだろうか。 それほどこの世界は病んでいるのだろうか。 これほどの旅の果てに、やっと人は素直になれるのだろうか。 それほど「国境」の壁は厚いのだろうか。 見方を変えれば、そんな過酷な旅を、ピートはメルキアデスとの約束を果たすために、「ヒメネス」を探し当てるという信念を持ち続けた。男の友情を描いている。そして、その中でマイクもまたこの国境を越えるという旅を経て、彼自身の心の壁を越えた、という捉え方も出来るだろう。 それでも、私にとっては「国境」という概念は大きすぎる。 国と国とを隔て、人と人を隔てている「国境」 その中で、国境を越えるもの、国境の町から弾かれるもの、国境の町に根を張ろうとするもの。 川を挟んだアメリカとメキシコ 国境を越えて不法入国するメキシコ人は年間300万人という現実。 そこでせめぎあう二つの国。 脚本は「アモーレス・ペロス」「21グラム」を手掛けたギジェルモ・アリアガが担当。メキシコ人である。トミー・リー・ジョーンズは彼に西テキサスと北チワワの国境地帯についての脚本を依頼したという。 過去と現在の時間軸の入れ替えってこの方の特許なんでしょうか。本作でも現在と過去をクロスさせている。この映画では(アモーレス・ぺロスも面白かった)ピートの心情を描く上で効果的で、映像に緊張をもたせていたと思う。 そのせいだろうか、私が感じた本作のテーマは、イニャリトゥ監督作品「バベル」にも通じるものがあるように思う。そして受け止めきれないけれど、本作の方がストレートに私を揺さぶるものがある。 「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」という映画 この映画で描かれているものはとてつもなく大きいのではないだろうか。 すくなくとも私にとっては、捉えきるには、この映画は確実に私からはみ出している。 ![]() そしてこの映画には、トミー・リー・ジョーンズと合わせて、メルキアデスの死体を運ばされるマイク役のバリー・ペッパーという役者の存在は大きいと思う。 私が彼に注目したのは、2002年製作のスパイク・リー監督の「25時」の彼をみてからだ。それまでも彼が出演している作品を見てきたが、さほど印象に強くは残らなかった。 「25時」での彼はエドワード・ノートン演じる麻薬の売人モンティの友人で株のディラーをやっているフランクを演じていた。世界は自分が中心で回っているという自信家。もう一人の友人で高校の国語教師ジェイコブにはフィリップ・シーモア・ホフマン。そしてジェイコブにモーションかける女子高生に「ピアノ・レッスン」のアンナ・パキン。 密告で麻薬捜査局に逮捕され、25時間後には7年の服役のために収監されるモンティがフランクに、監獄で男たちの餌食にならないために、俺の顔が醜くなるまで殴ってくれと頼む。 それまではフランクは、モンティは自業自得だ。あいつが出所しても以前のあいつではない。友人としては会えないだろうと、冷淡にモンティをみていた。そんな彼にモンティはまるで踏み絵ともいえる依頼をする。ためらうフランクを挑発するような言葉で彼を煽るモンティ。思わず逆上してモンティを殴り続けるフランク。ジェイコブが止めなかったらフランクはモンティを殴り殺していたかもしれない。呆然自失するフランク、その後に彼を襲う自責と悔恨の念。このシーンで彼は私の中でしっかりと押しピンが刺さった。主役のエドワード・ノートンよりも私は彼のほうに惹かれた。 監督:トミー・リー・ジョーンズ 製作:マイケル・フィッツジェラルド/ トミー・リー・ジョーンズ 製作総指揮: リュック・ベッソン /ピエール=アンジェ・ル・ポーガム 脚本:ギジェルモ・アリアガ 撮影:クリス・メンゲス プロダクションデザイン:メリディス・ボズウェル 衣装デザイン: キャスリーン・キアッタ 編集:ロベルト・シルヴィ 音楽:マルコ・ベルトラミ 出演: トミー・リー・ジョーンズ( ピート・パーキンズ ) バリー・ペッパー(マイク・ノートン) ドワイト・ヨアカム(ベルモント) ジャニュアリー・ジョーンズ(ルーアン) メリッサ・レオ(レイチェル) フリオ・セサール・セディージョ(メルキアデス・エストラーダ) バネッサ・バウチェ(マリアナ) レヴォン・ヘルム(盲目の老人) メル・ロドリゲス セシリア・スアレス
by mchouette
| 2007-05-29 00:00
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