![]() by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
LA HAINE
1995年/フランス/97分 もう一つのフランスの顔 ![]() 外国からの移民や低所得者が暮らす「バンリュー(郊外)」と呼ばれている地域。 所得者層を対象にした団地が幾つも並んでいる。 「パリ、ジュテーム」(2006)でイザベル・コイシェ監督の「16区から遠く離れて」で移民のアナが住んでいたのもこんな団地の一つでした。 そして不況の波がこの団地に住む若者たちを直撃した。仕事にありつけない彼らの間には、鬱屈した空気が淀み、いざこざも絶えず、人種差別も重なり、今では「ゲットー」と化した「スラム」と呼ばれている団地。 1995年に製作された映画「憎しみ」は、そんなバンリューに住む若者を描いた作品。 私たちが、知りえないフランスのもう一つの顔を描いている。 バンリューで暴動が起きた。ここに住む一人の青年への尋問中の刑事による暴行事件が発端となった起きた暴動。犠牲者はバンリューに暮らす青年。容態は重態らしい。 誰に向けての憎しみか。直接には彼に暴行を加えた警察。そして社会。国家権力。 行き処がなく団地の屋上にたまっている彼らを虫けらのように追い散らす警官たち。 ヴィンス、サイード、ユベールの3人もバンリューに住むそんな若者たち。 諦念した表情で、言ったところで何も変わらないけれど、思わず口にしてしまう 「こんな所で腐った暮らしは、うんざりだ」 「こんなところはうんざりだ。出てってやる」 「警察が俺たちの友だちを瀕死の重態にさせた」 偶然、手に入れた警官の拳銃。 彼らの鬱屈した気持ちに火をつけた。 ![]() 憎しみを抱えた彼らを、その憎しみを追った24時間がこの「憎しみ」という作品。 警官の横暴、人々の偏見、差別もあぶりだされている。 彼らの動きを追いかけるドキュメンタリー風のモノクロ映像から、彼らの憎しみ、怒り、焦燥感が溢れだす。 彼らの一人ユベールの口癖「大事なのは落下ではなく着地だ」 彼らにどんな着地があるのだろうか。 フランスもまた人種の坩堝と化している。階級社会、学歴社会が厳然としてある社会にあって、貧困のため進学もできず、スラムから出て行くこともできない現実。 「パリ、ジュテーム」でも、何人かの監督はこの差別と偏見をテーマにパリを描いていた。 本作の監督は俳優としても活躍しているマチュー・カソヴィッツ。27歳。 彼がこの映画を撮った理由の一つに「バンリューの若者たちを現実的に描いた映画がなかったから」と語っている。 本作は1995年のカンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞している。 カソヴィッツはこの映画を撮るためにスタッフやキャスト達とバンリューで生活し、自分たちがバンリューに溶け込んだと感じたときから、キャメラを廻し始めたという。 彼らの肌を通した等身大の現実が見える映像。 やはり痛みを感じる。 3人の主人公たちが早口でまくし立てる言葉のリズム 警官に追われたときに見せる彼らのすばやい身のこなし 映像から流れる音楽は、 バンリューの若者たちが好んで聞くヒップ・ホップ系の音楽 同世代のカソヴィッツがバンリューの若者たちと共有しているこの感覚で、彼はこの映画を撮った。 マチュー・カソヴィッツ この映画が話題を集め、その後「バンリュー」をテーマにした映画がいくつか公開されている。そのことについて、カソヴィッツは「バンリュー映画なんて流行って欲しくない。この点に関しては少し責任を感じている。この映画が話題になり、今風な側面だけが取りざたされるようになって欲しくない」と語っている。 括弧付きでバンリューという地域が語られることに強い抵抗を示す。「括弧つき」これこそがバンリュー地域に対する差別と偏見だろう。 この作品でヴィンス役のヴァンサン・カッセルとは7年来の友達だそうだ。 本作で、ヴァンサン・カッセルは強烈に、その存在感を見せつけた。 公衆トイレの中で憎しみをぶちまけあう彼らに、トイレから出てきた老人が飄々と語るシーンがある。戦争捕虜でシベリアに抑留された話だ。「収容所まで家畜用の列車に詰め込まれ、トイレも列車に水をかけるため停車するときしかできない。みんな一斉にクソをする。ある男はそれを恥ずかしがって森まで行って用を足した。その間に列車は動き出し、その男はずり落ちるズボンを手で持ちながら必死に走ったが乗れなかった。凍死してしまった。クソをするのも命がけの時代だったと。本当に苦しかった時代にはクソすら満足にできなかった。お前さんたちはクソをするケツを持っているだけで満足していいはずだ。いらぬ争いを作り出すことはない。今はゆっくりとクソができる時代だ」と。 また、カソヴィッツの祖母はユダヤ人で強制収用所から生き延びた人で、いきがった言葉で悪態をつく彼にたいして彼女は「そんな風にしちゃいけないよ。人に対してはキチンと話して、敬意を払わなくちゃ。昔、強制収用所に入れられて、家族はみんな殺されちまった。で、私には何ができたと思う?そういうことをした人たちを、一生憎み続けるなんてことは、したかないね!」と。 だからカソヴィッツは戦争を体験した老人の言葉としてこの映像に入れたのだろう。 それを聞いた3人には老人の戯言にしか聞こえない。 ![]() 今も、バンリューでは、フランスでは、世界では、「憎しみ」が何も変わらないまま、若者たちの中に巣食っている。最近のニュースを見ると、その憎しみはさらに複雑に、また歪曲されたものになっているのではないだろうか。 そして、バンリューの現実はいまも変わらない。 監督:マチュー・カソヴィッツ 製作:クリストフ・ロシニョン 脚本:マチュー・カソヴィッツ 撮影:ジョルジュ・デアン 出演: ヴァンサン・カッセル ユベール・クンデ サイード・タグマウイ フランソワ・レヴァンタル エドュアルド・モントート カリム・ベルカドラ ソロ・ディッコ 製作のクリストフ・ロシニョンは、本作の他にトラン・アン・ユンの「青いパパイヤの香り」「シクロ」(ヴェネチア映画祭グランプリ)なども製作している。
by mChouette
| 2007-05-30 00:01
| ■映画
| |||||||||
ファン申請 |
||