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AMOUR 夫もまた老いた身で妻を抱きかかえ、食事の世話をし、リハビリをし、しかし妻の症状は日々悪化、オムツが必要な身となり、言語障害も進み……。さらに介護士が二人の生活の場に否応なく入ってくる。 時折訪ねてくる娘はそんな母を見て「これからどうなるの。このままじゃダメだわ。」と父に詰め寄る。「どうもならない。明日もその次の日も同じことが続くだけだ。お前たちが引取るのか? 老人ホームに入れるのか?本気で話そうじゃないか!」と逆に娘に詰め寄る。 日本も含め高齢化社会が進む中で、介護生活が引き起こす悲劇的な事件をニュースなどで幾度も見聞きする。そして私も同じような年齢の親をもつ身であり、親の老いにもはやさほど遠くはない将来の我が身をそこに重ね合わせる世代に入りつつある。老いずとも今の健康が明日もあるのか、先は分からないのは、2年前の東北大震災で思い知らされた。 人間がその内面に抱える闇の部分、不安の招待といったものを映像を通して抉り出してきたミヒャエル・ハネケ。本作でもあたかも病巣を沈着冷静に切り開く執刀医の如く、老いと死を見据え、次第に人間としての尊厳を喪っていく妻と、その妻を介護する夫の姿を描きだす。 映画につきものの音楽は一切ない。 アパルトマンの部屋と、そこにいる老いた二人の、老いたような時の流れ。 しかし、その映像からは静かな緊迫感が発せられ観る者の眼を逸らさせない。 ハネケ監督の演出の巧みさもあるだろうけれど、ジョルジュとアンヌを演じた老優二人の老練な演技があってこその静寂と緊張感だろう。 ![]() ジョルジュを演じたジャン=ルイ・トランティニャン 82歳。 アンヌ演じたエマニュエル・リヴァ 86歳。 生身の自分自身と重なる老いと死を演じるとは、役者とはなんと因果な稼業なんだろうと思う。 そして同時に、それを演じきるとは、なんと強靭な精神を持っているんだろうとも思う。 肉体とともに精神も滅んでいく様をみごとに演じたエマニュエル・リヴァは本作で米アカデミー主演女優賞にノミネート。映像に映しだされるアンヌを、受賞会場の席でにこやかな笑顔で観ていた赤い口紅をつけ青いドレス姿の彼女はやはり老いても女優。 馴染みのない女優だけど、アラン・レネ監督の「二十四時間の情事(Hiroshima mon amour)」のあの女優さん! ![]() そしてジョルジュを演じたジャン=ルイ・トランティニャン。 アラン・ドロンもまぁ人並みに素敵と思うんだけど、彼なんかよかずっとずっとお気に入りの俳優。 ![]() やっぱりクロード・ルルーシュ監督の「男と女」(1966年)が頭に浮かぶ。 妻を亡くした男と、夫を亡くした女。それぞれの子供が同じ寄宿学校にいる繋がりで知り合った男女。互いに心惹かれあい愛し合うけれど、でも亡くなった夫の面影がまだ女の中に深く刻まれている。それは残酷にも、愛し合う中で女が味わった愛の残酷。男の胸に飛び込みたい思いを心に残しながら、プラットフォームに残る女……。 ↓これはコスタ=ガヴラス監督の「Z」 (1969年)の時のトランティニャン。一人の左派議員暗殺の調査に乗り出した新進気鋭の判事といった役どころ。 ![]() ↓そして、そしてベルトルッチ監督の「暗殺の森」(1970年)のジャン=ルイ・トランティニャン。 ファシストに傾倒する孤独で寡黙な青年役。ジャン=ルイ・トランティニャンといえばこのイメージが強いのも、この作品のインパクトもあるのでしょう。 ![]() エリック・ロメール監督の「モード家の一夜」(1968年)や、↓「離愁」(1973年)のトラティニャン(43歳)、そしてロミー・シュナイダー。第二次大戦下ナチス侵攻から逃れる貨物列車で国外脱出を図る人々。その列車の中で出会った男と女……。胸にキュンとくるラストのワンシーン! ![]() アランドロンと共演した「フリック・ストーリー」(1975年)でも、刑事役のドロンより、極悪人を演じたトラティニャンの方が断然好み。ドロンって美しいけれど、どうも演技に味というか色気が感じられなくって…ねぇ。他に彼の出演作で観たのは「女鹿」などなど、30代から40代前半の作品が多い。 50代では、フランソワ・トリュフォー監督の遺作ともなったコミカルな味の「日曜日が待ち遠しい!」(1983年)の今までとは一味違うキャラクターのトラティニャン↓ だけどやっぱりあまりにこやかでも軽やかでもないけど、それがまたいい。例えばイギリスのコリン・ファースも同じようなタイプ。 ![]() ![]() そのあとクシシュトフ・キェシロフスキ監督の「トリコロール/赤の愛」(1994年)で60代の彼を久々にスクリーンで観る。家に引きこもって隣人たちの電話を盗聴する元判事役↓ ![]() それからパトリス・シェロー監督の「愛するものよ、列車に乗れ」 (1998年)では。家業を継ぎ家に縛られた兄と、画家となってパリで自由奔放に生きた双子の弟の二役演じていた↓ ![]() ![]() そして80歳になってからの作品が本作「AMOUR」 年齢とともに渋さと深みが加わり、人生の年輪を感じさせる。 こうして土曜日に見た本作を振り返りながらブログに綴りながら、もう一度観てみたいと思う本作である。身につまされるというよりも、ジョルジュとアンヌを演じた二人をもう一度じっくりと鑑賞したいと思う作品。 カンヌ映画祭でパルム・ドール受賞。さらに米アカデミーでも外国語映画賞に加え脚本賞、監督賞そして作品賞の主要部門でもノミネートされての話題も加わり、テーマがテーマだけにでしょうか、観客は普段ハネケ作品ではお目にかからないような後期高齢者の方たちが多くって、夫婦連れあるいは女性数人連れ立っての鑑賞が多くって、席についてもガサゴソと耳障りな雑音があちこちで、はやめてもらいたいのだが……。 ![]()
by mChouette
| 2013-03-11 13:25
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