by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
IO SONO L'AMORE ティルダ・スウィントン 私が愛する数少ない女優の一人。 中性的な匂いのする…少女、というよりも少年のような。 それでいて大胆なまでに官能的で、イノセントと思える一方で、ふしだらな役もまた違和感なく演じる。優しげな雰囲気を漂わせるかと思うと、冷酷な役もまたやってのけるし、それでいて、彼女の特質とも言うべき透明感がある。 そんなティルダ・スウィントンの、本作は彼女のために作られた映画ともいえる作品じゃないかな。 観終わってから作品情報を調べると、どこまで関わっているのかはわからないけれど、製作陣に彼女が加わっている。 物語はさして語るほどのものでもなくって、一人の女性のカミングアウトの物語。といっても同性愛の物語ではなく、本来の自分を押し込めてきたクローゼットから自分自身を解放するという意味でのカミングアウト。 でも、この映画のティルダ・スウィントンは語りたい。 ソ連時代のロシアから、繊維業で財を成すイタリアの富豪レッキ家に嫁いできたエンマ。 レッキの長男であり次期後継者と目されている夫と成人した3人の子供たち。奥様と周りから呼ばれ女主人として家をきりもりし、なに不自由なく暮らしている。 しかし、穏やかで優雅な微笑の下で、彼女が周囲にどれだけの神経をすり減らして接し、暮らしているかが、ティルダが演じるエンマを通して伝わってくる。 パーティの席を離れ女主人としての役目が終るや早々に自室にこもるエンマ。 そんなエンマが、長男のエドアルドの友人で、父のレストランでシェフとして働くアントニオの料理に至福を覚える。 堅く閉じた蕾が、瑞々しい朝露を浴び陽光を浴びてゆっくりと花弁を開いていくように、エンマのなかで何かが目ざめていく。 ロシアの名前を捨て、夫がつけたエンマとして、イタリア人としていき続けてきたエンマの人生。 嫁いでから一度もロシアには戻っていないという。 そんな彼女が無性にロシアを恋しくなった時に作るという魚のスープ。 いろんな魚の味がミックスされたそのスープは洗練された味では決してなく、むしろ素朴な味わいのものだったのではないかしら。 人里はなれた山荘でレストランを開き、野菜を自家栽培して素材本来の味を生かした料理をだしたいと思うアントニオと通じ合う何か。 太陽が降り注ぐ自然の中でアントニオの愛を受け入れるエンマ。 しかし、その愛の代償として、エンマにとってかけがえのない愛を一つ喪う悲劇の中、エンマを締め付けていた上質な服を脱ぎ捨て、ジャージーに着替えた彼女は家を出て、アントニオの元へ行く。 優雅なマダム、母親としてのエンマ、そして愛に目覚めたエンマ。エンマという一人の女性をティルダ・スウィントンが静かに、そして力強く語りあげた本作。 映像がとても美しい。
by mChouette
| 2013-02-14 22:00
| ■映画
|
ファン申請 |
||