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THE NIGHT OF THE HUNTER
1955年/アメリカ/93分 監督: チャールズ・ロートン先日ヒッチコック監督の「パラダイン夫人の恋」を見ていて、ビリー・ワイルダー監督の「情婦」では、病み上がりにもかかわらず血圧が一気に高まって血管が今にも切れそうな寸前までに奮戦する熱血弁護士役と打って変わり、こちらでは眠そうな、やる気のなさそうな顔で裁判長席に座っているチャールズ・ロートンが作品の印象と重なってクスッと笑ってしまいそうで、チャールズ・ロートンといえば“そうそう”と思い出したのが本作。 彼が生涯でただ一度だけ監督として撮った作品で、いまやカルト的ともいえる本作「狩人の夜」。 「フクロウがいる風景~映画の中の梟を探して」でちらっと紹介しただけなので、改めて本作について感想を。 結末は分かっていても、ロバート・ミッチャム演じるニセ宣教師になりすました悪党ハリーの手練手管の前で、ジョージとパールの幼い兄妹二人が金のありかを口を滑らせて言ってしまわないか、見破られるんではないかしら、そうなったら子供のたちの命は…とハラハラさせられ、パールがいつももっているお人形に隠していることが分かってからは、ハリーの魔の手から辛くも逃げ出しすのもハラハラしながら、でも、夜のしじまの中、小船を漕いで夜の川を下っていくシーンはなんとも幻想的でうっとりと画面に見入る。 怖いお伽話をドキドキしながらもじっと聞き入っている子供のように。そんな感覚にも似た魅力がこの映画にはある。 空には満天の星空。星と月の光に川面がキラキラと輝き、幼子二人を乗せた小さな船の行方を見守るのは、蛙や森の動物たち。木の上の狐、草村の野兎、梟…。 遥か遠くの景色がシルエットとなって兄のジョージの目に映る。と、そのシルエットの中に馬に乗った人影が、あたかも死神の使いの用にゆっくりと幼子たちに忍び寄る。 またしてもハリーの魔の手から兄妹二人の小船に乗った逃避行が続く……。 そんな兄弟達の前に、親の愛に恵まれない子供達を引取って育てている信心深い老婦人マダム・クーパーが現れる。 サイレント映画時代の美しき白い花、リリアン・ギッシュ演じるクーパー夫人が兄妹の守護天使なら、ロバート・ミッチャム演じるハリーは悪魔の使いといえるだろう。 兄妹の居所を突き止めたハリーから二人を守るため、家の中ではクーパー夫人がライフルを持って一睡もせず、家の外ではハリーが悪魔のわらべ歌を口ずさみながら隙をうかがっている。その歌声を封じ込めるかのように、クーパー夫人も賛美歌を歌う。窓ガラスをとおして家の内のクーパー夫人と外からじっと内を見詰めるハリー。対峙する二人の姿は天使と悪魔を思わせ、窓ガラスを通したこんなショットの素晴らしさにもハッとさせられる。 ハリーが逮捕され、クリスマスの日。プレゼントを用意してなかったジョージが、果物入れから林檎を一つ、レースの敷物に包んでクーパー夫人に差し出すシーンには愛の温もりが込められていて、これはクリスマスの日に優しい気持ちで静かに観たい作品だわって思わせてくれるラストがまた素晴らしい。 こんな素晴らしい作品だけど、公開当時は、「暴力教室」や「理由なき反抗」といった話題作の陰に埋もれてしまい、シネマスコープ撮影のカラー映画が主流になりつつある中でスタンダード・サイズの白黒映画の本作は当時の観客には古臭く見えたこともあるのだろう、興行成績も振るわず、批評家達からも不評で、ロートンはこの結果に以後、監督をする意欲を無くしてしまい、本作が名優ロートンにとっての最初で最後の監督作品となってしまったとか。 その後、フランソワ・トリュフォーやゴダールといった若手映画人たちから賞賛され、スティーヴン・キングはこの映画を自選の名作映画100選の1本として挙げ、ジャン・ジャック・アノー監督は本作のオマージュとして「ラ・マン」でメコン川の情景を描いたそうだ。 本作「狩人の夜」は1992年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録され、2003年、アメリカ映画協会が選んだアメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100では、ロバート・ミッチャムが演じたハリー・パウエルは悪役部門第29位にランクイン。 名優チャールズ・ロートンが生涯にただ1本だけ撮った、まさに伝説の映画といってもいいだろう。
by mchouette
| 2010-10-06 00:00
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