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I COME WITH THE RAIN
2009年/フランス/114分/ PG-12 監督: トラン・アン・ユン ふ~ん、こんな内容だったのネェ、この映画。 映画公開時には、トラン・アン・ユン監督作品に日本から木村拓哉が出演するだの、イ・ビョンホンとジョシュ・ハートネットと木村拓哉の三大スターが集結した映画だの、とかなんとか、マスコミがずいぶんと騒いで宣伝してましたっけ。映画評などを読んでいると、描写のグロテスクさも書かれてましたっけ。 トラン・アン・ユン監督作品で好きなのは「夏至」。 カンヌ映画祭でカメラドールを受賞した「青いパパイヤの香り」からさらに成熟味を感じさせる美しく官能的な映像。音楽を奏でるように描かれた映像美とでも表現できるだろうか。 その一方で、ヴェネチア映画祭でグランプリを受賞した、現代のベトナムの現実を描いた「シクロ」は痛さを描いた作品ともいえるだろう。その痛さの描写が些か観念的過ぎるようにも感じられたけれど……。 たぶん本作は、「シクロ」からさらに突っ込んで「痛さ」を追及した作品なんだろうなって思っていたけど、さほど外れてはいなかったかな。 猟奇殺人犯捜査に執着するあまり、精神を病み刑事を辞職し私立探偵を生業とするクライン(ジョシュ・ハートネット)。 そのクラインが行方を捜すシタオ(木村拓哉)。 シタオは世界有数の製薬会社の創設者の息子で、ミンダナオ島で消息が途絶えた息子を探して連れ戻して欲しい、金に糸目はつけないと、富豪の父親から依頼される。 そして香港マフィアのボスで冷酷非情なス・ドンポ(イ・ビョンホン) そのドンボの愛人で薬物中毒のリリ(トラン・ヌー・イエン=ケー) 相手の病を我が身に引き受けることで治癒させる能力をもつシタオ。満身創痍で苦痛にのた打ち回るルシタオの姿は、まさに現代に甦ったキリストの受難。 シタオによって薬物中毒の地獄から救い出されたリリは、ドンボから離れシタオの元に走る。とすればリリはイエス・キリストにつき従ったマリアか。 そのリリに対して、愛と呼べばいいのか、尋常ならぬ執着をみせるドンボ。 猟奇殺人事件の悪夢からぬ気出せないでいるクラインが、フィリピン、香港とひたすらシタオの行方を捜す姿は贖罪をもとめる殉教者のごとく。 猟奇殺人の悪夢に苦しむクラインにアメリカ人のジョシュ・ハートネット。 人々の病魔や苦痛を一身に引き受けんとするシタオに日本人の木村拓哉。 そして一人の女への愛以外は一切の人間的情愛をもたぬ冷徹な香港マフィアに韓国人のイ・ビョンホン。 キリストの受難をモチーフにしたと思われる本作のこうしたキャスティングの裏には監督の中に、アメリカとアジアの関係も意図されているような…と思うのは考えすぎかしら。 あえて木村拓哉を、あえてイ・ビョンホンを…必然性ってあるの?と思われる本作。 ジョシュの動きに対して、ただどうかすると突っ立ってるだけに近い(よう思える)木村拓哉とイ・ビョンホン。3人の演技力の差がいやでも目についてしまう。 ジョシュ演じるクラインの刑事時代の友人で香港警察の刑事役にショーン・ユー。彼は「インファナル・アフェアⅡ」でトニー・レオンの若き日を演じた役者。 リリ役で監督の妻であり女優であり彼の作品には欠かせない存在ともいえるトラン・ヌー・イェン・ケー。本作ではほとんど裸体に近い姿で禁断症状に苦しむ姿が美しく撮られていた。 トラン・アン・ユン監督にとって彼女は女神的存在。彼女を撮りたいがために映画をつくっている!そんな風に思うのは穿った見方? どうかすると彼らの動きが、トラン・ヌー・イェン・ケーさえも芝居がかった繰り人形のようにさえ感じられる。寓話的作品に仕上げようした意図ともあったのだろうか。 トラン・アン・ユン監督が描こうとしたものは分かるんだけど、そのテーマなりモティーフが彼の中で熟成される前に映像化されてしまった。映像に生命を吹き込むところまで至っていない。そんな風に思う。 私としては、「ユマニテ」(1999)、 「フランドル」(2006)で衝撃的な映像をみせつけたブリュノ・デュモン作品にみられるような突き刺さるような、おぞましいまでの痛さが欲しいと思う。 ジャン・リュック・ゴダールのようなシニカルなユーモアとか蹴飛ばすだけの醒めた情熱が欲しいと思う。 こう思うのは無いものねだり。 こんな風にむきになるほどのものでもないか…。 次作は村上春樹原作の「ノルウェイの森」だとか。 彼にはこういう風なのが作風にあっていると思う。 私は多分劇場には観にいかない…
by mchouette
| 2010-07-26 00:00
| ■映画
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