by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
数十年ぶりでソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ共演の「昨日・今日・明日」そして「ああ、結婚」を観る。これを見ていたのは子供の頃。小学生? 中学生だった? テレビ放映で何度か観ていた。 ソフィア・ローレンといえばマルチェロ・マストロヤンニという風に頭の中ですっかり刷り込まれてしまっている。こんなに面白いお話だったの?! 「昨日・今日・明日」なんて思わずゲラゲラ笑ってしまう。 イタリア人男性について考えるとき、「マンマ(お母さん)の存在をなくしてはまず語れない。」とよく言われる。マンマの国イタリア。フェリーニの自伝的な作品をみていても、なるほどイタリアの男性にとってマンマは特別なんだって思う。マンマは逞しき大地であり、光輝く太陽であり、その情は海のように広く深く大きいんだろう。 そしてソフィア・ローレン演じるイタリア女性は、まさにイタリア男性のマンマ、イタリア女性そのものなんだろうって思う。 「昨日・今日・明日」とりわけ二人共演のオムニバス映画「昨日・今日・明日」の第一話「アデリーナ」のアデリーナを演じたソフィア・ローレンは、なんて逞しい。 失業中の夫に代わり、闇の露天商で一家を支えている。不甲斐ない夫カルミーネを責めるでなく、不甲斐ない夫の「アデリーナ、愛しているよ」の言葉で夫婦仲はいたって睦まじい。警察の手入れであわや刑務所入りとなるところを妊娠中だったために罰せられず刑務所行きを免れたアデリーナは、それからはせっせ、せっせと子作りに励む。失業中の夫と子供達を養う為に、お腹を休めるまもなく子供を生み続け、いまや貧乏人の子沢山。 威勢のいいソフィア・ローレンの横で7人の子供を連れた影の薄いマストロヤンニの姿には思わず笑ってしまう。夫唱婦随ならぬ婦唱夫随。 とうとうカルミーネの精根尽き果て、妊娠させられなかった彼は木偶の坊呼ばわりされ、アデリーナは夫の友人をベッドに誘い込むが、土壇場で愛しているのはカルミーネ、カルミーネ以外はダメなのと、泣きながらも身の回りをつめた風呂敷と赤ん坊をしっかと抱き刑務所へ。マンマのスカートを握って女の子もついていく。しみったれるでなく、お涙頂戴でもなく、じたばたしないこの潔さ。夜な夜な夫の歌声に鉄格子を握りしめて涙する夫婦愛のこの強さ。 ソフィア・ローレンが娼婦を演じた第三話「ローマのマーラ」では、娼婦の彼女に思いを寄せる神学生とのお話。マーラを人でなし呼ばわりする彼の祖母に対しても、孫を思う彼女の涙をみると思わず抱きしめ、一肌も二肌も脱ぐ人情の厚さをみせている。そのとばっちりで、いそいそとマーラの部屋を訪れるもいつもお預けを食うのがマストロヤンニ。 金持ちの有閑マダムとしがない小説家の卵との浮気の果てを描いた第二話「アンナ」ではまた違った二人を演じている。 マストロヤンニとソフィア・ローレン。 二人がみせる絶妙なるコンビネーションはこの一作だけでも十分に伺える。 マルチェロ・マストロヤンニ1924年生まれ。 ソフィア・ローレン 1934年生まれ。 39歳のマストロヤンニと29歳のソフィア・ローレン。 役者として脂がのってきた大輪の時期だろう。 翌年にも同じコンビでヴィットリオ・デ・シーカ監督が撮ったのが「あゝ結婚」 「あゝ結婚」一人の男への愛と、我が子に対する情愛の深さ、そして一人の女のしたたかさをみせ、それでいて最後は愛する男に対する純情なまでの一途さをみせている。これもイタリア女性の典型かしら。 女好きの遊び人マストロヤンニと、その彼に一生懸命に尽くす娼婦のソフィア・ローレン。病気の母親の看護も商売の切り盛りも、すべて彼女に押しつけ、挙句の果ては彼女を捨てて若い女性と結婚しようとする。 「昨日・今日・明日」で7人の子供を連れた彼も似合っていたけれど、こんなプレーボーイで不人情で自分勝手な男の役もマストロヤンニはよく似合う。 彼はどんな役にもすっと肩を張らず力まずに入っていける人なんだろう。でもその陰で人には見せないところでどれだけの努力をしていたかを、ドヌーブとの間に生れた女優のキアラが「マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶」 (2006)の中で父であるマストロヤンニを語っていた。 そんな不義理な男に対し、男に内緒で男の子を3人も生みそれぞれの里親の元で育てていた女は、子供のためになんとしても男との結婚を望み、一世一代の大芝居を打つも、裁判で負け、潔く男から身を引くが、引き際に、三人のうちの一人はあなたの子よと言う。 いわれた男は跡取り息子は誰か気が気でない。いままで散々に女をコケにし続けてきた男が今度は女を追いかける。 とうとう男との結婚をものにし嬉々とした女と、その横で写真に納まった男マストロヤンニの顔に、捕まってしまった男の観念した表情が伺えなくもない。 男と女、結婚に至るまでの狐と狸のようにみえつつも、それでいて愛情が絡みあった機微。おかしくも健気でいじらしく、したたかで逞しく、ユーモアたっぷりに描いたお話。 マストロヤンニとソフィア・ローレンの丁々発止の息のあった二人だからこその悲喜劇だろ マルチェロ・マストロヤンニとのコンビで男と女の悲喜劇を描き、ソフィア・ローレンを通してイタリア男性にとって永遠の女性像でもあるイタリア女性賛歌を謳っているように思う。 ソフィア・ローレン演じたさまざまなイタリア女性達に共通するのは、惚れた男に対する打算抜きに貫き通す男への愛。我が子のためになんとしても男と結婚しようとするのだけれど、心根には、不義理で不誠実な男とわかりつつも、そんな男を愛し続けている女の健気さいじらしさが見えてくる。 そんなデ・シーカ監督が6年後の1970年に再び二人を撮ったのが「ひまわり」 「ひまわり」新婚ほやほやの冒頭の二人は「昨日・今日・明日」や「あゝ結婚」のイタリアの明るい太陽が燦燦と輝くように愛し合う恋人達。 しかし愛する男は戦場へ。 戦死の報せもなく、だが戦争が終っても男は還ってこない。ミシンの内職をしながらひたすら男を待ち続ける女には、かつての溌剌とした色香も笑顔も失せ、生活にやつれた姿があった。そして来る日も来る日も駅に到着する復員列車から吐き出される兵士たちの中に男の姿を必死になって探す。 息子は死んだと諦めようとする男の母親に、彼は必ず生きている、彼を連れて戻ると母親を慰める。 おそらく女は生れてこの方自分の住む町以外は一歩も出たことがなかっただろう。その女が小さなボストンバックを提げ、男の写真を握り締め、男を探しにロシアに行く。 こんな強さも「昨日・今日・明日」や「あゝ結婚」で描かれたイタリア女性と通じるものがある。 太陽に向かって咲き誇る向日葵がどこまでも続くロシアの大地。しかし向日葵の下には激戦地だったこの地で死んだ夥しい数の兵士達が眠っているという。 夫はこの広い大地のどこかで眠っているのか、生きているのか。探し出されるだろうか。 どこまでも続く向日葵畑。その中で途方にくれる女。笑うことも愛をささやくことも忘れてしまった一人の女の姿。 そんな女の心情を映し出すように色を失ったかのような映像に、向日葵の黄色が鮮やかにスクリーンに広がる。 この映画はリアルタイムで劇場鑑賞した作品。このシーンは忘れがたく、この印象が損なわれる気がして随分と長い間スクリーン以外で観るのに抵抗を感じていたシーンでもある。列車のシーンも鮮やかに記憶に残っている。 ロシアでの夫の生活を知り、呆然とする夫の目の前で発車寸前の列車に夢中で飛び乗り嗚咽する。 夫だった男は女に会いにイタリアまでやってきた。 「あんなに真近に人の死を見ると人は変わる。僕は死んで別人に。戦争は残酷だ、何もかもがこんな風に…酷すぎる」 愛している、もう一度やり直そうという男を諭し、戦場に行く男を見送り、来る日も来る日も男の乗る復員列車を待ち続けた同じ駅で、妻子が待つロシアへと男を見送る。列車に乗った男と駅に立つ女。もはや取戻せない時間の重さと引裂かれた悲しみを噛み締め、黙ったまま互いに見つめあう男と女。 男と女の悲喜劇を演じ続けてきたソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニだからこそ醸し出せるシーンだろう。 男の乗った列車を見つめ続けるソフィア・ローレンに、全ての悲しみを引き受ける女の強さをみる。 ソフィア・ローレンが演じるどんな女も、娼婦であれ、マダムであれ、下町の女であれ、「マンマ」といわれるそんなイタリア女を象徴しているように思える。 「ひまわり」で戦争で引裂かれた夫婦愛をじっくりとみせてくれた二人が、次に演じたのはこんな男と女。 ムッソリーニ支配下のローマで、アパートの住人全てがファシスト集会に出向いた後に残された主婦と、官憲に追われそこに忍んでいた反ファシストの男の、一日だけの恋を描いた作品。 「特別な一日」これは私は残念ながら未見で、いつもコメントをくださるグリーンベイさんから紹介いただいた作品。 allcinema解説を読んで、是非観たいと思っているけれど市場に出回っていないみたいで、アマゾンでは7000円近い値がついている。 「限定された状況をきわめて映画的なドラマに作り替える名人、E・スコラの、鮮やかな手並みが鑑賞できる作品である。ほとんど密室劇に近い内容だが、アパートの外観の取り入れ方が、ヒッチコックの「裏窓」を思わせて見事である。二大俳優の熱演(特に倦怠期の女を演じるローレンが絶妙)と相まって、官能のスリルを細やかに表現している。」 エットレ・スコーラ 監督:
by mchouette
| 2010-05-13 00:00
| ■映画
|
ファン申請 |
||